米DOS、ブリヂストンの非化石燃料系合成ゴム開発を支援


ブリヂストン アメリカス インク(BSAM)は10月22日(米国テネシー州ナッシュビル発)、非化石燃料の合成ゴムに係る研究を支援する米国エネルギー省(DOE)産業効率・脱炭素局から、助成金を受領されたことを明らかにした。これは、温室効果ガスの排出を削減し国内環境を実質ゼロ経済に近づける取り組みに対して授与されたもの。( 坂上 賢治 )

これを受けてブリヂストンは、エタノールからブタジエンを生成する取り組みについて、持続可能かつ費用対効果の高いアプローチを推進するパイロットプラントの設計・構築・運営を担う。もとよりブタジエンは、今日のタイヤの主要成分で化石燃料から得られる合成ゴムの成分の中で、通常は第 1 位 (体積比) を占めている。

そこで、このブタジエンをエタノールから得る手段と、化石燃料からの変換から得る手段との経済的実現可能性を評価。結果、エタノールに変換の経済性が証明されれば、化石燃料から得るエタノールを、持続可能な手段から得るエタノールへと置き換えることができる。

ちなみにブリヂストンは去る2022年の4月、二酸化炭素をエネルギーや化学品に転換する独自の技術を有するLanzaTech NZ, Inc.(LanzaTech/ランザテック エヌジー インク)と使用済タイヤのリサイクル技術の開発で独占的パートナーシップを締結。使用済タイヤをリサイクルして原材料に「戻す」新たなビジネスモデルの構築も試行してきた。

こちらはLanzaTechの持つ炭素回収およびガス発酵技術を用いて、使用済タイヤから化学品のエタノールを製造。これを独自の微生物を用いた発酵技術を介してタイヤの材料の一つで合成ゴムの素原料となるブタジエンの生成へと繋げ、使用済タイヤの原材料から新品タイヤの原材料に転換する資源循環の実現を目指すもの。

なおエタノール抽出には、他にもバイオマスの糖質から抽出するバイオエタノールもあり、こうしたタイヤ原材料の取得の多様性を活かすことで、新規に高性能ゴム材料を開発する手段にも取り組んできている。

さて当該プロジェクトでは、エタノールをブタジエンに変換することの経済的および商業的実現の可能性、および炭素フットプリントを評価。生産したブタジエンをタイヤの原料として利用できるかどうかの更なる研究と確認に活用する予定だ。

ブリヂストンでコアポリマーサイエンス担当エグゼクティブディレクターを務めるマーク・スメール博士は、「今回のプロジェクトは、業界をより持続可能にするための科学技術の進歩に役立ちます。

当社のエンジニアはタイヤメーカーがより自然に優しい方法でブタジエンを得る方法について新たな可能性を模索し続けています。我々はこの新たなプロセスへの挑戦に心を躍らせており、この度のエネルギー省の支援に感謝しています」と述べた。

今回のプロジェクトでブリヂストンは、パシフィック・ノースウェスト国立研究所(PNNL)と提携。同プロジェクトでは、PNNLとの共同研究の中から開発された独自の触媒システムを活用する。これにブリヂストンが持つプロセスエンジニアリングを組み合わせることで、エタノールをブタジエンに熱化学的に変換。同技術が商業的見地から持続的に実現可能かの探る構えだ。

仮にプロジェクトが成功すれば、タイヤ原材料生成の新たな可能性が生まれるため、中長期的な原材料調達の一手段として規模拡大を目指す。同プロジェクトは今月正式に開始され、少なくとも3年間に亘る計画となる。

1年目 – パイロットプラントの設計
2年目 – パイロットプラントの構築(オハイオ州アクロン)
3年目 – パイロットプラントのスタッフ配置と運営

ブリヂストンでは、この革新的な新たなプロセス技術の開発が自社の持続可能性を目指す取り組みを進める上で大きな一歩となり、仮に成功した暁には2050年までに世界中のタイヤに100%持続可能な原材料を使用するという同社の目標の達成に向けて前進することになるとしている。