ボルボ・カーズ、次期EX60に世界初の学習するシートベルトを導入

ボルボ・カーズは6月5日、シートベルトの安全性を大幅に向上させた新技術「マルチアダプティブ・シートベルト」を発表した。この新しいマルチアダプティブ・シートベルト は、全てのドライバーの安全性を更に向上させることを目的とした世界初の技術だという。

2026年に発売予定の電気自動車「ボルボEX60」に搭載されるこの新しいシートベルトは、車載の先進センサーから得られるリアルタイムデータに基づき、交通状況の変化や装着者に合わせて荷重設定を調整することで、より優れた安全性を実現する。

より具体的には、車内外のセンサーからのデータ入力に基づき、状況や個人の身長、体重、体型、着座位置などに基づいて設定を適応させ、乗員の保護性能をカスタマイズする。

例えば重度の衝突事故では、体格の大きい乗員にはベルトの荷重設定を高めに設定することで、頭部損傷のリスクを軽減させる。

一方、軽度の衝突事故では、体格の小さい乗員にはベルトの荷重設定を低く設定することで、肋骨骨折のリスクを軽減させる。これは、事故発生時に乗員に掛かる力を制御する、いわゆる荷重制限プロファイルのバリエーションを大幅に増やすことで実現している。

ちなみに、この新型シートベルトのシステム開発では、50年以上に亘る安全性の研究と、実際の事故に巻き込まれた 80,000人を超える乗員のデータベースにより構築したものだと謳っており、そうした着実な研究の数々こそがボルボ・カーズの安全基準の基礎だという。

最新のシートベルトは、衝突時にシートベルトが人体に加える力を制御するべく荷重リミッターを使用している。これに旧来の荷重制限プロファイルを僅か3種類から11種類へと大きく拡張。更に設定可能な選択肢は、走行状況と個人毎に多様な最適化設定がある。

そんなマルチアダプティブシートベルトは、従って従来のシートベルトとは全く異なり、外部センサー、内部センサー、衝突センサーなど、様々なセンサーからのデータを活用していく。

同システムは、瞬く間に発生する衝突の方向、速度、乗員の姿勢などの衝突の固有の特徴を分析し、その情報をシートベルトと共有。このデータに基づいて、シートベルトの学習システムは最も適切な設定を瞬時に選択する仕組みだ。

加えて時間の経過と共に新しいマルチアダプティブシートベルトの機能は、無線ソフトウェアアップデートによって継続的に向上するように設計されていくため、時間の経過と共に性能が向上し続ける。

ボルボ・カーズ・セーフティセンターの責任者であるオーサ・ハグルンド氏は、「世界初のマルチアダプティブシートベルトは、自動車の安全性における新たなマイルストーンであり、何百万人もの命を救うという私たちの野心的な目標を掲げ、リアルタイムデータをどのように活用しているかを示す素晴らしい例です。

これは、1959年にボルボが発明し、推定100万人以上の命を救った現代の3点式シートベルト以来の大幅な進化を象徴するものとなるでしょう」と述べている。

そんな新しいシートベルトは、ボルボ・カーズのエコシステムの一部であり、エアバッグ、乗員検知、および運転支援システムとシームレスに連動。

この連携により、調和のとれた保護機能が提供され、効果が向上し、その後の傷害のリスクが最小限に抑えられる。この新型シートベルトは、今年25周年を迎えるボルボ・カーズ安全センター衝突実験室でテストされ開発が進められてきた。

業界をリードするこの衝突実験室では、ボルボ・カーズの安全エンジニアがほぼあらゆる交通事故を再現し、現実世界の安全性に関する規制要件を超えるテストを行うことができる。この多機能施設は、ボルボ・カーズが自動車の安全性におけるリーダーとしての地位を維持するために、今でも不可欠なものだとしている。