毎年約45億ユーロの投資を続け、徹底した組織の再編とリポジショニングを実行。そしてフォルクスワーゲン ブランド ディース:「新しいフォルクスワーゲンの創出へ」
独フォルクスワーゲン AG(本社:ドイツ・ニーダーザクセン州ヴォルフスブルク、グループCEO:マティアス・ミューラー、以降VW)傘下のフォルクスワーゲン・ブランドの取締役会は現地時間の11月22日、今後10年間のブランドの進路を定める「TRANSFORM 2025+」プログラムを策定・発表した。
この新しく打ち出した戦略「TRANSFORM 2025+」では、自動車というハードウエアに対する効率性と生産性の大幅な改善を目指す。
それと共に、ドイツ国内やユーロ圏内だけではなく、全世界地域及び同プログラムがターゲットに据えた複数の対象セグメントに於いて、フォルクスワーゲン・ブランドのポジショニングを今日よりも、もっと明確にしていくことに焦点を当てていく。
上記を踏まえた具体的なハードウエア戦略に於いては、e-モビリティとコネクティビティ領域で、これまでのレベルを大きく上回る大規模投資を実行。
同プログラムで策定している「確かな将来を保証する収益力」、「持続可能なモビリティ」、「新しいチームスピリット」が、今後フォルクスワーゲン・ブランドが未来へと歩む為の強力な原動力になっていくと謳っている。
さて発表会見の壇上に上った同社のフォルクスワーゲン ブランド取締役会・会長を務めるヘルベルト ディース氏は、「当社フォルクスワーゲンブランドが、世界中のマーケットに適用していく新しいビジョンは、『TRANSFORM 2025+(フォルクスワーゲンが人々を前進させる)』となりました。
これに伴い、このキーワードを掲げた我々の目標は桁外れに高く、その戦略自体も大変に野心的なものとなりました。
我々は、昨今の自動車社会の変化を好機と捉え、断固たる決意を持ってフォルクスワーゲンに、新しい自動車産業を牽引する役目を担わせようとしています。
実際、今後数年間でフォルクスワーゲンは劇的な変化を遂げるでしょう。従来の形のまま残るものは、ごく僅かです。それだけ我々の今回の新しい戦略は、一大変革プログラムなのです」と語り始めた。
3段階で変革を実施。持続可能で収益力を伴った成長への回帰:2025 年までに営業利益率を 6%に改善
さらにディース氏は個々の具体策について述べていく、「実はフォルクスワーゲン・ブランドの再編は、今後3つの段階を経て実施されることになります。
まずその第一歩としては、2020年までの最初の段階で中核事業の包括的再編と、バリュー・チェーンに沿った改革を完了することに注力します。そしてこの際、同時に新たな競争力の開発も行なっていきます。
続く2025年に至る第2段階では、世界有数の量販・高収益メーカーとして復活を果たすことを目標に、e-モビリティ分野に於いて、フォルクスワーゲン・ブランドが、この自動車業界を大きくリードしていくことを目指していきます。
また、この段階では例えば、新しいモビリティサービスなど幅広い分野で収益を挙げることも戦略の目標に掲げていくことになります。
そしてフォルクスワーゲンはさらに、2025年以降に予想される自動車業界の一大変換期に於いて、現在よりもさらに大きく・主要な役割を果たしていきたいと考えています。
その目標は、来る2030年迄にこれまでとは異なる全く新しいモビリティの世界になっていく移動体産業の世界で、世界のリーダーとして主導的な役割を担うことにあります。
この我々が目指す未来の世界に於ける主導的は役割とは、「量販セグメントの最上位ブランド」を狙うことです。より具体的には量販セグメントにおける最上位、すなわちプレミアムセグメント・トップのポジショニングを確保することを目指します。
ちなみに現時点で、フォルクスワーゲンがこのポジショニングを確立しているのは、中国とヨーロッパだけです。しかし今後、フォルクスワーゲンは自社の製品戦略を見直すことで、世界全域でこの地位を得られるようにしたいと考えています。
またその製品戦略見直しの第1弾はSUVの強化であり、第2弾は電動化によるものになるでしょう。そしてさらなる新戦略の柱は、新しいデザインコンセプトに基づいた世界共通のブランドシステムの構築へと繫がっていくのです。
e-モビリティ攻勢。数十億ユーロ規模の投資:2025 年までに e-モビリティの分野でマーケットリーダーになる
そうしたなか将来的に、e-モビリティはフォルクスワーゲン・ブランドの中核事業となるでしょう。
これを踏まえ2020年から我々は大規模なe-モビリティ積極策を開始する予定です。フォルクスワーゲンは、量販メーカーとして、電気自動車の躍進で主役としての立ち位置とそれに相応しい役割を果たしていきたい。
つまり2025年までに年間100万台の電気自動車を販売し、 e-モビリティにおける世界的なマーケットリーダーになりたいと考えているという事です。
これが実現した時、我々の未来の電気自動車は、近未来のフォルクスワーゲンにとっても最も新しいトレードマークになるでしょう」と述べた。
