福井県坂井市、既存の予約制乗り合いタクシーを自動運転化へ

地域交通の未来を見据えた「有人運行×無人運行」の融合

福井県坂井市は、来たる10月から11月の2ヶ月間、市民の生活に密着した移動手段の充実を図ることを目的に、自動運転実証事業「イータクプラス」を実施する。そこで今回は、同実施計画の発表にあたり7月24日、坂井市役所で市長会見を開いた。

*写真は、自動運転の実証事業で使われる車両の前で、「イータクプラス」をアピールする池田・坂井市長(右)とMONET Technologiesの森川副社長

そんな坂井市では、2023年1月より主に高齢者の方の通院や買い物など日常生活に必要な近距離移動手段として、「イータク(オンデマンド型交通)」を運行してきた。

現在では、月間約3,000人がこれを利用しており、今や地域に定着した交通サービスとなった。しかし利用者の増加に伴い、予約の取りづらさや運転手不足といった課題が顕在化、持続可能な交通体系の構築が求められてきている。

そこで、「イータク」の利用が集中する需要が高いエリアの運行を自動運転車両に置き換え、既存の有人車両にゆとりを持たせることで、利用機会の拡大と新たな移動需要の創出を図り、地域全体の移動利便性向上を目指す。

今回の実証では、近距離移動型の「イータク」モデルをアップグレードした、超近距離型の「イータクプラス」モデルとして、既存のオンデマンド交通の仕組みを活用しながら、自動運転技術を融合させることで、地域交通の新たな可能性を探っていく。

事業の目的としては以下の課題解決を目的としている
・公共交通分野における運転士不足問題に対しての有用性の検証
・イータクの需要拡大に伴う増車対応課題への対策
・イータクの潜在的な超近距離移動(寄り道)需要の把握・検証

実証事業の概要
事業名:自動運転社会推進実証事業「イータクプラス」
事業主体:坂井市
関係企業:MONET Technologies 株式会社(事業管理)
May Mobility Japan 合同会社(自動走行システム)
ケイカン交通株式会社 (運行事業者)
自動運転レベル:自動運転レベル2(運転手が乗車し、いつでも手動介入が可能な状態)
実施期間:2025年7年10月上旬~11月末(約2か月間)
運行区間:坂井市役所春江支所~春江病院間(約2.5km)
使用車両:ミニバン「シエナ(トヨタ自動車)」をベースとしたMay Mobility社のシステムを搭載した

車両(運転席除き5人乗り)について
最高時速:48km(自動走行時)
運行日時:月~土曜日(日・祝除く)午前8時~午後4時(到着時刻)
運行方法:事前の予約内容に応じて停留所間を運行(オンデマンド型)
停留所数:7か所(県道春江川西線、嶺北縦貫道、市道江留上針原線を経由)
特色:全国的にも事例の少ない、乗用車タイプの自動運転車両を活用した実証事業となった。機動性や加減速性能に優れているため、地域の交通環境との親和性が高く、よりスムーズな社会実装が期待される。きめ細やかな利用者ニーズに応えるべく、既存の「イータク」と同じアプリケーションを活用して運行を実施する見込みだ。

同事業の今後の展望
当該事業は、国の「地域公共交通確保維持改善事業補助金(自動運転社会実装推進事業)」の採択を受け実施する。2027年度には、一部区間での自動運転レベル4(完全自動運転)を目指す計画で事業を推進していく。
また、地域に浸透している既存のオンデマンド型交通(イータク)と自動運転を融合させた自動運転実証事業は、他の地域に於いても、類を見ない取り組みであると考えており、地方都市の交通施策のモデルケースとして『坂井市モデル』の構築に取り組んでいきたいと考えだ。

参考:「イータク(オンデマンド型交通)」の概要
事業名 :「イータク(オンデマンド型交通)」
運行日時:月~土曜日(日・祝除く)午前8時~午後5時(到着時刻)
予約方法:電話・スマートフォンアプリ・LINE
運行方法:事前の予約内容に応じて停留所間を運行(オンデマンド型)
運行範囲:市内を4つのエリアに区分し、エリア内と隣接するエリア内の停留所間を運行
停留所数:769か所(2025年7月28日時点)
乗車運賃:500円(一般)・300円(65歳以上・障がい者・障がい者の介添え人・小中高生)
利用状況:2024年度の利用者数は、年間で延べ3万人の利用があり、今年度においては、月約3,000人の利用があり、年間延べ3万5000人以上の利用が見込んでいる。