WEC第3戦シルバーストーン6時間、トヨタが首位を飾るものの失格に


8月17日から18日、FIA世界耐久選手権(WEC)第3戦シルバーストーン6時間レースの公式練習に加えて公式予選が行われ、トヨタ自動車ワークスでTOYOTA GAZOO Racingの2台のTS050 HYBRIDは、全セッションを通してトップ2を占める順調なスタートを切った。

TS050 HYBRID 7号車 (小林可夢偉、マイク・コンウェイ、ホセ・マリア・ロペス):
公式練習1回目 : 1番手 (1分39秒916), 24周
公式練習2回目 : 1番手 (1分38秒536), 48周

TS050 HYBRID 8号車 (中嶋一貴、セバスチャン・ブエミ、フェルナンド・アロンソ):
公式練習1回目 : 2番手 (1分40秒191), 27周
公式練習2回目 : 2番手 (1分39秒893), 47周

1-2フィニッシュで終えたル・マン24時間レースから9週間のインターバルを経て、これまでに2勝を挙げているシルバーストーンでの初日を迎えたトヨタ陣営は、好天に恵まれるなかでの2度の公式練習で、小林可夢偉、マイク・コンウェイ、ホセ・マリア・ロペスの3名が駆るTS050 HYBRID 7号車が両セッションでトップタイムをマーク。今季の開幕から2連勝を続けている、中嶋一貴、セバスチャン・ブエミ、フェルナンド・アロンソの8号車も僅差の2番手につけている。

シルバーストーン・サーキットは、昨年4月にTOYOTA GAZOO Racingが勝利を挙げた後、路面が全面再舗装されている。これにより全チームのドライバー、エンジニア共にコースを学び直す必要がある。

またトヨタに関しては、昨年の最終戦バーレーン以来となる高ダウンフォース空力仕様の最適化も必要となる。しかし公式練習1回目のセッションは、他チームの車両のアクシデントによる2度の長い赤旗中断に阻まれ、充分なデータ収集には至っていない。

その後、夕刻から開始された公式練習2回目のセッションは順調に推移し、2台のTS050 HYBRIDはセットアップやハイブリッド・セッティングの最適化に多くの時間を費やすと共に、1周5.901kmのシルバーストーン・サーキットに適応するタイヤの様々なコンパウンド評価を行った。

計3時間・2度の公式練習を終えて、2台のTS050 HYBRIDは146周、861kmを走破。土曜日は予選へ向けて最後の調整のチャンスとなる1時間の公式練習3回目を経て、午後の予選へと臨む。

小林可夢偉(7号車):
とても順調な一日でした。低ダウンフォース空力仕様で走行したル・マンの後、高ダウンフォース空力仕様のTS050 HYBRIDでシルバーストーンに戻って来ましたが、着実に改良を進めており、良いスタートが切れたと思います。出来る限りの準備はしましたし、今のところ全てが上手く行っていると思います。明日が楽しみです。

マイク・コンウェイ(7号車):
多くのテスト項目をこなし、レースへ向けての最適なセットアップを探していました。TS050 HYBRIDは力強く感じますが、いつものことながらクリーンなラップを得るのが難しいです。予選では上手く行くことを願っています。コースの状態はセッションが進むごとに良くなっており、新しい路面のグリップレベルは、これまでよりもやや高くなっているようです。

ホセ・マリア・ロペス(7号車):
順調に初日を終えましたが、まだ長いレースウィークは始まったばかりですし、更なる努力を続ける必要があります。我々は今日、決勝レースへ向けた準備を進めると共に、コース上の混雑の状況について学びました。私自身はとても満足しています。今日は公式練習1回目の赤旗中断のためにあまりドライブすることは出来ませんでしたが、公式練習2回目で最速ラップをマークすることが出来たのは良かったです。

