東京メトロ、英国エリザベス・ラインの運営事業を開始

日本の東京メトロ(東京地下鉄/本社:東京都台東区、代表取締役社長:山村明義、)は5月25日から、GTS Rail Operations Limitedの一員として英国地下鉄のElizabeth line(エリザベス・ライン/通称、クロスレール)に於いて、同路線の運営事業を始動させた。

より具体的には、東京メトロは英国最大の路線を運営する鉄道事業者The Go-Ahead Group Limited(Go-Ahead/本社:英国ニューカッスル)及び住友商事(本社:東京都千代田区、代表取締役 社長執行役員CEO:上野真吾)と共に事業会社GTS Rail Operations Limited(略称GTS/出資比率:Go-Ahead 65%、東京メトロ17.5%、住友商事 17.5%。以下「GTS」)を出資設立。

このGTSを通じ、英国ロンドン市交通局(TfL/Transport for London, UK)からの委託を受け、英国ロンドン市のElizabeth line(エリザベス・ライン)の運営事業を開始した。契約期間は最長9 年 (7年プラス、オプション最長約2年)となる。

ちなみに前述にある「英国ロンドン市交通局」とは、ロンドンの公共交通ネットワークの運営、主要道路の管理、そしてロンドン市長の交通政策および公約の遂行を所管する総合交通局。子会社の Rail for London Infrastructure Limited を通じ、ロンドン中心部におけるエリザベス・ラインの鉄道インフラを所有・維持管理する立場にある事業組織だ。

そんな紫がテーマカラーのエリザベス・ラインは、ロンドンの交通網にとって極めて重要な路線でもある。同路線は、西のレディングから東のシェフィールドまで、ロンドン市外からロンドン中心地を貫き東西を結んでいる。

しかもかつて同計画は、英国の19世紀から続く輝かしい鉄道の歴史を復活させるための一大プロジェクトでもあった。何せ同路線は、ヒースロー空港駅からロンドン市内パディントン駅へまでを僅か34分で結ぶのだ。

従って2022年に投入予算の超過を重ねつつも、同路線が開業して以降、瞬く間に英国で最も利用者数の多い鉄道のひとつとなり、毎日70万人以上の乗客が利用している。

また、これに伴い、ロンドン市街を貫く路線上に新たな10駅が新設されるなど、移動時間の短縮、輸送力の向上、アクセス性の向上等の複数要因によって市街と南東部のを繋ぐ交通網が、大きく変貌を遂げた。

そうした経緯を踏まえると、今回の東京メトロ連合による花形路線事業に係る運用の引継ぎは、かつて幕末に英国から受け継いだ鉄道技術の返礼という意味もありそうだ。

さて、ここまでの東京メトロの挑戦の足取りを振り返ると、同社は、日本国内企業を含む連合で2024年11月に英国に於ける当該事業の運営権を獲得。それ以降、GTSはロンドン市交通局との間で運営事業契約を締結し、2022年の全線開業以来運行を担ってきた前運営事業者からの移管・引継ぎを進めてきた。

その後の事業開始に伴い、東京メトロからは取締役として1名をGTSへ派遣し経営参画すると共に、当該事業へGTSのメンバーとして携わる社員2名を英国現地へ駐在派遣した。

更に東京メトロ本社側に於いても、同事業の成功に向けて英国現地と東京メトロ本社間の充分な連携を確保するため、関係部門の役員・部長を委員とする委員会を設置。今後もGTSと共に同事業を推進してきた。

東京メトロでは、「引き続き、ロンドン市交通局を含むステークホルダーとの連携の下、Go-Ahead及び住友商事と協力し、東京メトロが100年に渡り培ってきた安全性・定時性に優れた鉄道運営のノウハウを活かして、エリザベス・ラインにおける質の高い鉄道運営に貢献することを目指してまいります。

本事業は、東京メトロが海外鉄道路線の運営事業に参画する初の案件となります。今後もO&M事業を始めとする海外鉄道ビジネスへの参画・拡大による収益獲得を目指すと共に、利便性の高い都市鉄道システムの実現により、海外都市の発展に貢献することを目指してまいります」と話している。

一方で、TfLの最高執行責任者(COO)を努めるクレア・マン氏は、「エリザベスラインは2022年の開業以来、同路線を結ぶ地域に大きな変革をもたらし、英国で最も人気があり、かつ信頼性の高い鉄道のひとつとなりました。

この鉄道は、地域のお客様に安全でアクセスしやすい列車と駅を包括した移動手段を提供することに成功しました。それを今後、更に発展させるべく、それをGTSに託すことができたことを大変嬉しく思います。今後、彼らと協力できることを楽しみにしています」と述べた。

またGo-AheadグループでCEOを務めるミゲル・パラス氏は、「住友商事、東京メトロと共に、エリザベス線の運行に於いて、パートナーに選ばれたことを誇りに思います。

新しい運行会社は、エリザベス線を英国内のみならず、国際的に現代の公共交通機関のベンチマークとして確立させていくことを期待されており、我々はこれを叶えていきたいと思います」と結んでいる。

 

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エリザベス・ラインの概要
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開業年:部分開業 2015 年、全区間開業 2022 年
路線長:117 km(うち、地下区間 42km)
駅数:41 駅(うち、地下駅 11 駅)
総工費:£18.9 billion(約 3.8 兆円)
所管組織:ロンドン市交通局