ステランティスN.V.は(5月28日、アムステルダム発)、執行役会長ジョン・エルカン氏主導の取締役会で特別委員会を設け、社内外の候補者を対象とした綿密なCEO選考プロセスを行った結果、来たる6月23日付でアントニオ・フィローザ氏を新最高経営責任者(CEO)として全会一致で選出したことを明らかにした。
同社は今後、アントニオ・フィローザ氏を当社の執行取締役として取締役会に選出するための臨時の株主総会を、数日以内に開催する予定。
その間、取締役会はフィローザ氏に対し、円滑な移行を図るべく全権を付与。そして先の通り2025年6月23日付でCEOとしての権限を正式に与える見込み。
ステランティスN.V.の取締役会は、フィローザ氏が自動車業界で25年以上に亘り実績を上げてきたこと。世界各地で培った幅広く深い経験と知見を有していること。またこれまでに発揮してきたリーダーシップを総合的に評価し、CEOとして選出したと説明している。
そんなフィローザ氏は、北米および南米地域のステランティス事業を統括。特に南米地域のCOO(最高執行責任者)として在任中は、FIATブランドを当該市場のトップブランドへと押し上げただけでなく、Peugeot、Citroën、Ram、Jeep®といったブランドの成長を大きく加速させまた実績を持つ。
その結果、ステランティスは同地域に於ける業界の中心的役割を担う地位を強化できた。
また、南米最大級の自動車製造拠点のひとつペルナンブーコ工場の立ち上げを主導。ブラジルに於けるJeep®に係る事業を成功に導き、同地域を米国外で最も成功した市場へと成長させた。
そんなフィローザは、Jeep®のCEOとしてもヨーロッパを含む世界市場でのブランドの存在感を拡大させている。なかでも「ジープ アベンジャー」の販売戦略を経て同ブランドは欧州でも高い販売実績を維持することに成功した。
直近のフィローザ氏は、2024年12月にアメリカ地域のCOOに昇進。米国市場での在庫の最適化、経営陣の再編、新製品・新パワートレインの導入推進、販売店や労働組合、サプライヤーとの対話の強化などの改革を積極的に推し進めていた。
なお今回のフィローザ氏の6月23日にCEOに就任と同時に、新たなステランティスの経営役員が発表される。この際、ジョン・エルカン氏は、その後も引き続き執行会長としての職務を継続する。
そのジョン・エルカン会長は、「アントニオ(フィローザ氏)は、当社が持つ最大の強みである社員たちへの、そして業界全体への深い理解を備えており、ステランティスが迎えるべき次なる重要な発展段階を導くCEOとして適した存在です。
私はこの6か月間、彼と緊密に協働してきましたが、その間に彼の責任範囲は拡大し、前例のない課題の中で北米および南米の両地域において力強く効果的なリーダーシップを発揮してきました。
彼の優れた資質が明確に示されたことを踏まえ、取締役会と共に、今後も彼と協力していくことを楽しみにしています」と述べた
またステランティス副会長ロベール・プジョー氏は、「私たちは全会一致でアントニオを新CEOに迎えることを歓迎します。
彼の長年にわたる当社に於けるリーダーシップが果たした役割は明白であり、それに加えて、当社の事業について、そして業界の複雑な動向に対する深い理解が、ステランティスの次期CEOとして彼を選出する明確な理由です」と語っている。
更にフランス公共投資銀行(Banque Publique d’Investissement, Bpifrance)のCEO、ニコラ・デュフルク氏は、「アントニオ・フィローザのCEO就任は、当社にとって新しく重要な章の始まりです。
自動車業界が変革の時を迎える今、彼はその知識、経験、そして才能をもってStellantisをさらなる成功へと導いてくれることでしょう」と話している。
選任を受けたアントニオ・フィローザ氏は、「この素晴らしい会社のCEOに任命されたことを大変光栄に思います。
ここ数か月の間にリーダーシップを発揮された会長のジョン・エルカンおよび取締役会の皆様に感謝すると共に、この重要な時期に当社を託していただいたことを心から感謝します。
私は常にStellantis社員の卓越した才能、情熱、そして献身に刺激を受けてきました。
当社には最高かつ歴史ある世界で有数の自動車ブランドが揃っており、100年以上にわたる革新の伝統があります。
この脈々と受け継がれてきた伝統と、お客様に愛される製品とサービスを届けるという私たちの不断の努力こそが、今後の成功の鍵であると確信しています」と結んでいる。
最後にアントニオ・フィローザ氏の略歴は、まずイタリア・ミラノ工科大学で工学修士号を、ブラジルのドン・カブラル財団で経営学のエグゼクティブMBAを取得。
その後、1999年にフィアット・グループに入社。ブラジル・ベチン工場の工場長やラテンアメリカ地域の購買責任者など、様々な要職を歴任した。
2016年にはアルゼンチンの責任者となり、2018年からはフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)のラテンアメリカ地域COO(最高執行責任者)を務めた。
ステランティスの設立に伴い、2021年に南米地域のCOOに任命され、2023年にはジープのCEOに就任。
2024年10月には北米地域のCOOに、同年12月には南北アメリカの両地域を統括するCOOに任命された。
更に2025年1月には最高品質責任者(Chief Quality Officer)に就任し、その責任範囲を拡大させきた。現在は米国ミシガン州に在住している。