リチウム硫黄電池の開発を手掛ける米の蓄電池新興ライテン(Lyten)は8月7日、スウェーデン並びにドイツ等でリチウムイオン電池事業を手掛けるノースボルト(Northvolt)の残存資産の買収契約を締結、全資産の取得に動いた。なお契約の金銭的条件は、現段階では開示されていない。
ちなみに今回のライテンによる買収対象には子会社のNorthvolt Ett(ノースボルト・エット)の他、Ett Expansion(スウェーデン、シェレフテオ)、Northvolt Labs(スウェーデン、ヴェステロース)、Northvolt Drei(ドイツ、ハイデ)の拠点が含まれる。
ライテンは2015年に設立。本社はカリフォルニア州サンノゼにあり、欧州本社はルクセンブルクにある。同社は独自の材料プラットフォーム「Lyten 3D Graphene」を背景に次世代リチウム硫黄電池をはじめとする製品開発に取り組んでいる。
そんなライテンは今後、ノースボルトの全ての知的財産(IP)を取得。今後はノースボルトの現経営陣の複数のメンバーがライテンの事業に加わる予定だ。
この企業買収についてライテンでCEO兼共同創業者を努めるダン・クック氏は、「これはライテンにとって歴史的な瞬間です。
我々の使命は、北米と欧州で現地の資源を調達してクリーンなバッテリー製造とエネルギー貯蔵システムのリーディングサプライヤーになることです。
近年のAIデータセンターのニーズを満たすために当社のリチウム硫黄バッテリーの需要が飛躍的に増加しているこの時期、ノースボルトの吸収することで、先端施設とスウェーデン人材がもたらされ、当社が果たすべき役割を今後、数年に亘って担うことができます。
買収には、合計で約50億ドル相当の資産も含まれており、これには16GWhの既存のバッテリー製造能力、15GWhを超える建設中の能力、100GWh以上に拡張するインフラストラクチャとその計画、およびヨーロッパ最大かつ最先端のバッテリー研究開発センター(ヴェステロース)が含まれます。
当社は、これらの施設の従業員の大部分を再雇用する計画であり、今後は各施設ごとに人員ニーズを評価していきます。
我々は、現地の専門知識を維持することに大きな価値を見出しており、事業の再開と拡大に伴い、長期的な雇用機会の創出に尽力していきます」と語った。
更にライテン会長兼共同創業者のラース・ヘルリッツ氏は、「欧州および北米製のバッテリーに対する需要はますます高まっています。
ノースボルトの世界クラスの製造資産と低コストのクリーンエネルギー、ライテンの世界最先端のリチウム硫黄バッテリー技術、そしてライテンの米国におけるバッテリー材料サプライチェーンを組み合わせることで、欧州および北米のバッテリー製造に係る最適な方程式が生まれます」と畳み掛けた。
またスウェーデン副首相のエバ・ブッシュ氏は、「ライテン社によるノースボルト社の資産買収は、スウェーデン、ノースボルト社の元従業員、そしてスウェーデンを欧州のエネルギー自立の鍵となる国に位置付ける上でも心強い限りです。
私たちはこの取引を全面的に支援するため、管財人およびライテン社と緊密に協力してきました。
今後、ライテン社と協力して、これらの資産の計り知れない可能性を最大限に引き出せることを大変嬉しく思います」と述べた。
なお同買収は、ライテンへの民間投資家からの株式投資によって全額資金調達されます。また取引は、スウェーデン政府、ドイツ政府、および欧州機関の適切な承認を条件としており、買収が今年第4四半期に完了する見込みであるとしている。