ポルシェクラシック、3Dプリンターからクラシックパーツを供給


独・ポルシェAG(本社:ドイツ、シュトゥットガルト 社長:オリバー・ブルーメ)傘下のクラシックモデル専門部門であるポルシェ クラシックは、旧車パーツの入手問題を解決する策として3Dプリンターを活用する。

希少なクラシックカーの愛好家にとって、「スペアパーツ入手不可」という言葉は即座に問題を引き起こし、最悪の場合、車が動かなくなってしまう可能性すらある。

そんな際の解決策となったのは、少量の稀少パーツが必要とされる場合、それを3Dプリンターを使って製造するという方法に行き着いた。

3Dプリンターという近代製法によって生産されるパーツは、技術的にも外観的にも、全てオリジナルの仕様に対する完璧な忠実性という要件を満たしてくれるとポルシェ クラシックでは語っている。

現在、ポルシェ クラシックでは約52,000点のパーツを揃えている。そして何らかのスペアパーツの在庫が少なくなったり在庫切れになると、オリジナルのツールを使って複製されるのが常だった。

ただ需要が多いパーツに関しては、既存の製造法で新パーツを量産する場合がある。一方で非常に限られた数のみで良い場合のパーツを、そうした旧来のパーツ調達手段を介して確保することは、ポルシェ クラシックのエキスパートにとってさえ、大きな課題となる。

というのは極めて需要が低いパーツをたったひとつ必要な場合、そのパーツ調達は非常に非効率になってしまうからだ。

そこでボルシェクラシックでは、特定のコンポーネントやパーツを製造する場合、事前に多様なパーツ調達手段や幅広い製造方法を検討してきた。

例えばポルシェ959のクラッチのリリースレバーは現在も入手不可能だ。しかしこの鋳鉄製のコンポーネントは、非常に高い品質要件を満たす必要がありながら、この車両自体がわずか292台しか生産されなかったため、広い消費市場から見た需要の可能性はほんのわずかである。

この際、製造手段として考えられてきたのはレーザー溶融法であった。仮にリリースレバーを製造するには、まずコンピュータ処理によって厚さ0.1 mm以下の粉末工具鋼の層で処理プレートを覆う。

そして高エネルギーのライトビームを用いて粉末を溶融させ、スチール層を作り出す。こうして、一層ずつ完全な3次元コンポーネントが製造するのだ。

こうしてプリントされたリリースレバーは、3トン近い負荷をかけた圧力試験と、その後の内部欠陥を調べる断層撮影法による検査にも見事にクリア。

最後に、テスト車両に取り付けられたレバーを用いた実地試験と徹底的な走行試験により、コンポーネントの完璧な品質と機能が確認される。

こうした事例を踏まえ、現在ポルシェでは3Dプリントを使って他に8つのパーツを製造中である。

それらはレーザー溶融法を用いて製造するスチールおよび合金製のパー。そしてSLSプリンターを用いて製造される樹脂製コンポーネントである。

この「SLS」は「レーザー焼結法」の略で、これは融点の直前まで材料を加熱し、残余エネルギーを用いて樹脂粉末を溶解するという方法となる。

全パーツとも、最低でも元製品の製造期間に準じた品質要件が課せられるが、適用分野によっては、オイル、燃料、酸、光への耐性を有する必要もあるのだが、そうした作られたパーツはむしろそれよりも高い基準をクリアするほどの精度を持つ。

現在、ポルシェ クラシックでは、さらに将来を踏まえさらに20のコンポーネントの製造についても3Dプリントが適切であるかどうかを試験している最中にある。

メリットは、コンポーネントの3次元デザインデータや3Dスキャンがあれば、製造するための必要十分な基礎となることにある。また注文に応じてコンポーネントを製造できるため、ツール確保に掛かるコストだけでなく保管コストの節約にもなるのだ。