VW、ピエヒ会長辞任。モータースポーツ活動に変化はあるか


4月25日、フェルディナント・ピエヒ氏、監査役会長職を退く

我々、一般の自動車ファンにとっては最も馴染み深い輸入車メーカー「フォルクスワーゲン」こと、ドイツのVolkswagen AG(本社:ドイツ・ニーダーザクセン州ヴォルフスブルク、CEO:マルティン・ヴィンターコーン、以降VW)は、4月25日、フェルディナント・ピエヒ監査役会長(78)が、同日付で辞任したと発表した。

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ピエヒ氏の母親は、ポルシェ創業者の娘にあたる。つまりピエヒ氏は、フェルディナント・ポルシェの孫にあたる続柄だ。

20年以上に亘って、VWグループの最高権力者として君臨

フェルディナント・ピエヒ氏は、1993年にVWの社長に就任。まさに創業家一族、直系のひとりとして、ドイツ最大の自動車メーカーの采配を振るい、2002年に監査役会長に退いてからも、社長を含めた幹部人事を取り仕切るなど、約20年以上の永きに亘って、VWグループの最高権力者としての玉座に座り続けてきた。

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一方、ピエヒ氏は事業経営に長けた一面も見せ、在任期間とは前後するものの、1991年には、チェコの老舗自動車メーカーのシュコダを、1996年には、かつてフィアット傘下で躍進していたスペインのセアトを傘下に入れて東欧・南欧での拠点を確保。

1999年には、イタリアのランボルギーニをグループ傘下に加えるなど、積極的な企業買収を繰り返した末、12の自動車ブランドを持つ巨大企業帝国を築き上げた。

マルティン・ヴィンターコーンCEOの処遇采配で孤立する

丁度、在任期は自動車業界において「400万台クラブ」という、今となっては根拠の薄い言葉が一人歩きするほど、過酷な国際間競争の時代に突入していたが、VWグループは、アウディ、ベントレー、ブガッティ、ランボルギーニ、ポルシェ、セアト、シュコダ、フォルクスワーゲンのブランドで乗用車を製造。

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VWは、この期間において、自動車販売台数を1千万台の大台に乗せるなど、国際市場でトップを走るトヨタ自動車と競い合うまでに地位を固めている。

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しかし今回は、マルティン・ヴィンターコーンCEO(67)の排除を試みた際、逆にVWの監査役会に、ヴィンターコーン氏の2016年以降の長期的契約を提示すべだと推奨され、このヴィンターコーン氏の任期延長を巡る社内投票で1対5で敗れて孤立していた。

当面、ベルトルト・フーバー副会長が暫定会長に就く

VWにとしては、この企業グループ内における「ピエヒ対ヴィンターコーン対決」という権力闘争を解決する必要に迫られ、緊急の役員会議が招集されて今回、騒動に決着がついたかたちだ。

これによりピエヒ氏は、ひとまず経営の一線から身を引くことになった。なおピエヒ氏の妻のウルズラ・ピエヒ氏(58)も、同日の4月25日付で監査役を辞任した。このため新会長選出までの間は、副会長のベルトルト・フーバー氏が監査役(65)が暫定的に会長に就く予定だ。

フォーミュラ1レース参戦への芽は生まれるのか

我々自動車ファンにとっては、もちろん同社が経営上でどのような舵取りを見せるかは気になるところではあるが、実は、最も注目したいのは、フォーミュラ1レースの商業権を持つバーニー・エクレストンとの個人的な確執もあって、永らくフォーミュラ1への出走を敬遠し続け来たピエヒ氏退任後のVWの動向にある。

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VWはグループとしてではあるが、今日でも、世界耐久選手権(直近のシルバーストーンではチャンピオンのトヨタの猛攻を退け、トップの座を手中にした)、世界ラリー選手権、ラリークロス、F3、GTレーシングの全てで成功を収めているし、当の渦中の人となったマーティン・ヴィンターコルンCEOは、元々はアウディAG取締役会会長として、アウディのレーシング・プロジェクトを積極的に推進していたからだ。

ただ一方で、株主や自動車ユーザーから、より身近な存在に見えるスポーツカーレースの結果であるなら、市販車の売上に貢献する可能性が高まっている。つまり仮にVWの首脳陣のなかで、フォーミュラ1への見方が好転したとしても、ビジネス上における投資対効果は別の話だ。

フォーミュラ1は、モータースポーツの頂点かも知れないが、未来に向けて自動車社会や企業が目指すべき方向とリンクしていかない限り、行く末は決して安泰ではない。
これまでVWグループはピエヒ体制のなかで、個々のブランドを干渉せずに育て上げて好結果を得てきた。そうした企業体制を考えてみると、フォーミュラ1レースの未来は、むしろ企業参入を待つ側のオーガナイザーの姿勢こそが、問われるべきなのかも知れない。(坂上 賢治)

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