トヨタ、WRC第8戦ラリー・エストニアで通算100回目の優勝

ソルベルグ選手、父親の足跡を辿りWRC初優勝を果たす

7月20日(日)、2025年FIA世界ラリー選手権(WRC)第8戦「ラリー・エストニア」の最終日デイ4が、エストニアのタルトゥを起点に行なわれ、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team(TGR-WRT)のオリバー・ソルベルグ選手/エリオット・エドモンドソン選手組(GR YARIS Rally1 99号車)が優勝、WRC初勝利を飾った。

69号車(カッレ・ロバンペラ、ヨンネ・ハルットゥネン)

また、カッレ・ロバンペラ選手/ヨンネ・ハルットゥネン選手組(69号車)は総合4位、エルフィン・エバンス選手/スコット・マーティン選手組(33号車) は総合6位。

TGR-WRT2からのエントリーとなるサミ・パヤリ選手/マルコ・サルミネン選手組(5号車)は総合7位でフィニッシュ。勝田貴元選手/アーロン・ジョンストン選手組(18号車)は、メカニカルトラブルによりリタイアとなった。

ラリー・エストニアの最終日は、前日と同様タルトゥのサービスパークの南側エリアが戦いの舞台となり、森林地帯で合計2本60.19kmのステージを、サービスを挟むことなく走行した。

ステージの上空には朝から雲が広がり、小雨が降るなかで競技がスタート。今年初めて使用された1本目のSS18「ヘッレヌルマ」の路面は湿り気を帯び、一部には水溜まりができている区間もあった。

前日、4本のベストタイムを記録し、総合2位のオィット・タナック選手に対して、21.1秒差を築き、首位の座を守ったソルベルグ選手は、SS18でベストタイムを記録。

更に以前「マエキュラ」の一部として使用されたSS19「カーリック1」で今大会9回目となるベストタイムを刻み、総合2位のタナック選手との差を26.3秒と大きく拡大させることに成功した。

そして迎えた最終のパワーステージ、SS20「カーリック2」をソルベルグ選手は3番手のタイムで締め括り、GR YARIS Rally1で初めて出場したラリー・エストニア選手で、記念すべきWRC初優勝を飾った。

2005年に優勝した父親を継ぎ、WRCで記録的勝利を飾る

今シーズンGR Yaris Rally2でWRC2に挑戦し、現在シリーズをリードしているソルベルグ選手は、若手ドライバーにトップカテゴリー挑戦のチャンスを提供するというTGRの取り組みにより、今回初めてGR YARIS Rally1で出場する機会を獲得。

ソルベルグ選手とコ・ドライバーのエリオット・エドモンドソン選手は、ラリー開幕のわずか数週間前に、この特別なイベントに招集され、2022年のレプコ・ラリー・ニュージーランド以来となるラリー1への参戦。しかも2日間のテストしか経験していないなかで、圧倒的な強さを見せつけた。

そもそもソルベルグ選手は、以前、2022年までに他チームで12回トップカテゴリー車両でWRCに出場した経験はあったものの、13回目の挑戦となった今回、遂に初表彰台を獲得。ポディウムの最上段に立った。

エリオット・エドモンドソン、オリバー・ソルベルグ

ソルベルグの父親で、2003年のWRCチャンピオンのペター・ソルベルグ選手が2005年のラリーGBで最後に優勝してから約20年。ソルベルグ・ファミリーは、ロバンペラ・ファミリーに続き、親子2代でのWRC優勝を成し遂げた。

23才というソルベルグ選手のWRC初優勝年齢は、ロバンペラ選手、そしてTGR-WRTのチーム代表であるヤリ-マティ・ラトバラ選手に次ぐ史上最年少の優勝記録となった。

また、トヨタのクルマでWRCを制したドライバーとしては、1973年にアメリカの「プレス・オン・リガードレス・ラリー」で優勝したワルター・ボイス選手から数えて16人目となる。

18号車(勝田 貴元、アーロン・ジョンストン)

なお、ソルベルグ選手は日曜日のステージの合計タイムのみで競われる「スーパーサンデー」も制し、パワーステージと合わせて8ポイントのエクストラポイントを獲得した。

勝田選手は、最終ステージを前にメカニカルトラブルに泣く

一方、前日の段階で総合4位につけていたロバンペラ選手は、SS18で3番手タイム、SS19ではソルベルグ選手に次ぐ2番手タイムを記録。最終のパワーステージではベストタイムを記録し、総合4位でラリーを終えた。

