トヨタ、燃料電池車進化の糸口を掴む。さらなる性能向上に向けての取り組みを加速


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燃料電池車技術の要となる「白金」研究の新解析手段解明へ

トヨタ自動車株式会社(本社:愛知県豊田市、社長:豊田章男、以下、トヨタ)は、一般財団法人 ファインセラミックスセンター(所在地:名古屋市熱田区、理事長:岡本一雄、以下、JFCC*)と共同で、燃料電池(Fuel Cell、以下、FC)の化学反応を促進する触媒として必要不可欠な「白金」の反応性低下(いわゆる劣化)に至る挙動を、リアルタイムで観察できる新手法を開発した。

これは、トヨタとJFCCの共同研究グループが、観察・分析用の「透過型電子顕微鏡」の中で、FCスタックと同じ発電状態を、模擬できる新しい観察用サンプルの作成に成功。

このサンプルの中で、数ナノメートル(nm : 10億分の1メートル)程度の「白金微粒子」のレベルにおいて、該当微粒子の反応性低下に至る「挙動プロセスの観察」を可能としたものである。

(*)JFCCは、昭和60年に通商産業省(現経済産業省)の新素材振興策の一環として、ファインセラミックスに関する研究、試験、評価を行う公益法人(財団法人)として設立された。

そもそも燃料電池が触媒を介して発電する仕組みとは

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そもそもFCは、化学反応によって電流が生じる「電解質」を使って、水素と酸素から水と電気を作る発電装置である。

実は、現段階でFCを用いた発電手段はふたつあり、ひとつは、セラミックを利用する「固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)」だ。

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もうひとつは、電解質に固体高分子膜を利用する「固体高分子形燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)」で、いずれの方式を選択しても、電気を取り出すためには、化学反応を促進するための触媒が必要となる。

700度以上の温度で、化学反応を促進するSOFCを用いれば、高価な白金を用いずに、安価なニッケル等を触媒として、FCを成立させることが出来る。しかし、自動車用のFCに、SOFCを使うのは、反応温度ひとつ取ってみても、その取り扱い自体が難しい。

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FCスタック
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FCスタックの一般的な構造概念図

一方、PEFCの方であれば、白金を用いることで、70~90度の低温度で化学反応させることが出来るため、導入・運用上の障害が少ない。ちなみに自動車用FCの場合には、1台で50~100グラムの白金が必要になる。

今日、工業用白金の価格は、1グラムあたり5000円前後が相場であり、FCの触媒利用で白金を使用すると、1台あたり25万~50万円のコストが掛かる計算だ。

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引用元:国立大法人電気通信大学から、著作:燃料電池イノベーション研究センター・岩澤康裕特任教授

目下、日本国内では、非白金系の触媒研究も精力的に進められてはいるのだが、実用レベルに至るまでに、まだ10年以上の年月が必要とされている。

FCに不可欠な触媒の性能・耐久性向上のための研究が加速する

そこで鍵となるのが、FCの発電過程における白金の反応性低下を克復することだ。

これまで「白金」の反応性低下は、「白金微粒子」の粗大化に起因することが知られていたが、これまでの観察手法では、粗大化に至るプロセスをリアルタイムで把握することが出来ず、粗大化の要因を解析すること自体が困難であった。

しかし今後は、トヨタとJFCCが新開発した観察手法を用いることで、「白金微粒子」の担体(土台)となるカーボン上で、粗大化に至る挙動を引き起こす箇所や、その時の電圧、さらには、担体の材料の種類による違いなどが明らかになる。

これを通して、白金の反応性低下のメカニズムを解析していくことで、今日においてFCに不可欠となっている触媒、「白金」の性能・耐久性向上のための糸口が得られる。

なお今回、観察手法の研究に取り組んだ経緯と、新たに開発した観察手法の特徴は、以下の通りだ。

今回、改めて「白金」の粗大化プロセス研究に取り組んだ経緯

先の通り、FCは、気体の水素を燃料として、空気中の酸素との化学反応により発電する発電機である。

発電は、セル内の水素極と、空気極の二つの電極における化学反応によって生じ、この際に水が発生する。

水素極では、水素分子を電子と水素イオンに分離するが、この化学反応の際に、電子を取り出す働きをするのが「白金」であり、これが触媒としての役割である。

こうして電子を取り出すことが発電につながり、モーターを動かす。その後、水素極で取り出された水素イオンと、発電してモーターを動かした電子は、空気極に移動し、空気中の酸素と化学反応して水が生成される。

ここで「白金」が触媒として、水素イオンと酸素の化学反応を促進する働きをする。なお、電極における「白金」は、数nmの微粒子である。

「白金微粒子」の触媒としてのメカニズムを徹底解明していく

このように「白金」は、FCの発電のために不可欠であり、セル内の二つの電極において、FCの発電効率を高める上で、とても重要な役割を担っている。

しかし、前述のように「白金」は、それ自体が希少資源であるため、高価であるとともに、発電に伴い「白金微粒子」が粗大化し、性能が低下する。

触媒としての性能を維持するためには、「白金微粒子」が粗大化するメカニズムを解明する必要がある訳だが、これまでの観察手法では、数nmレベルの「白金微粒子」が、「セル内で、実際に作動している状態で確認出来ない」、という技術的な課題があった。

新たに開発した観察手法の特徴と効果、そして可能性

ちなみに、これまでの観察手法は、初期状態(使用前)と反応性低下後(使用後)の「白金微粒子」を抽出し、それぞれを比較する定点観察であった。

この場合、反応性が低下した時の「白金微粒子」は、初期状態にくらべ粗大化していることが分かるのだが、粗大化に至る挙動プロセスを、観察することができないため、要因を解析するには、反応性低下のメカニズムを推測する必要があった。

対して、このほどトヨタとJFCCの共同研究グループが開発した、観察手法の特徴は、原子レベル(0.1nm)の物質の観察や、分析ができる「透過型電子顕微鏡」を用いて、FCスタックのセル内で、実際に化学反応が生じる環境・条件と同一の状態を模擬できる。

そのための新しい観察用サンプルを作ることにも既に成功。発電の経過とともに「白金微粒子」が、粗大化するプロセスをリアルタイムで観察できるようになったのだ。

透過型電子顕微鏡内で「白金微粒子」に電圧を掛ける装置を開発

具体的には、新しい観察用サンプルは、「透過型電子顕微鏡」の内部に組み込むために、FCセルを模擬した極小のものとしている。これを「透過型電子顕微鏡」の中に組み込んだ状態で、「白金微粒子」に電圧をかけることがで出来る装置を開発した。

これにより、FCが作動(発電)している時と同じ、化学反応を起こした状態で「白金微粒子」が粗大化していく環境を「透過型電子顕微鏡」の中で実現でき、粗大化のプロセスをリアルタイムで観察することが可能となった。

toyota-grab-a-clue-of-the-power-generation-performance-improvement-of-fuel-cell20150418-7 (1)上記の3つの連続写真は、「白金微粒子」が、粗大化していくリアルタイムの観察結果である。白い点線内は、担体(土台)となるカーボン上で、「白金微粒子」が移動して複数が合体し、より大きな「白金微粒子」になった状態(粗大化)を捉えている。(坂上 賢治)

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