第44回東京モーターショー2015、ヤマハ発動機株式会社(本社:静岡県磐田市、社長:柳弘之、以下、ヤマハ発動機)のブースにヒト型自律ライディングロボット「MOTOBOT」が出展されている。
このMOTOBOTは、モーターサイクル技術とロボティクス技術を融合して、新たな技術の獲得を目指すプロジェクトから生まれた。
10月28日に開かれたプレスブリーフィングで、同社の柳弘之社長は、「懸命にロッシ選手の背中を追う彼は、数年後、私たちをアッと驚かせるかもしれない」と期待を寄せた。
「私は、あなたを超えるために生まれてきた」――。ヤマハブースの映像で、ヒト型自律ライディングロボット「MOTOBOT(モトボット)Ver.1」はそう語りかける。
「あなた」とは、二輪ロードレース界で高い人気を誇るスーパースター、MotoGPライダーのバレンティーノ・ロッシ選手である。
映像では、幼少期のロッシ選手がオートバイに乗る姿も紹介され、「私はまだ5歳の頃のあなたにも勝てないかもしれない…」という言葉とともに「MOTOBOT」のまだ未熟な自律走行のシーンが映し出される。
「MOTOBOT」は、二輪車本体には手を加えず、ライダー側から見た車両の操作にフォーカスした自律ライディングロボットである。
目指すマイルストーンは、200km/hを超えるサーキット走行の実現。さらに、いずれはラップタイムでロッシ選手を上回ってみたい、という奇想天外な夢にあふれた研究・開発プロジェクトだ。
「一般的に、ロボットは用途を特化させることで、人間を超越する性能を発揮する可能性を秘めている。もちろんこれについては、半信半疑・賛否両論、交々あると思う。
同プロジェクトを率いる西城洋志氏(YMVSV※)は、「私はロッシ選手のタイムを破ることだって不可能ではないと信じています。
来場者の皆さんも、夢がある、ワクワクすると、非常に好意的かつ楽しそうにご覧になっていますよ」と話す。
このMOTOBOTは、今年8月5日に米国シリコンバレーで設立された新ビジネスモデル開発を目的とした新会社「Yamaha Motor Ventures & Laboratory Silicon Valley Inc. (略称YMVSV)」で、精力的な開発が今日、この時点も行われている。
西城洋志氏は、「二輪車の複雑な挙動をコントロールするには、さまざまな制御システムを的確に機能させることが必要です。
そうしたチャレンジの過程で獲得し得る高度な要素技術は、先進安全技術やライダー支援システムといった既存ビジネスへの応用はもちろん、新規ビジネスの開拓にもつながっていくかもしれません」とも言う。
現時点で、米国内の旧い滑走路跡で走行テストを繰り返す、そのランディングスタイルは、コーナリングに於いて、いわゆるリーンウイズをベースとしたものに止まっているが、次世代以降のバージョーンで、いわゆるハングオフ(日本国内ではハング・オフと呼ばれるコーナーイン側にライダーが大きくセットオフするランディングスタイル)も行うようになるという。
いずれにしても「YZF-R1M」にまたがった「MOTOBOT」は、話題のコンセプトモデルに囲まれても独特の存在感を放ちながら、幼い児童からバイクファン、果ては技術革新に強い興味を持つエンジニアリング畑の層に至るまで、誰もが興味深そうな、そしてちょっと楽しそうなまなざしをショー開催期間中、MOTOBOTに浴び続けている。
今回のヤマハブースでは、世界初披露のワールドプレミア6モデル、日本初披露のジャパンプレミア1モデルを含む、電動アシスト自転車や二輪車、さらにリーニング・マルチ・ホイール(LMW)、レクリエーショナル・オフハイウェイ・ビークル(ROV)、四輪車のデザインコンセプトモデルなど、合わせて20モデルを出展した。
また、ヤマハ製の楽器を配した独創的なブースデザインは、様々なヤマハプロダクトが互いに共鳴し合い、一つの楽曲として収斂するオーケストラホールをイメージしているという。
東京モーターショーの開催期間もわずかに迫る今日、同社のスポーツカーコンセプトモデルだけでなく、ヤマハ独自の「モビリティの世界」を体感するのも一興かも知れない。