縮小基調にあるものの、なかでもドライブレコーダーは好調
市場調査・シンクタンクの株式会社矢野経済研究所(本社:東京都中野区本町、代表取締役社長:水越 孝、以下、矢野経済研究所)では、下記調査要綱にて、国内の市販カー用品市場の調査を実施した。
1.調査期間:2015年10月~12月
2.調査対象:カー用品関連企業(メーカー、輸入商社、卸売業者、小売業者)および関連団体等
3.調査方法:当社専門研究員による直接面談、電話・e-mailによるヒアリング、関連企業へのアンケート調査ならびに文献調査併用
<市販カー用品とは>
本調査における市販カー用品とは、装飾や交換などを目的として購入・利用するカー用品で、純正カー用品以外のものを指す。
製品分野は「乗用車タイヤ」「アルミホイール」「オーディオ・カーナビ関連」「車内アクセサリー」「オイル・ケミカル用品」「消耗品」「機能用品」「ドレスアップ用品」「チューンナップ用品」「その他」の10分野を対象とする。
調査結果サマリー
◆ 2014年の市販カー用品市場規模は前年比97.7%の1兆1,263億円
2014年の国内の市販カー用品市場規模はメーカー国内出荷金額ベースで前年比97.7%の1兆1,263億円であった。
市販カー用品市場は若年層の自動車離れが指摘されるなか、カー用品に対するユーザーの支出抑制などもあり、依然として市場は縮小傾向にある。
2014年は消費税増税前の駆け込み需要に対する需要減少があり、特にオーディオ・カーナビ関連分野は新車購入時の純正カーナビ装着率の向上により大幅に下落している。
◆ 2015年も縮小傾向、2016年は消費税再増税前の駆け込み需要が期待され、若干回復を予測
国内の市販カー用品市場は、需要の源泉となる新車販売台数や自動車保有台数の大幅な増加は期待できず、引き続き縮小が見込まれることから、2015年の市場規模はメーカー国内出荷金額ベースで前年比99.2%の1兆1,173億円を見込む。
2016年は2017年4月に予定されている消費税再増税前の駆け込み需要が期待され、同年の市場規模は前年比100.3%の1兆1,202億円と増加するものの、市販カー用品市場は依然として厳しい状況が続くと予測する。
【 調査結果の概要 】
1. 市場概況
2014 年の国内の市販カー用品市場規模はメーカー国内出荷金額ベースで前年比 97.7%の 1 兆1,263 億円であった。
若年層の自動車離れが指摘されるなか、市販カー用品市場はカー用品に対するユーザーの支出抑制などもあり、依然として市場は縮小傾向にある。
こうした環境下に加えて、2014 年は消費税増税前の駆け込み需要に対する需要減少があった。
製品分野別で見ると、スタッドレスタイヤが需要を牽引した乗用車タイヤ、交換用タイヤと連動するアルミホイール、ドライブレコーダーが売上を伸ばした機能用品は前年比プラスとなったが、それ以外は前年比マイナスであった。
その中でも特にオーディオ・カーナビ関連は、新車購入時の純正カーナビの装着率向上で落ち込みが激しかった上、高性能ナビゲーションアプリの出現によりスマートフォンやタブレットを利用したナビゲーションの利便性がより高くなり、PND(Personal Navigation Device)が落ち込んだことで縮小した。
車内アクセサリー、ドレスアップ用品、チューンナップ用品は、主な購入層である若年層の自動車離れのなか需要は下落した。
オイル・ケミカル用品や消耗品は、自動車の使用や保有年数によって必然的に需要が発生するが、ユーザーの節約志向の高まりや、自動車の年間走行距離の減少や車両の小型化志向により、使用量自体が減少傾向にある。
2. 注目すべき動向
2-1. ヒット商品はドライブレコーダー
国内の市販カー用品市場は縮小傾向にあるものの、ドライブレコーダーは好調で、2014 年の市場規模はメーカー国内出荷金額ベースで前年比 120.0%の 90 億円であった。
ドライブレコーダーは自動車の走行中の映像を記録する装置であるが、近年では車線逸脱警報機能や前方衝突警報機能など、多機能化が進んでいる。
また、カーナビやバックカメラと連動させることで録画範囲の拡張が可能であり、さらにはカーセキュリティ用品と連動させて防犯カメラのような使用方法も可能であることから、カー用品店などはこれらの製品と組み合わせた販売に注力している。
その他にも、本来の用途である事故・衝突時の記録に留まらず、旅行での走行風景を録画するツールとしても利用できるなど、幅広い活用方法を提案することでユーザー獲得に繋げている。
2-2. 女性向け商品開発や販売チャネル開拓
国内の新車販売台数における軽自動車の比率が上昇している※。走り心地や走行性能を追求した軽自動車専用の高性能タイヤが市場に投入されるなど、国内の市販カー用品市場において軽自動車の重要度は高まると見られる。
また警視庁のデータによると、女性の運転免許保有者が増加している。軽自動車の主なユーザー層は女性といわれるなか、女性向けカー用品の展開が重要となってくるものと考える。
女性向けにカー用品を販売する施策として、インテリアや雑貨の有名ブランドと提携した商品開発や、インターネット通信販売チャネルを活用した販売が進められている。
※データ出所:一般社団法人日本自動車販売協会連合会、一般社団法人全国軽自動車協会連合会
3. 課題
カー用品業界全体の課題として、ユーザーの自動車の維持管理に関する知識不足やカー用品に対する認知度の低さが挙げられる。
ユーザーが部品交換時期などを認識していないことで本来であれば交換すべきカー用品が交換されていないケースがある。
販売側は不具合が起きる前の交換といった予防点検の必要性をユーザーに分かりやすく説明していくなど、ユーザーの自動車の維持管理を啓発する取り組みを継続していく必要があると考える。
またカー用品はロングヒット商品であっても、自動車に対する興味が薄い層には認知度が低く、実際に使用する機会を設けたり、実演販売といった販促活動を行ったりしなければユーザー層の拡大に至らないのが現状である。
こうした活動とともに、口コミサイトの立ち上げや SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の活用など積極的な情報発信や販促活動などの重要性が増している。
4. 将来予測
2015 年の国内の市販カー用品市場規模は、メーカー国内出荷金額ベースで前年比 99.2%の 1 兆1,173 億円を見込む。
ドライブレコーダーのほか、2014 年頃から本格的な市場投入が始まった交換用LED バルブなどの一部品目では拡大傾向が見受けられるものの、新車販売台数の落ち込みによって、オーディオ・カーナビ関連分野や車内アクセサリー分野が前年比で減少すると見られるなど、市販カー用品市場全体では縮小傾向にあると考える。
2016 年は 2017 年 4 月に予定されている消費税再増税前の駆け込み需要が期待され、同年の市場規模は前年比 100.3%の 1 兆 1,202 億円と増加するものの、市販カー用品市場は依然として厳しい状況が続くと予測する。