なおこれらe-モビリティ積極策の投入資金は、少量生産や利益率の低い既存製品や派生モデルの生産中止を含む、様々な対策を実施していくことにより、都合25億ユーロ以上の資金をe-モビリティのために充てていく想定だと云う。
コネクティビティの分野における主導的役割。業界内最強のデジタル エコシステムを構築
ディース氏は近い将来のe-モビリティに対する投資規模を語った後、「以上を踏まえフォルクスワーゲン。ブランドは、独自のデジタルプラットフォームを開発します。
この新たなプラットフォーム開発というアプローチを採用することで、今後、未来のお客様ニーズにより近づくことができると考えています。
またそれと同時に、包括的なサービスを通じてこれまでの車両販売という一義的なビジネスから乖離し、新しい収益の可能性も切り拓くことになります。
結果フォルクスワーゲンは、2025年までに、世界中に約8,000万人のアクティブユーザーを獲得することを目指しています。
これが実現する暁には、自動車業界の中で、フォルクスワーゲン・ブランドが世界最大のデジタルエコシステムの担い手になることを意味しています。
ネットワークで結ばれたクルマ達に関連するサービスから、直接・間接的に得られる売上高は、2025年までに年間10億ユーロに達すると試算しており、このビジネス領域が我々のビジネスの収益に大きく貢献すると期待しています。
またマーケット毎の業績改善プランでは、まず北米に於けるフォルクスワーゲンは、現在の当地に於けるニッチブランドという位置づけから、収益力を備えた業界屈指の量販ブランドへと成長します。
我々は今後、米国における活動を、大幅にステップアップしたいと考えており、該当市場に於いて特に注力していきたいのは、この国で重要なセグメントである大型車両やリムジンなどとなります。
従って今後、米国を中心とするマーケットエリアに於いては、該当セグメントに関して、製品ラインアップを大幅に拡充していくことになるでしょう。
さらにそれに続く新たなステージ構築として、北米マーケットにも、他エリアと同じく最新の電気自動車を投入していきます。今後数年間、電気自動車のインフラ整備のために、多額の投資を行う方針です」と畳み掛けた。
既にフォルクスワーゲン・ブランドに於いては、北米で(電気自動車のためのモジュラープラットフォーム)に基づく電気自動車の生産は、2021年から開始される予定だと公表されている。
一方ディース氏は中国市場に関して、「フォルクスワーゲンは、既に確立している『TOP of Volume 』というポジションを、さらに強固なものにすることを目指していきます。
このエリアに関しては、車種ラインアップの拡大と電気自動車の迅速な投入により、この目標を達成することができるでしょう。
フォルクスワーゲンはまた、急速に購買力を高めつつある新興の中間層をお客様として取り込むことを目標としており、そのための製品開発にも既に着手しています。
その他、インド、南アフリカ、ロシアといった重要なマーケットでも、フォルクスワーゲンは、中間層の新しいお客様を開拓しようと考えています。
国際マーケット毎の改善プランを策定。未来に向けて企業文化と組織の変革を加速
これらの地域での積極的な戦略は、包括的な組織改革と共に実施されます。
この変革は、素早い意思決定、旺盛な起業家精神、より透明性のある話し合いの文化、よりフラットな階層、より柔軟な働き方を実現することを目標としています。
これらの目標は、収益力があり、持続可能で、従業員にとっても魅力的な企業になるという、フォルクスワーゲンの新しいミッションに裏打ちされると同時に、新しいリーダーシップ モデルおよび広範囲なインテグリティ キャンペーンによってもサポートされます。
売上増加とコスト削減を通じた収益力の成長。今後10年間で売上高を大幅増加させ、同時に収益力の拡大にもコミットしていく
フォルクスワーゲン ブランド取締役会は、「TRANSFORM 2025+」プログラムを着実に実行することにより、今後10年間で売上高を大幅に増加させると同時に、ブランドの収益力も大きく高めることを目指しています。
営業利益率は、2015年の2%から、2020年までには4%へと倍増させ、さらに2025年までには6%に向上させる予定です。2025年以降は、さらにその上の数字を目指していくことになるでしょう。
ブランドの未来を守る収益力確保に向けた重大なステップの一つが、11月18日に発表された「未来のための協定」です。
具体的には、この協定により、2020年までに利益において37億ユーロのプラスのインパクトが得られることになります。そのうち30億ユーロが、ドイツ国内の設備に関するものです。
結果、今後数年間、フォルクスワーゲン ブランドは毎年約45億ユーロの投資を続けていく予定です。これにより、営業利益率が向上し、中期的にはネットキャッシュフローも大幅に改善されることになるでしょう」と結んだ。