ナスバ、療護施設に於ける治療・看護の取り組み成果を公表

ナスバ(独・自動車事故対策機構)は、自動車事故による重度後遺障害者(遷延性意識障害者/脳損傷により自力移動・摂食が不可能であるなどの最重度の後遺障害者)専門病院を設置・運営。適切かつ質の高い治療・看護等を実施しているが、この5月30日に療護施設(専門病院)の治療・看護等に関わる取り組み成果を公表した。

ナスバは、社会復帰の可能性を追求しながら手厚い治療と看護並びにリハビリテーションを行う重度後遺障害者(遷延性意識障害者)専門病院としての療護施設を国内12か所に設置・運営している。

この活動は、自動車事故による脳損傷によって重度の後遺障害が残り、入院の要件に該当する対象者に入院して貰い、ナスバスコア(後述)を用いた入院患者の治療改善状況の把握を行う共に療護施設に於ける適切な治療・看護を行うことによって、遷延性意識障害者の方々の回復を目指している。

これらの療護施設への入院期間は概ね3年以内とし、入院の承認は、治療及び介護の必要性、脱却の可能性等を総合的に判断して行われる。

その・治療・看護の特色は以下の通り

プライマリー・ナーシング方式
同じ看護師が一人の患者を主担当として継続して受け持つ看護体制。患者のわずかな反応を捉えることやコミュニケーション手段の確立が可能とする看護体制。

ワンフロア病棟システム
病室の仕切りを最小限にすることで、常に患者の状態を観察できるとともに、わずかな意識の回復の兆しを捉えられ、効果的な治療と看護を行うことが可能とする治療体制。

高度先進医療機器の整備
患者の残存する脳機能や新たな脳機能の出現の評価等により、治療効果の判定、効果的な治療及び看護方法の策定等が可能にする設備体制を敷く。

療護看護プログラムの実施
温浴刺激療法、用手微振動、ムーブメントプログラム等の全部又は一部を導入し、日常生活行動の再獲得(定期的排便、夜間睡
眠、経口摂食など)を目指す。

ナスバスコア(遷延性意識障害度評価表)とは?
日本脳神経外科学会で定義された「植物状態」を基に策定した基準で、平成17年度より適用を開始し、ナスバ療護施設の入院患者の症状について、その重症度を判定するための統一基準を指す。

なお、療護施設の入院の要件としても用いており、合計スコアが30点以上の方を入院の対象者としてしており、また、合計スコアが20点以下を「脱却」として一定の意思疎通・運動機能の改善がなされた状態と評価している。

なおこれを期に、集計開始時点からの累計、直近5年を【入院時点スコア別】に分類した上で改善点を分析したところ、その結果は以下の通りとなった。

分析結果
入院時ナスバスコア平均値に対し、退院時ナスバスコア平均値は減少している。
入院時重症度別にみた場合も(重症度が高くても)ナスバスコア平均値は減少している。

ナスバスコアを用いた入院患者の治療改善状況
令和元年6月1日から令和6年5月31日までの5年間に退院した患者(267名)について【受傷から入院までの経過期間別】、 【年齢別】に分類した上で改善点を分析した結果、【受傷から入院までの経過期間別】 分析結果では、受傷から入院までの期間が短いほど改善が良好な傾向であること。

年齢別の分析結果でも入院時年齢が高くても、ナスバスコア平均値は減少傾向であることが判っている。

 

ナスバでは、「今後も引き続き、ナスバスコアを用いた入院患者の治療改善状況の把握を行うとともに療護施設における適切な治療・看護等により、遷延性意識障害者の方々の回復に向け努力して参ります」と結んでいる。