中嶋一貴(8号車):
決勝レースにおいて鍵となる、セットアップの最適化やタイヤの様々なコンパウンドについてテストをこなしました。幾つかの興味深いデータも得られたので、詳細な分析をする必要があります。今回から高ダウンフォース空力仕様になりますが、ここシルバーストーンで走るのはほぼ昨年と同じで馴染みがありますし、感触も悪くありません。

セバスチャン・ブエミ(8号車):
ル・マンの後、ずいぶん長い時間が空いてしまいましたが、ようやくTS050 HYBRIDのコックピットに戻ることが出来て嬉しいです。今日はまずまずのスタートを切ることができました。トラブルに見舞われることなく多くの周回を重ね、異なるタイヤの仕様について有意義なデータが得られました。今日の結果には満足していますし、明日からの予選と決勝レースが楽しみです。

フェルナンド・アロンソ(8号車):
シルバーストーンに戻って来て、順調な一日を過ごすことが出来て最高の気分です。今日は2度のセッションをトラブル無くこなし、多くの周回を重ねることが出来ました。これは、タイヤの仕様やセットアップについて多くのデータが得られたということを意味しています。これから我々は、今日得られたデータを分析し、予選に向けての最適化を図り、最高のポジションを目指します。

(追加)8月18日(土)、FIA世界耐久選手権(WEC)第3戦シルバーストーン6時間レースの予選が行われ、TOYOTA GAZOO RacingはTS050 HYBRID 7号車がポールポジションを獲得。8号車が2番手グリッドで続き、前戦ル・マン24時間レースに続いて2台のTS050 HYBRIDが最前列に並んで決勝レースのスタートを切ることになった。

TS050 HYBRID 7号車 (小林可夢偉、マイク・コンウェイ、ホセ・マリア・ロペス):
公式練習3回目 : 4番手 (1分40秒033), 28周
公式予選 : 1番手 (平均1分36秒895)

TS050 HYBRID 8号車 (中嶋一貴、セバスチャン・ブエミ、フェルナンド・アロンソ):
公式練習3回目 : 1番手 (1分37秒677), 31周
公式予選 : 2番手 (平均1分37秒306)

マイク・コンウェイ(7号車):
最初のアタック中に、コンマ何秒かのタイムロスを喫したため、タイヤをセーブするために一旦アタックを止めました。2周目は、コース外にはみ出さないように特に注意しながらも、良いアタックが出来ました。ホセも新しいタイヤでなかったことを考えれば、素晴らしいアタックをしてくれました。TS050 HYBRIDは、レースウィークの始まりから全く問題なく、明日も良いレースが出来ると思います。

ホセ・マリア・ロペス(7号車):
明日の目標はもちろん優勝なので、ポールポジションからスタートできるのはとても嬉しいです。我々はこれまで何度かポールポジションを獲得しながらも、まだ勝てていないので、目標は明確です。予選は上手く行きました。マイクが1周目のアタックを途中で止めたのでちょっと心配しましたが、翌周のアタックで素晴らしい走りを見せ、僅差ながらトップタイムをマークしました。私はこの差を守れば良いと分かっていましたし、自分のアタックラップには満足しています。ポールポジションからスタートが出来るのはもちろん良いことですが、明日のレースは長いので、後は全力で戦うだけです。

中嶋一貴(8号車):
予選で1-2のポジションを獲得出来、チームにとってとても良い一日となりました。7号車のクルーに祝福を送ります。私自身は大丈夫だと思っていたのですが、コース外にはみ出したとしてタイムを失ってしまったのがちょっと残念です。しかし、このミスがなかったとしても7号車がポールポジションを獲得していたでしょう。今日の結果には満足しており、明日の決勝レースが楽しみです。優勝を目指してプッシュします。

フェルナンド・アロンソ(8号車):
良い一日でした。公式練習3回目で、幾つかの異なる車両セットアップを試してみて、主たる目的である、レースへ向けたとても良い準備が出来ました。決勝レースと予選の1周アタックとでは、ハイブリッド・システムの使い方がやや異なり、難しい面があります。それでもチームとして1-2のグリッドが獲得出来たことには満足していますし、我々も明日は更なる勝利を目指して戦います。

