ベントレーEXP 15、モントレー・カー・ウィークで初披露

ベントレー モーターズは8月17日(カリフォルニア州ペブルビーチ発)、「モントレー・カー・ウィーク」に参加し、自社最新のラグジュアリービジョン コンセプト「EXP15」を初披露した。

このEXP15は、ベントレーが思い描く未来のデザインビジョンを具現化したモデル。そのスタイリングは、20世紀初頭のグランドツアラーにインスパイアされ、それを21世紀に相応しい形で再解釈してものだという。

このEXP15は、販売を目的としたモデルではないが、こブランド初となる完全電動自動車へと向かうベントレーのデザインの進化を示す重要なステップとなる。

全長5メートルという伸びやかなプロモーションは、直立したグリル、ロングノーズのボンネット、後方に配置されたキャビンというクラシックなアピアランスを主張する。

これは、1930年製のベントレー「スピード シックス ガーニー ナッティング スポーツマン クーペ」のオマージュであり、「ブルートレイン レース」で知られる逸話とも深く結びついているもの。

このレースでは、当時のベントレー会長でありベントレー ボーイズの一員でもあったウルフ・バーナート氏が、南仏カンヌを出発した高級列車「ル トラン ブルー」よりも先にロンドンに到着したという壮大な記録を打ち立てたという逸話が残されている。

今回、披露されたEXP15は、現代的なエクステリアサーフェス処理、先進的なライティングディテール、アクティブエアロパーツなどを組み合わせることで、2025年に於けるベントレーのコンセプトカーとして、過去と未来のクラフツマンシップの美学を巧みに融合させている。

そんなEXP15コンセプトカーに於いて、ベントレーでデザインディレクターを努めるロビン・ペイジ氏と、そのチームは、まずはエクステリアデザインに於いてもベントレーが今後販売する車にインスピレーション与えるべく、以下の5つの外装デザイン原則を具現化させた。

1.アップライト エレガンス
ベントレーのフロントデザインは、「美しくまっすぐに立つ」というデザイン哲学に基づいている。これは、ただの直線ではなく、わずかに弧を描くような繊細なラインで構成されており、品格と堂々とした佇まいを演出するもの。その姿は、あたかも歩き出したサラブレッドが、誇り高く静止した瞬間のよう、力強さと静けさが共存する緊張感のある美しさが、ベントレーならではの存在感を際立たせた。

2.アイコニック グリル
アイコニック グリルは、EV時代に移行しつつある今もなお、ベントレーの“象徴的な顔”として継承されるべき重要なデザイン要素とした。中央に縦のラインを配したこのグリルは、かつては内燃エンジンに空気を取り込むための機能パーツとして設計されていたが、現在ではその役割を超えて、ブランドの美意識と個性を体現する表現の場へと進化させている。

3. エンドレス ボンネット ライン
エンドレス ボンネット ラインは、かつて大型の内燃エンジンを搭載するために設計されていたクラシック ベントレーのプロポーションを継承するもの。このデザインでは、サイドウィンドウの下から始まるラインが途切れることなく車体後部のピラーへと滑らかに伸びていく。

その造形は、1930年のベントレー ガーニー ナッティング クーペを彷彿とさせるものであり、伝統と美学の融合させたもの。電動化によってエンジンルームのスペース的な制約が解かれたことで、EXP15ではこの空間が2つのエレガントな収納スペースとして再構築された。ピアノ式ヒンジを採用したエンジンカバーの造形は、まさにこの名車へのモダンなオマージュといえる。

4. レスティング ビースト
レスティング・ビーストは、EXP15のサイドビューやトップビューに現れる力強さを表現する。ベントレーの象徴的なスタンスは、リア・ホーンチ(後輪上部の筋肉のように張り出した形状)に最もよく表れる。更に車体の全体バランスに於いても「リラックスした水平姿勢」が重視されており、前のめりにも後ろにも偏らない、安定感ある立ち姿が求められる。

こうしたプロポーションへも独自の拘りであり、このEXP15でもキャビン:ボディ=1:2の比率、つまりキャビンが上部の1/3、ボディが下部の2/3を占める構成が理想であるとしている。

5.プレスティージャス シールド
5つ目の原則「プレスティージャス シールド」は、EXP15のリアエンドに於ける存在感に集約されている。この広くクリーンな面は、かつてのベントレー車においてラゲッジスペースとしてボディから独立していた部分に着想を得たもの。

