本田技研工業(ホンダ/本社:東京都港区、取締役代表執行役社長:三部敏宏)傘下のホンダ・レーシング・コーポレーション(HRC/本社:埼玉県朝霞市、代表取締役社長:渡辺康治)並びにHRC USは8月8日、伝説のF1マシン「ホンダRA272(シャーシ番号103)」のプレミアムスケールモデルの存在を明らかにした。
このホンダRA272は、1965年のメキシコグランプリで、リッチー・ギンサー選手が駆り、ホンダにF1初優勝をもたらしたマシンを忠実に再現したスケールモデル。
RA272は、ホンダによるF1レース2年目に向けて開発された車両であり、RA271の後継車にあたる。搭載されたV12エンジンは、ホンダがまだ1台も車を販売していなかった1962年に本田宗一郎氏が率いるオートバイ技術者チームが挑んだ。
そうした生まれたRA272のパワーユニットは、12,000rpmもの高回転数を介して当時最高峰の230馬力を生む1.5リッターV12エンジンとして注目を集めた。
また同エンジンを横置きした革新的な手法は、当時の欧州で驚かれただけでなく、このRA272は、1965年10月にメキシコグランプリで優勝したことで世界に衝撃を与え歴史を変えたレーシングマシンとなった。
RA272が果たしたこの偉業は、日本の自動車技術に対する世界的な尊敬の念を呼び、ホンダが世界の檜舞台で革新と卓越性を示す金字塔となった。
今回、アマルガム・コレクション( Amalgam Collection )との提携を結んで製作されたRA272のスケールモデルは、実車と同じ塗装、ハンドメイドによるボディワーク、そして完全再現されたホンダV12エンジンを含む1,600点を超える精密なパーツ群で構成されている。
ちなみにこのアマルガムコレクションというのは、1985年に英国を拠点に設立されたモデルカーブランド。
当初は、英国とドイツの顧客を対象に優れた建築モデルを製作していたのだが、創設者のサンディ・コープマン氏が、ジョーダングランプリチームやウィリアムズフォーミュラ1チームと縁を持ち、精密なモデルカーを制作したのが大きな転換点となった。
以降、モデルカー職人と建築士が互いの技術と知見を集結させ、「今までにないモデルカーを作ろう」というコンセプトで走り始めて現在に至る。
それゆえモデルカーづくりに賭ける情熱は極めて高く、今やF1チームばかりではなく、世界の高級車ブランドと相次いで提携を発表。世界最高品質の素材を厳選した上で極めて精緻なスケールモデルを妥協を排して製造している。
そんなアマルガムコレクションが、今回手掛けたRA272のスケールモデルは、1/8スケール(限定30台、28,995米ドル)と、1/18スケール(限定300台、1,735米ドル)の2サイズで発売される。
各モデルには、特注のディスプレイケース、証明書、そしてホンダ・レーシング・コーポレーションの社長を努める渡辺康治氏のサイン入り記念冊子が付属する。
また両モデル共、8月15日~16日に開催されるモントレー・カー・ウィーク、ザ・クエイル、モータースポーツ・ギャザリング、そしてロレックス・モントレー・モータースポーツ・リユニオンで販売される予定だ。
このスケールモデルの制作にあたり、アマルガムコレクションのプロジェクトチームは、茂木のホンダコレクションホールを訪問。
現車の正確なデジタルスキャンを採取することで、スケールモデルとしてミリ単位を下回る程の完璧なディテールを写し取った。
加えて実際に、当時の過酷なメキシコGPでを勝ち抜いたオリジナル車を、職人達が何時間も掛けてホンダのエンジニア達による形にならないモノづくりの情熱をも感じ取り、何百枚もの写真撮影も行われた。
その後、これらの収集データを基に、精緻なシリコンの型を作成。そのシリコン型から、ひとつひとつの部品を鋳造するために膨大な試作樹脂が造り出された。
より具体的には、1つの型から20~30個の部品を鋳造した後、そこから新しい型を再び作成するという手間を惜しまないプロセスが繰り返された。
これらを基に1/8スケールのモデルの場合は、鋳造品、フォトエッチング、CNC 加工された金属部品など 1,600 個の部品で組み立てられた。
組み上がったモデル車体の塗装には、本物の自動車用塗料を使い、ホンダが長年蓄積してきたカラーリファレンスのアーカイブが使用された。
結果、1/8スケールモデル用の構成パーツに関わる開発・製造に約4,500時間。各モデルの1台毎の鋳造、取り付け、調整、塗装、組み立てには450時間もの精力が費やされた。
そうして出来上がったスケールモデルを前に、HRCの渡辺康治社長は、「このRA272モデルは、単なる歴史のトリビュートではありません。私たちのモータースポーツ史の一部を所有するための招待状というべき製品となっていると確信できます。
当時、〝走る実験室〟という旗を掲げて世界のレーシングシーンに挑み続けてきた我々のスピリットは、今日のホンダのDNAに深く根を張っています。
このRA272のスケールモデルは、そんな私達の今日に至る足跡の原点を思い起こさせてくれる、単なるスケールモデル以上の存在になったと言えるでしょう」 と述べた。
更にHRC USで、グッズ・記念品担当のゼネラルマネージャーを努めるメリザ・ハンフリー氏は、「ホンダのレース史を彩るこの特別な一台をファンの皆様にお届けできることを大変嬉しく思います。
このRA272モデルは、益々充実していくHRCのコレクターズアイテムに新たな息吹を吹き込むものであり、モントレー・カー・ウィークで皆様に実際にご覧いただける日が、とても待ち遠しい気持ちです」と結んでいる。