住友ゴム、京都大学とゴム内部構造の三次元可視化に成功

破壊に繋がる内部構造を可視化、耐摩耗性能を高めた製品へ

住友ゴム工業(本社:兵庫県神戸市中央区、社長:山本悟)は7月23日、京都大学化学研究所の小川紘樹准教授と協働で、破壊に繋がるゴム内部構造の分布の違いを三次元的に可視化することに成功した。これはゴムが破壊される際の内部構造の変化を詳細に観察する事を可能にしたもの。

従来はゴムを変形させた際にどこで破壊が始まり、その破壊の原因となる内部構造がどのように関係しているのかを特定することができなかった。

今回の結果は、ゴム材料の様々な知見を有する当社とゴム内部構造の分布の違いを三次元的に可視化する技術を有する京都大学化学研究所との産学連携の協働プロジェクトにより実現した。

図1:これまでの計測手法と今回の計測手法の違い

同社はこれまで、大型放射光研究施設「SPring-8(兵庫県佐用郡佐用町所在の世界最高性能の放射光を生み出すことができる大型放射光施設)」を活用し、ゴム内部構造を詳細に解析することで、低燃費性能や耐摩耗性能に優れたタイヤゴム材料の開発(高性能・高品質タイヤの新材料開発技術「4D NANO DESIGN/フォーディーナノデザイン)を行ってきた。

タイヤゴムの内部構造は、骨格となるポリマー、補強剤であるシリカやカーボンブラック、機能を向上させる添加剤や架橋剤など十数種類以上の材料から構成されている。

従来の方法( X線を物質にあてて、その跳ね返り方を観察することで物質の中の構造を調べる小角X線散乱方法)ではX線が通過した部分に於けるゴム内部構造の平均的な情報となってしまうため、ゴムを変形させて破壊が発生してもX線が通過した部分のどこで破壊したのか特定することができなかった(図1)。

そこで同社は、京都大学化学研究所の小川紘樹准教授が開発した、ゴム内部構造の分布の違いを三次元的に可視化する新たな計測手法(CTスキャンのように物質の周りからX線を当てて、物質に含まれる材料によって散乱されたX線を観察する小角X線散乱コンピュータトモグラフィー手法)を用いて 2023年5月から協働プロジェクトを進めてきた。

この手法により、「ゴムを変形させた際にどこで破壊が始まるかを三次元的に捉えることに成功し、その破壊にはポリマーとシリカが特殊な状態(部分的に並んだ状態)に変化しゴムの破壊が始まるという現象を捉える」ことに成功した。(図 2 )

図2:ゴムの破壊に繋がる内部構造の分布の違いを可視化

昨今は、EVの普及による車両重量の増加や、省資源など環境負荷低減への関心が高まるなか、より長持ちするタイヤへのニーズが高まっている。

こうしたことから同社は、長期経営戦略「R.I.S.E. 2035」に於いて、強みである「ゴム・解析技術力」と「ブランド創造力」によって「ゴムから生み出す“新たな体験価値”をすべての人に提供し続ける」ことを目指している。

なお今回の成果は、産学連携と最先端研究施設の活用により「ゴム・解析技術力」の強化を実践したもの。

当該研究は、NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)が推進するプロジェクト「NEDO先導研究プログラム(新エネルギー・産業技術総合開発機構が推進する要素技術の発掘・育成プロジェクト)」の一環。

また、研究成果は国際学術誌「Small Structures(先端的な研究成果を発信する高品質な専門ジャーナル)」に、7月22日付で掲載された。

住友ゴム工業では、今後、この研究成果を活かし、耐摩耗性能を高めたタイヤの開発を進めることで、安全性の向上と環境負荷の低減に貢献しててきたいと話している。

<参考>
・長期経営戦略「R.I.S.E. 2035」
https://www.srigroup.co.jp/newsrelease/2025/sri/2025_014.html
・「Small Structures」掲載論文 H. Ogawa, et al. Small Struct. 2500257 (2025).
https://doi.org/10.1002/sstr.202500257