EXP15では、この面がリアゲートに統合され、新たにデザインされたウィングドBエンブレムが中央にあしらわれている。周囲には、精緻なダイヤモンドパターンのリアライトが配され、格式と先進性が見事に融合したビジュアルが完成した。

エクステリアの仕上げには、パラス ゴールドと呼ばれるサテン仕上げの塗装が施された。この塗装は液体金属のような質感を持ち、よく見ると金白色の繊細なハイライトが浮かび上がるのが特徴となっている。

更に伝統的なモチーフを現代的に昇華させているのが、新たに登場した超極薄のアルミニウム顔料で、この顔料は、レーダー機器に影響を与えないという特性を持ち、安全性を損なうことなく車両の前方に塗布することを可能にした。また高い反射率を備えており、LiDARシステムによる検出にも適しているため、自動運転技術にも対応した設計になっているという。

キャビンにおいても、先進的なデザインアプローチが貫かれた。設計には仮想現実(VR)ソフトウェアが用いられ、同手法により、ラグジュアリーなシートや翼のような造形のダッシュボード、ステアリングホイール、各種スイッチやダイヤルといった物理的なインテリア要素に加え、運転者の気分や目的に応じて自然に現れたり静かに背景へと溶け込んだりするデジタル要素が、空間全体と滑らかに調和し、魅惑的でインテリジェントな空間を創出する仕立てとした。

そんなEXP15はコンセプトモデルらしい提案が盛り込まれており、従来の4シート・5シート、4ドア・5ドア構成とは一線を画す、3シート・3ドアというユニークなパッケージングとしている。

この独自のレイアウトは、選ばれたユーザーに特別なドライビング体験を提供するだけでなく、荷物やペットのために設計された、工夫を凝らした収納スペースを車内に組み込み、快適性と機能性を両立させている。更にリアのブートスペース(トランク)は停車時にピクニックシートとして活用できる設計となっており、移動とレジャーをひとつの体験として楽しむことを可能にした。

インテリア素材の選定にも、ベントレーならではの美意識を存分に盛り込んだ。伝統やクラフツマンシップ、サステナブルを大切にしながらも、あえて未来的で先進的であることを追求した。

例えば、250年以上の歴史を持ち、有刺植物を防ぐ布の発明でも知られる英国フォックス・ブラザーズ社による100%ウールのファブリックが、インテリアにダムソン オンブレ(濃淡グラデーション)効果をもたらし、軽量な3Dプリント製チタンパーツと美しく調和さぜている。

総じて車内空間は、操作性、快適性、そして感情に響くディテール至るまで繊細さに拘り、その空間づくりは、移動するだけの空間ではなく、乗員一人ひとりの感情や感覚に寄り添う体験を提供することが重要なコンセプトとした。

そうした造り込みについて今回、EXP15のインテリアデザインを手掛けたダレン・ディ氏によると、「私たちが、ベントレーが紡いできた過去の歴史から大きな影響を受けた要素は、ユニークなウィンドウラインと、グランドツアー向けに特化された非常に滑らかで洗練されたプロポーションを備えた、3シート車のアイデアでした。

その精神を受け継ぎ、EXP15も3シートレイアウトを採用しています。運転席側のドアは、運転席とコクーンのように包み込むリアシートへと通じ、また、パノラミックルーフの一部と2枚のコーチドアが助手席側に上方向に開く構造です。

また、助手席は45度回転する柔軟な設計になっています。そのシートにより、スーパーカーのように無理に身をよじって降りる必要はなく、乗員はスムーズに降りることができます。静かに立ち上がって降りる、その様子は気品に満ちています。

対して助手席は、乗員の気分やニーズに応じて複数のポジションへ移動可能です。例えば、コ パイロットモードでは運転席の隣に前方配置され、スタンダード設定では後部座席の手前にスライド、リラックスモードではリクライニングして使用できます。

またスタンダード設定とリラックスモードでは、広大な足元スペース(レッグルーム)が生まれ、更にこのコンセプトカーでは、コンチェルティーナ式床下収納システムによってフットレストが床へ折り畳まれ、ペットや手荷物用のスペースが現れます。

これらの収納スペースは、トランクを開けることなく車内からアクセスできる設計になっており、荷物をしっかり固定できる構造も備えているため、実用性と利便性を両立させています。

