WEC世界耐久選手権の開幕戦(開催地:英国・シルバーストーン・サーキット、開催期間:4月15~17日)が4月17日(日曜日)に開催された。
決勝結果は、前日の予選セッションでポールポジションを獲得した7号車・アウディR18(マルセル・ファスラー/アンドレ・ロッテラー/ブノワ・トレルイエ)が、ポルシェ919 HYBRID 2号車(ニール・ジャニ/ロマン・デュマ/マルク・リーブ)とのつば競り合いを演じて開幕戦を制した。
しかし決勝後の車検で、7号車がLMP1技術規則(フロントスキッドブロックの厚さ)に準拠していないことを明らかになり、ポルシェ919 HYBRID 2号車(ニール・ジャニ/ロマン・デュマ/マルク・リーブ)が繰り上がり優勝となった。
予選に於ける期待のトヨタTS050 HYBRID勢は、同セッションの段階に於いて制御系トラブルに苦しみ続け、アウディ・ポルシェのライバル勢と、まともに競い合うチャンスが得られないまま、#6号車(ステファン・サラザン/マイク・コンウェイ/小林可夢偉)が5番手。
#5号車(アンソニー・デビッドソン/セバスチャン・ブエミ/中嶋一貴)は6番手スタートとなった。
明けて決勝レースでは、中盤に於いてアウディ7号車から首位を奪ったポルシェ1号車が一時期リードを広げたのだが、LM GTE Amクラスに出走しているポルシェ86号車(ガルフ・レーシング)と絡んでしまいリタイア。一方で、アウディ側の8号車も、ハイブリッド機構のトラブルで戦列を去った。
代わってアウディ7号車と、ボルシェ2号車のデットヒートに勝負の行方が持ち込まれた。
しかしポルシェ2号車が、右フロントタイヤのパンクに見舞われてピットイン。
対して、アウディ7号車も燃料給油のモタつきでポルシェに迫られるものの、今度はポルシェ陣営が終盤に燃料不足となってピットストップ。結果、この機に乗じたアウディが、46秒差で辛くも逃げ切ったが、結果は意外な番狂わせとなった。
対して、開幕戦ではライバル勢から大きく引き離されたトヨタ陣営は、6号車(マイク・コンウェイ/ステファン・サラザン/小林可夢偉)が一週遅れの3位表彰台獲得がやっと、という結果だったが、こちらも繰り上がって2位に。
トヨタ6号車の僚友の5号車(アンソニー・デビッドソン/セバスチャン・ブエミ/中嶋一貴)は走行中、リヤタイヤのパンクに見舞われて、車体に損傷を被り7位に終わったが、こちらも6位になっている。
なおLMP2クラスは、RGBスポーツ・バイ・モランドの43号車リジェJS P2・ニッサンがクラス優勝。
LM-GTE Proは、ポールスタートのAFコルセ71号車フェラーリ488 GTE(ダビデ・リゴン/サム・バード)が優勝。LM-GTE Amクラスでは、83号車フェラーリF458イタリアを走らせるAFコルセが栄冠を勝ち取っている。
結果トヨタは、LMP1-ハイブリッドクラスのマニュファクチャラーで唯一2台が完走を果たしたことで、全9戦で戦われるシリーズの開幕戦を終えた時点で、マニュファクチャラーズ選手権では首位につけた。
次戦は5月7日(土)にベルギーのスパ・フランコルシャン・サーキットで開催されるスパ6時間レースとなる。
【トヨタ陣営のコメントは以下の通り】
佐藤俊男 チーム代表:
開幕戦からエキサイティングで様々なことが起こったレースでした。予選が厳しい結果だっただけに、勇気づけられる決勝結果となりました。
全く新しい車両が、2台共に完走出来たこと、そしてパフォーマンスもこれからに期待を繋ぐものでした。まだ我々は望んだレベルには達していませんが、昨年に比較すれば大きな進化を遂げています。
#6号車がレース終盤、非常に良いラップタイムを刻んでくれたことは、TS050 HYBRIDの高いポテンシャルを示しています。次戦へ向けて更に性能を向上すべく努力を続けます。
中嶋一貴:
我々の#5号車にとっては厳しいレースとなってしましました。ペースはまずまずだったのですが、ライバルには届きませんでした。パンクは残念でした。
