持続可能な地域交通・物流モデル「マイルワンプロジェクト」
住友商事、セイノーホールディングス、大新東、REAの4社は国土交通省の「共創モデル実証運行事業」の採択を受けて来たる10月1日から、山口県下関市豊田町で産官学連携施策となる国内初のAIオンデマンドシステムと貨客混載を組み合わせた地域モビリティサービス「Mile One(マイルワン)」の実証実験を開始する。
より具体的には、公共交通の利用者減少やドライバー不足に伴い、輸送サービスの維持が困難になっていることを鑑み、国土交通省が旗を振って地域で複数の関係者が連携・協働。公共交通の維持・活性化に取り組む実証プロジェクトを支援するもの。
まずは、そのためにAIを活用した効率的な配車を行って、少ない車両とドライバーでも効率的な運行を可能にし利用者予約を募る最適配車を実施。併せてバスやタクシー、鉄道、飛行機などの旅客向け輸送形態の空きスペースを活用して貨物輸送も担う。
この計画に参画するのは先の通り、住友商事(本社:東京都千代田区、代表取締役 社長執行役員 CEO:上野 真吾)、セイノーホールディングス(本社:岐阜県大垣市、代表取締役社長:田口義隆)、大新東(本社:東京都江東区、代表取締役社長:森下哲好)、REA(本社:東京都中央区、代表取締役社長:坂田 敬次郎)の4社。
こうした活動に複数社が協業。地域の社会課題解決を目指すプロジェクトを「Mile One(マイルワン)」実証と命名している。
つまりマイルワンは、AIを活用したオンデマンド交通システムと、旅客・貨物を同一車両で運ぶ貨客混載機能を組み合わせた、新しい地域モビリティサービスという訳だ。
下関市豊田町で得られた実証事例をいずれは全国展開へ
さて今実証の舞台となる下関市豊田町は、現在4路線の「生活バス」が電話予約型で時刻表に沿って運行されている。
地域の高齢者や住民にとって真に使い勝手の良い公共交通にするため「AIオンデマンド機能」を導入。
また、免許返納や高齢化で買物弱者が増えている現状を踏まえ、同じ車両を活用し、スーパーマーケットの商品などを地域住民の自宅に配送する「貨客混載機能」も導入する。
実証期間の効果測定は、下関市立大学との連携のもと、地域の実情に即した評価項目・手法を定義した上で実施する。それは定量データに加え、利用者アンケートやヒアリング調査も駆使して得られた声を基とし、サービスの継続的な改善を図っていく構えという。
その結果、交通と物流を一体化させ、効果測定を通じて改善を重ねることで、移動と買い物の両面から日常生活を支える新たなサービスモデルの構築を目指す。
更にエリア外への移動や、より個別ニーズに沿った移動、配送では既存事業者と交通・サービス連携することで、より広域かつ便利な近未来の輸送サービスの姿を求めていく。
実証期間は、2025年10月1日から2026年3月31日までの6カ月間を予定、豊田町を対象としたこの取り組みは、この実証を皮切りに、今後は全国への展開も視野に据えて行くという。
各参画者の役割分担は以下の通り
- 下関市:事業実施主体・運行主体
- 冨士第一交通:運行事業者(下関市より委託)
- 住友商事:全体統括、マイルワンサービス/貨客混載AIオンデマンドシステム構築
- セイノーHD:物流スキーム構築(各地で行っている買物支援、貨客混載の実績を踏まえ、運行のサポートおよび利用者促進、配送のアドバイス等)
- 大新東:人流スキーム構築(各地で行っているデマンド交通実績を踏まえ、運行のサポートおよび利用者促進、配車システム運用のアドバイス等)
- REA:AIオンデマンド配車システムの開発・保守・運用
上記以外の関係機関・組織(協力機関)
- 下関市社会福祉協議会:住民周知、利用促進
- 下関市立大学:効果測定協力
- 豊田下児童クラブ/西市児童クラブ:車両ラッピングデザイン協力
- コープやまぐち(ここと新下関店):買い物支援連携
- ゆめマート北九州(ゆめマート豊田):買い物支援連携
- 丸久(サンマート豊田店):買い物支援連携
- 山口県庁:他自治体への展開支援
※各組織の連携により、地域住民の声を生かした実証の運営体制を構築しています。
山形県における民間事業モデルの先行事例
ちなみにプロジェクトの一環として、山形県遊佐町では2025年3月より、地元スーパーマーケット「グリーンストア」と連携した民間事業モデルの実証実験を行っている。
これは買い物を希望するお客様を送迎しながら、空き時間と車両のスペースを利用して、ネットスーパーの商品や法人向け商品を貨客混載で配送し、買い物環境の課題解決に取り組んできた。
こうした先行事例で得られた経験を生かし、下関市での産官学連携による共創モデルの構築に繋げていきたい考えとしている。