リアハッチを開けるとトランク内には2つのコンパクトなシートが展開され、周囲を照らす雰囲気のあるランプや、冷たい飲み物を収納できる冷蔵庫も装備されています。この冷蔵庫は、後部座席からスライド式で引き出すことができるようになっており、快適で実用的なテールゲートパーティー空間として活用できます。

またEXP15では、新たにマジカル フュージョンという発想が取り入れられています。これは、物理的な素材とデジタル機能を状況に応じて切り替えたり、自然に融合させたりすることを目指したコンセプトです。

例えば、ベントレーで従来から採用されていた「ローテーティング ダッシュボード」は、必要な時にはインフォテインメント画面を表示し、不要になると木製パネルへと回転して隠す機能を持っていました。

EXP15ではこれをさらに進化させ、ダッシュボード全体がデジタルインターフェースとして使える一方で、オフにすればヴェニアの美しい表面が現れ、クラシカルで上質な雰囲気に変化します。

更にダッシュボード中央の奥には、複数の細いパーツが動き・光る、時計のような装置が搭載されており、これはデザインチームによってメカニカル マーベルと名付けられています。

この装置は、車の進行方向やバッテリー残量などの情報を表示するだけでなく、機械芸術のような美しさを持つビジュアルオブジェクトとしても空間に存在感を放ちます。それは単なる表示装置ではなく、見る者の感性に訴えるアートピースとして機能するのです」と説明した。

デザインディレクターのロビンペイジ氏は、「先の通りEXP15は、ベントレーの将来の量産車に影響を与える5つのエクステリアデザイン原則を体現しています。

アイコニックグリルは、新しい電動時代に合わせて有名なベントレーグリルを再解釈しており、エンドレスボンネットラインは、ブランドの独創的なデザインの伝統を反映しています。

レストイングビーストは、無駄のない筋肉質の視覚言語を伝えます。そして、プレステージシールドは、再設計されたウィングドBエンブレムを囲むリアパネルを定義します。これらの原則が組み合わさって、ベントレーにしかできない豪華で持続可能なグランドツアラーの形状と機能を定義しています。

モントレーカーウィークの来場者の皆様は、世界で最も目の肥えたコレクター、愛好家、熱狂者が含まれており、その多くが既にベントレーを所有して下さっています。

EXP15は、その強い意志の表明であり、カリフォルニアの太陽の下で輝くコンセプトを見るのは素晴らしいことでした。ペブルビーチの聴衆から受け取ったフィードバックは、次世代の電動ベントレーグランドツアラーの設計と開発の旅を続ける中で、ブランドのデザインを進化させるために使用されます」と結んでいる。

最後にベントレーの今回のモントレー・カー・ウィークに於ける活動では、自社ブランドの過去・現在・未来を象徴するモデルを展示。

ザ・クエイル:モータースポーツ・ギャザリングでは、現在のベントレーを展示。更に米国初公開第で4世代にあたるコンチネンタル GT/GTC、フライングスパーのコアモデルおよびアズールモデルに加え、新型ベンテイガ スピードも展示された。

なかでも特にコンチネンタルGTスピードは、車体前方から後方にかけて2色がなめらかに溶け合う新たなオンブレ塗装技術を披露した。この塗装はベントレーのビスポーク部門 マリナーによるパーソナル・コミッショニングで選択可能となっているもの。更にマリナーからは、新型バトゥール コンバーチブルも登場し、こちらも米国では初披露となった。

またベントレーの過去からは、ベントレー・ヘリテージ・コレクションより、1939年製のワンオフモデル「マークV コーニッシュ」が2025年のモントレー半島で登場させた。この車はベントレーが空力デザインと流線型ボディの研究を始めた初期の重要な一台となる。

第二次世界大戦の勃発時、オリジナルのボディは破壊され、シャシーも長らく行方不明となっていたが、25年前にそのシャシーが発見され、熱心な愛好家たちが当時のマークVの部品と図面をもとに再現を試みた。

2018年にこのプロジェクトはベントレー社に引き継がれ、2019年のベントレー100周年に合わせて完成。その後、当時のナンバープレート「GRA270」も復活登録されている。「マークV コーニッシュ」が英国とフランス以外に登場するのは今回が初となり、8月14日の「ツール・デレガンス」に参加した後、8月17日の「ペブルビーチ・コンクール・デレガンス」にも、その勇姿が披露された。

 
 




 
 

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