過去3回このラリーで優勝しているロバンペラ選手は、今回思うようにペースが上がらず表彰台争いには加わることができなかったが、日曜日はスーパーサンデー2位と速さを発揮。パワーステージ優勝と合わせて9ポイントのエクストラポイントを獲得した。

デイ3終了時点で総合6位につけていた勝田選手は、最終ステージを前に残念ながらメカニカルトラブルによりリタイアすることになり、SS19で勝田選手を抜いたエバンス選手が総合6位でフィニッシュした。

エバンス選手はスーパーサンデー4位、パワーステージ5番手タイムにより、合わせて3ポイントのエクストラポイントを獲得した。しかし、今回タナック選手が総合2位に入ったこともあり、エバンス選手はタナック選手と僅か1ポイント差でドライバー選手権2位に後退した。

5号車(サミ・パヤリ、マルコ・サルミネン)

また、ラリー・エストニアに初めてトップカテゴリー車両で出場したパヤリ選手は、総合7位でラリーを終えた。

今回のソルベルグ選手の優勝により、TGR-WRTは今シーズンここまで8戦のうち7戦で表彰台の最上段を獲得。また、ロバンペラ選手、エバンス選手が獲得したポイントにより、52ポイント差でマニュファクチャラー選手権首位の座を守った。

シリーズリーダーであるソルベルグ選手を欠いたWRC2の戦いは、地元エストニアのゲオルグ・リンナマエ選手(レッドグレイ)が2位、フィンランド人のローペ・コルホネン選手(ラウティオ・モータースポーツ)が3位と、二人のGR Yaris Rally2カスタマーが表彰台に立った。

 

ユハ・カンクネン (チーム代表代行)
この週末のオリバーの戦いは本当に信じられないようなものでした。ステアリングを握っている彼以上に、見守っている自分の方が緊張していたかもしれません。

経験豊富なドライバーたちを相手に、彼は非常にクリーンな走りを披露してくれました。

彼らのようなドライバーが後方から激しくプレッシャーをかけてくる状況では、誰だって少しはプレッシャーを感じるものですが、オリバーは非常に上手く自分をコントロールしました。

このような機会を提供し、彼がそれをうまく活かしたのを見ることができたこと、そしてそれがトヨタにとって100回目のWRC優勝になったことも、私たちにとって大きな喜びです。

また、カッレがパワーステージで優勝できたのも良かったと思います。そして今、我々は次なるラリー・フィンランドに集中し、ホームラリーで力強い走りができるように努力を続けます。

エルフィン・エバンス (GR YARIS Rally1 33号車)
厳しい週末でした。もちろん金曜日の出走順は多少不利に働きましたが、私たちが望んでいたようなスピードを発揮することもできなかったと思います。

今日はベストを尽くし、エキストラポイントを少し獲得することはできましたが、満足のいく週末にはなりませんでした。いつものように次のラリー・フィンランドラリーを楽しみにしています。チームと協力して、さらなるスピードアップを図りたいと思います。

 

カッレ・ロバンペラ (GR YARIS Rally1 69号車)
この週末は限界までプッシュし続け、できる限りのことを全て試しました。そして、少なくともパワーステージではフルポイントを獲得することができました。

それでも、グラベルラリーで今年のパッケージのペースが不足していることは明白です。言い訳はしませんし、チームと協力して改善作業を続け、プッシュし続け、毎年楽しみにしているラリー・フィンランドに向けてさらなる改善策を見つけたいと思います。

 

勝田 貴元 (GR YARIS Rally1 18号車)
昨日からクルマの調整を続けてきましたが、残念ながら今日はさらに状況が悪くなってしまい、パワーステージを前にリタイアする決断を下しました。

パフォーマンス面での差はそれほど大きくありませんでしたが、このような非常にハイスピードなイベントで上位に挑むことはできないような状態でした。

ラリー・フィンランドに向けて、さらにステップを上げられるようにすることは、自分自身とチームにとって重要なことです。

 

サミ・パヤリ (GR YARIS Rally1 5号車)
難しいラリーでした。金曜日最初の森林ステージでのトラブルにより、良いリザルトを手にするチャンスを失いましたが、チームは問題を解決してくれましたし、その後は楽しむことができ、何度か良いタイムを出すこともできました。