GTカーと接触してしまったのだと思いますが、それ以上は分かりません。あの瞬間に全てが終わってしまいました。修復してコースに戻してくれたメカニックに感謝しており、選手権で重要なポイントも獲得出来ました。
我々はチームとしては進歩していることを示せたと思いますし、良いシーズンのスタートを切れました。次戦のスパではどれだけ進歩出来るかお見せしたいと思います。
アンソニー・デビッドソン:
チームメイトが表彰台フィニッシュを果たせたことを喜んでいます。冬の間のハードワークが報われました。
我々の#5号車については、もしパンクに見舞われていなければ、とも思いますが、それでもレース終盤には、勝つには充分な速さはありませんでした。まだやるべきことは多いですが、次戦はもっと良い戦いが出来ればと思っています。
セバスチャン・ブエミ:
まず#6号車に祝福を送ります。彼らは全力でレースを戦い、良い結果をチームにもたらしてくれました。我々は不運なタイヤのバンクに見舞われたことで、表彰台フィニッシュのチャンスを失ってしまいました。
この週末に学んだことを活かして次戦以降に臨みます。ライバルを捕らえるために更なるハードワークが必要なことは明らかですが、昨年に比べれば着実に進化しており、これからもプッシュを続けます。
小林可夢偉:
良いシーズンのスタートが切れました。特に私にとっては最初のレースだったので良かったと思います。
昨年と比べて進歩していますが、まだ多くのポテンシャルが秘められているはずです。更なる改良を続け、TS050 HYBRIDからもっとパフォーマンスを引き出せば、ライバルと良い戦いが出来ると思います。TS050 HYBRIDでどれだけの戦いが出来るかとても楽しみです。
ステファン・サラザン:
勝利こそ叶いませんでしたが、表彰台フィニッシュはチームにとっても良かったと思います。
TS050 HYBRIDは本当に素晴らしいレースカーで、大きなポテンシャルを秘めています。まだまだ多くの領域で使いこなすための努力が必要ですが、既に昨年よりもライバルには近づいています。
これからも全ての領域について全力でプッシュを続けなくてはなりません。チームはやる気に満ちており、我々は上位争いへと激しく戦い続けています。
マイク・コンウェイ:
表彰台を獲得出来たのは素晴らしいことで、良いシーズンのスタートを切ることが出来ました。
簡単なレースではなく、2位はハードな戦いの末の結果です。1周のみのラップタイムでは遜色ないのですが、スティントを通してのペースという面では、ライバルに追いつくためにはまだ努力が必要です。
専念すべき領域は分かっています。世界選手権という意味で我々は着実にポイントを獲得しました。良い結果で週末を終えることが出来ました。
LMP1クラスのリザルト
順位/No_/Car____/Team___/Driver_/Gaps
0/#07_/アウディR18_/アウディ_/M.ファスラー・A.ロッテラー・B.トレルイエ_/194(レース後の車検で失格)
1/#02_/ポルシェ919ハイブリッド_/ポルシェ_/R.デュマ・N.ジャニ・M.リーブ_/194
2/#06_/トヨタTS050ハイブリッド_/トヨタ_/S.サラザン・M.コンウェイ・小林可夢偉_/1Lap
3/#13_/レベリオンR-One・AER_/レベリオン/M.トゥシャー・A.インペラトーリ・D.カライハマー_/11Laps
4/#12_/レベリオンR-One・AER_/レベリオン/N.プロスト・N.ピケJr.・N.ハイドフェルド_/13Laps
5/#04_/CLM P1/01・AER_/バイコレス_/S.トルーマー・O.プラ・J.ロシター_/22Laps
6/#05_/トヨタTS050ハイブリッド_/トヨタ_/A.デイビッドソン・S.ブエミ・中嶋一貴_/24Laps
7/#01_/ポルシェ919ハイブリッド_/ポルシェ_/T.ベルンハルト・M.ウエーバー・B.ハートレー_/124Laps
8/#08_/アウディR18_/アウディ_/L.ディ・グラッシ・L.デュバル・O.ジャービス_/125Laps