三菱電機、大型投資の一方で事業終息の見極めも

三菱電機は5月28日に「三菱電機 IR Day 2024」を開催し、2025年度の経営戦略、DX戦略、半導体・デバイス事業の他、3つの事業領域に係る自社の成長戦略を説明した。

説明会に登壇した漆間啓社長は、自社企業グループのあるべき姿としては「循環型デジタル・エンジニアリング」を掲げ、それを介して〝データの集約」「顧客の潜在課題・ニーズの把握〟〝新たな価値を創出〟〝幅広い顧客への価値の還元〟を柱に、自らの事業に於けるの循環サイクルを作り出し、各々の課題を解決していくとした。

そのためには自社のデジタル基盤「Serendie(セレンディ)」を構築することを筆頭に掲げた。そのSerendieとは、データ分析基盤、事業領域を横断したWebAPI連携基盤などから構成されるもので、これを基礎に「売上高5兆円以上、営業利益率8%以上、ROE 9%、キャッシュジェネレーション3.3兆円(21~25年度の5年間)」の達成に向けて取り組んでいくという。

ちなみに同社の経営戦略は、この2025年度が中期経営計画の入り口となっていることから、「イノベーティブカンパニーへの変革」を掲げ、新たな価値創出として「コンポーネント × デジタル両輪の成長への集中投資」を打ち出している。

そうした観点から低収益事業については、2024年度までに5000億円規模の撤退・売却を通じた終息を決めており、この流れを踏まえて今年度内で8000億円規模の事業見極めを実施するとしている。

なおこれを前提に、2025年度(2026年3月期)の事業収益については順調に推移しており、売上高と営業利益で目標値の達成を見込み、営業利益率は過去最高となる見通しであることを示した。

一方で、将来的な安定的成長を標榜するためには課題もあるとし、例えば既に分社化した自動車機器事業の構造改革や、空調事業での欧州ATW(Air To Water)事業の成長鈍化への対応、長期停滞に陥っているFAシステム事業の構造改革の推進などを挙げた。

ちなみに同社のモビリティ事業は、インバータやモーターなどの電動化事業、カーメカトロニクス、二輪特機によるICE(Internal Combustion Engine=内燃機関)向けのパワートレイン事業、ドライバーモニタリングシステム(DMS)や電動パワーステアリング製品(EPS)などのSDV事業。

更にカーマルチメディアやインジェクタといった事業がある。そんな2025年度のモビリティ事業の業績見通しは、売上高が8500億円(2024年度実績は9192億円)、営業利益率は5.1%(同3.9%)、ROICは7.0%(同6.8%)としており、減収増益となっている。

こうした自動車機器事業は、自動車産業の発展に貢献していく事業ではあるが、将来の質の高い成長を実現させるためには、昨今の電動化とICEのバランスを踏まえた経営を推し、推し進めなければならない。

従って各々の自動車機器事業は、稼ぐ力があれば最大化するなど事業毎の指針を明確にしていく必要がある。今後は自社グループの強みを活かし、ソフトウェアによる価値創出を未来の新たな事業の柱として質の高い成長を遂げるべきと述べた。

必要な投資は積極的に拡大させていくべきで、目指しているのはコンポーネント×デジタルの両輪で成長する姿だ。

そのためにM&Aも含めた戦略を敷いていきたい。今後はスピード感を持ってビジネスモデルの変革やポートフォリオの入れ替えを進める。

そこでは自前主義を排除し事業毎のパートナーとの協業の可能性も見定める。あらゆるシナリオの検討を通じて、自動車機器事業のポートフォリオを見極めていくことになるだろうとした。