最後の2日間は不利な出走順だったので、学習し経験を積み重ねることに集中して取り組みましたが、それが依然、今年のメインターゲットです。フィーリングは非常に良かったので、今年もラリー・フィンランドがとても楽しみです。

 

オリバー・ソルベルグ (GR YARIS Rally1 99号車)
最高に素晴らしい週末でした。何年も夢見てきたことですし、この瞬間のために努力を続けてきたので、圧倒的な喜びを感じています。

トヨタがこの機会を与えてくれたこと、この素晴らしいクルマで自分の力を証明し、楽しむチャンスを与えてくれたことに心から感謝します。

また、乗りやすいクルマに仕上げてくれた、テストチームのスタッフにも感謝します。子供の頃からのヒーローであり、父と共に憧れの対象だったユハと共に表彰台に立ち、勝利を祝うことができるとは思いませんでした。

この週末、自分を冷静に保ち、適切な指示を与えてくれたユハのサポートに感謝しています。人生最良の時間を過ごすことができました。ありがとうございます!

 

ラリー・エストニアの結果
1 オリバー・ソルベルグ/エリオット・エドモンドソン (トヨタ GR YARIS Rally1) 2h36m35.1s
2 オィット・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤ (ヒョンデ i20 N Rally1) +25.2s
3 ティエリー・ヌービル/マーティン・ヴィーデガ (ヒョンデ i20 N Rally1) +48.3s
4 カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン (トヨタ GR YARIS Rally1) +55.6s
5 アドリアン・フォルモー/アレクサンドレ・コリア (ヒョンデ i20 N Rally1) +1m33.0s
6 エルフィン・エバンス/スコット・マーティン (トヨタ GR YARIS Rally1) +1m43.4s
7 サミ・パヤリ/マルコ・サルミネン (トヨタ GR YARIS Rally1) +2m55.6s
8 マールティンシュ・セスクス/レナールス・フランシス (フォード Puma Rally1) +3m36.0s
9 ジョシュ・マッカーリーン/オーエン・トレーシー (フォード Puma Rally1) +5m29.8s
10 グレゴワール・ミュンスター/ルイス・ルッカ (フォード Puma Rally1) +5m57.5s
R 勝田 貴元/アーロン・ジョンストン (トヨタ GR YARIS Rally1)
(現地時間7月20日19時00分時点のリザルト。最新リザルトは https://www.wrc.com/en を確認されたい。)

 

第8戦終了時点でのドライバー選手権順位
1 オィット・タナック 162ポイント
2 エルフィン・エバンス 161ポイント
3 セバスチャン・オジエ 141ポイント
4 カッレ・ロバンペラ 138ポイント
5 ティエリー・ヌービル 114ポイント
6 アドリアン・フォルモー 71ポイント
7 勝田 貴元 63ポイント
8 オリバー・ソルベルグ 52ポイント
9 サミ・パヤリ 38ポイント
10 グレゴワール・ミュンスター 19ポイント

 

第8戦終了時点でのマニュファクチャラー選手権順位
1 TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team 399ポイント
2 Hyundai Shell Mobis World Rally Team 347ポイント
3 M-Sport Ford World Rally Team 111ポイント
4 TOYOTA GAZOO Racing WRT2 68ポイント

 

次回のイベント
WRC次戦は7月31日(木)から8月3日(日)にかけて、フィンランドのユバスキュラを中心に開催される第9戦「ラリー・フィンランド」となる。

ラリー・フィンランドは、ラリー・エストニアと同様ハイスピード・グラベルラリーですが、エストニア以上にジャンプやクレスト(丘越え)が多く、路面もやや硬いことが特徴。

また、ラリーのサービスパークはTGR-WRTのヘッドクォーターのすぐ近くに展開されるため、チームにとってはホームイベントといえるラリーとなる。

 

最新情報
TOYOTA GAZOO Racing WRTのSNSアカウント
∇Facebook: https://www.facebook.com/TOYOTAGAZOORacingWRC
∇X: https://x.com/TGR_WRC (@TGR_WRC)
∇Instagram: https://www.instagram.com/tgr_wrc/ (@TGR_WRC)
∇YouTube: https://www.youtube.com/@TOYOTAGAZOORacingJPchannel