(2018年08月20日・追加)
8月18日(土)から19日(日)にかけて行われたWEC第3戦シルバーストーン6時間の決勝レースは1-2フィニッシュを果たしたものの、決勝レース後の車検で失格となっている。

具体的には、中嶋 一貴、セバスチャン・ブエミ、フェルナンド・アロンソがドライブしたTS050 HYBRID 8号車が1位、小林 可夢偉、マイク・コンウェイ、ホセ・マリア・ロペスがドライブした7号車が2位でチェッカーフラッグを受けた。

しかし両車共に、今回のサーキット改修で新たに設けられた縁石を乗り越えた際に発生した衝撃により、車体前方下部にダメージを負い、車検で8号車は2500Nの荷重をかけた際にスキッドブロック前面に右側で6mm、左側で8mmの偏向があったことで車体剛性で不適合との判定が下され、同じく7号車も同じくフロント前部に9mmの偏向があったことで2台共に失格となった。

これによりプライバーターでNo.3のレベリオン・レーシング/レベリオンR13・ギブソン(トーマス・ローレン/マティアス・ベシェ/グスタボ・メネゼス)が優勝。

2位にNo.1 レベリオン・レーシング/レベリオンR13・ギブソン(アンドレ・ロッテラー/ニール・ジャニ/ブルーノ・セナ)が続き、さらに3位には、No.17 SMPレーシング/BRエンジニアリングBR1・AER(ステファン・サラザン/イゴール・オルトツェフ)がポディウムに立った。

これを受けてトヨタ自動車並び傘下のTOYOTA GAZOO Racing teamは、「当該の車両部品は2017年初めより使用を開始し、直近では今年の開幕戦のスパで同様の検査に合格しています。我々は今後、この判定に対する対応を検討してまいります」と結んでいる。

以下はWEC第3戦シルバーストーン6時間レースの結果についての 豊田社長のコメントとなる(2018年8月21日公表)

レースでは2台のドライバー達が全力でクルマを走らせてくれました。終始、ファンの心を熱くするような走りだっただけに、今回の裁定でその結果を失うことになってしまったこと、本当に残念に思います。

“全力で走らせ、結果を得られるクルマ”をつくることができていなかったことを6人のドライバー達に、先ずは謝りたいと思います。申し訳ありません。

一方で、今回、ドライバー達が極限までクルマを追い込んでくれたことで、我々のクルマづくりはまだまだ至っていないということに気づくことができました。

そこまでの走りをしてくれたことにも感謝しています。
ドライバーのみんな、ありがとう。我々は、クルマをもっと強くして、次のレースに向かってまいります。

そして、ドライバー達には次の富士戦で、もう一度、思いきり走ってもらい、チャンピオンシップ獲得に向け、ワンツーフィニッシュを果たして欲しいと思います。

ファンの皆様には、その2台の姿をご期待いただき、引き続き、応援をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

トヨタ自動車株式会社
代表取締役社長 豊田章男

ちなみにこれと似たレース結果は、2016年のWEC世界耐久選手権の開幕戦となった4月17日の英国・シルバーストーン・サーキットで、当時のカーナンバー07のアウディR18(M.ファスラー・A.ロッテラー・B.トレルイエ組)が194週を消化。

トップでチェッカーフラッグを潜ったが、レース後の車検でLMP1技術規則(フロントスキッドブロックの厚さ)に準拠していないことを明らかになり失格となったことがあった。

今回はそれとは異なるもの・経緯ではあるが、それと同じく心残りな結果となった。ただ、まともにぶつかってもトヨタ陣営とは勝負にならない3位以下のプライベーター勢が優勝を勝ち取ったことは、レースは水物であるとする定説に沿ったものであり、勝利の女神が微笑んだことについては、その努力を称えるべきでもあるのだろう。

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