トヨタGRカローラ、改良を重ね水素エンジンの可能性を切り拓く

水素内燃エンジンの可能性に挑み続けるトヨタ自動車(本社:愛知県豊田市、代表取締役社長:佐藤恒治)は、今季2025年もスーパー耐久レースへの参戦を介してパワーユニットの改良を重ねている。その結果、今季も前人未踏の新たなステージに突入した。

より具体的には、5月30日~6月1日に行われる「ENEOS スーパー耐久シリーズ2025 Empowered by BRIDGESTONE 第3戦・NAPAC富士24時間レース」に液体水素を使用する内燃エンジンを搭載した「32号車TGRR GR Corolla H2 concept(液体水素エンジンGRカローラ)」で参戦。

参戦カテゴリは「ST-Qクラス」、これは市販されていない開発車両が参戦するクラスを指すもので、レース参加を通じて未来に挑戦する特別クラスという位置付けとなっている。

ちなみに同クラスに参戦するのは、トヨタのワークスチーム「トヨタGAZOOレーシング」の開発パートナーである「ORC ROOKIE Racing」の「ORC ROOKIE GR COROLLA H2 concept」の他、水平対向4気筒の2400ccから直列3気筒の1400ccにエンジンを載せ替えてカーボンニュートラル燃料を採用した「ORC ROOKIE GR86 CNF concept」。

更にスバルも社員チーム「Team SDA Engineering」を結成してカーボンニュートラル燃料を搭載した「Team SDA Engineering BRZ CNF Concept」で継続参加。

マツダも社員チーム「MAZDA SPIRIT RACING」から100%バイオディーゼル燃料を採用した「MAZDA SPIRIT RACING MAZDA 3 Bio concept」を投入。日産もワークスチームNISMOがカーボンニュートラル燃料を使用した「Nissan Z Racing Concept」を投入するなど、さしずめ国内自動車メーカー達の『走る実験室』の様相を呈している。

そうしたなかで、32号車 TGRR GR Corolla H2 conceptには、モリゾウこと豊田章男選手、佐々木雅弘選手、石浦宏明選手、小倉康宏選手、平川真子選手、中嶋一貴選手がステアリングを握る。

さてそもそも、ここで水素カローラのスーパー耐久への参戦を振り返ると、2021年4月に、水素エンジンの開発と富士24時間レースへの参戦を発表。

この当時、世界的に主流のカーボンニュートラル戦略は、ピュア電動車一辺倒であった訳だが、トヨタはこれに抗い、マルチパスウェイを提唱。そのなかでの選択肢のひとつとして水素内燃エンジンも打ち出した。

しかし当時は競合他社も含め振り返って見ても、水素を燃料として使うというチャレンジを行ってきたのは、BMWやマツダ等のみ。それらも水素特有のエンジン燃焼上の課題を打ち破ったメーカーはなかった。

そうしたなかで、トヨタとしても「実用化」を踏まえると、決して満足できる成果ではなかったが、競技環境で純粋なレース車両として走らせることに成功・完走を果たしている。

その後、当時のミライ用の水素充填タンクを搭載していたものを改良して走行距離を拡大。新たな二酸化炭素(CO2)の自動回収装置を搭載。

シリンダ内の異常燃焼を手懐けて理論空燃比(ストイキ)燃焼を取り入れるなどで、今日に至っては、本気でレース結果に真正面から取り組むレベルに到達した。

なお上記の理論空燃比とは、混合気の空気と水素燃料の比率を理論空燃比(当量比φ=1.0)であるストイキオメトリー(Stoichiometry)とすることを意味する。

この際、少量の未燃炭化水素や一酸化炭素(CO)など中間生成物が排出される状態になるものの、水素燃焼なので燃料由来の炭化水素やCO2が発生しない状態になるのだが、現状の水素内燃エンジンの場合、この燃焼状態に持って行くことが最も最高出力が得られ易いため、これをリーン燃焼(理論空燃比よりも燃料が薄い状態での燃焼)技術と組み合わせる術を手の内化する。

今季は、この燃焼状態を更に改良させつつ、水素の単一充填あたりの走行既距離を更に伸ばすと共に、気体から液体となった水素の供給ポンプに超伝導モーターを使用することも視野に据え、トヨタ製の水素エンジンは2025年を迎えても進化を続けている。

併せて「低炭素ガソリン(E20)」を燃料として使う「28号車のTGRR GR86 Future FR concept」も進化を重ねている。

「28号車のTGRR GR86 Future FR concept」に関しては、ENEOSがトウモロコシやサトウキビなどの植物資源に含まれるグルコースを発酵させて製造したバイオエタノールを、ガソリンに約20%混合した「低炭素ガソリン(E20)」燃料を耐久レースの厳しい環境下で使用して、今季は技術領域の改善を目指していくという。

今季は、昨年度よりも信頼性を高めた車両と新たな燃料システムを活かして24時間を走り切り、モータースポーツシーンを舞台に獲得したデータを活用して、もっといいクルマづくりに取り組んでいく。

トヨタでは、「液体水素や低炭素ガソリン燃料で走るエンジン搭載車両がカーボンニュートラルに向けたモビリティの重要な選択肢であることを発信し、仲間とともにマルチパスウェイの取り組みを進めていきます。

今後も引き続き、モータースポーツの厳しい環境を通じてクルマと人を鍛え、カーボンニュートラルの実現に向けて仲間とともに進化を続けていきます」と結んでいる。

なお今年も5月31日(土)14:00~ 富士スピードウェイの様子を24時間の生放送で配信される。レースの様子だけでなく、ドライバーの生出演や、ピット中継などを配信予定だとしている。
https://toyotatimes.jp/24h_race_2025/

Super Taikyu TV/Stai TV YouTubeライブ配信ページ:https://www.youtube.com/@supertaikyutvstaitv5599/streams

決勝《S耐TV》ENEOS スーパー耐久シリーズ2025 Empowered by BRIDGESTONE 第3戦 富士24時間レース(パート1):https://youtu.be/wwzVYtown-w