日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員会(CAR OF THE YEAR JAPAN)は11月9日、株式会社SUBARUより、先の11月7日に決定した「10ベストカー」の受賞を辞退する連絡を受けたことを公表した。( 坂上 賢治 )
この件。同委員会によると、先の11月5日にSUBARUが発表した「当社群馬製作所における完成検査に関わる不適切事案」に紐付く辞退である旨が伝えられたとしている。
これにより日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員会が、当初10ベストカーに選出されていた「スバル フォレスター」は、11月20日の10ベストカー試乗会を欠席し、最終選考の対象にはならないことになった。
従って今年の日本カー・オブ・ザ・イヤーの最終選考会に臨む車両はフォレスターを欠いたことで都合9台となっている。
なお当初、第一次選考会によって全27台のノミネート車の中から最終選考会に進んだ上位10台は以下の通りとなっていた。また最終選考会は12月7日に実施される見込みだ。(以下順不同)
- 株式会社SUBARU【 スバル フォレスター 】
- トヨタ自動車株式会社【 トヨタ カローラ スポーツ 】
- トヨタ自動車株式会社【 トヨタ クラウン 】
- 本田技研工業株式会社【 ホンダ クラリティ PHEV 】
- マツダ株式会社【 マツダ CX-8 】
- 三菱自動車工業株式会社【 ミツビシ エクリプス クロス 】
- FCAジャパン株式会社【 アルファロメオ ステルヴィオ 】
- ビー・エム・ダブリュー株式会社【 BMW X2 】
- ボルボ・カー・ジャパン株式会社【 ボルボ XC40 】
- フォルクスワーゲン グループ ジャパン株式会社【 フォルクスワーゲン ポロ 】
※10ベストカーは最終選考会まで全車同等扱いとするため各車の得票結果は未公表となっている。
ちなみに今内容は、自動車メーカーとして「完成検査」について実直かつ真摯に捉えた末の決断であるが、ベスト10として選考されたフォレスター自体のパッケーンジングの仕上がりについては、先の10月、箱根で同車のステアリングを握る機会を得た者としては良質な印象を持っていた。
そもそもフォレスター自体は、決してスポーツ志向に振った車両ではなく、家族で出掛ける際のコミュニケーションツールのひとつとして格好のアイテムである訳だが、実際に乗ってみるとステアリング素直な操舵感と、低いエンジン回転域からのアクセルワークで欲しいだけ自由に呼び出せる駆動トルクの出力特性と相俟って、つづら折りの山間道路を軽やかかつグルグルと面白いように曲がっていく。
その走りは、休日の家族を伴ってのドライブスピードであっても、自身の「運転の腕が上がった」ように感じられるくらいの爽快感があった。
それほど現代の交通社会に向けて送り出される昨今のSUBARU車は、出来自体が決して悪い訳ではないゆえに、ここのところの相次ぐ不正の連鎖は厄介だ。
考えてみれば今日、車両の安全とは何なのかを考えさせる切っ掛けとなった『アイサイト』は、今回懸案となっている群馬の地の開発拠点で、延べ20年間もたゆまず続けられてきた基礎研究がその源流になっている。
少なくともエンジニア達の生真面目さに関しては、他社に比肩する以上の姿勢を持っている同社ゆえに、今回の結果に至った経緯については、返す返すも経営陣の責務が最も大きいと感じる。
率直に云って筆者は、特別なSUBARUファンではないものの、それでもSUBARU独自の強みを枯れさせてしまうのは忍びない。
またそもそもSUBARUがプレミアムメーカーを目指して切り拓くべき道程もまだ半ばである。同社は今の混迷状態にある環境から出来るだけ早くに抜け出し、今一度、強固なブランド価値を打ち立てて欲しいと切に願うばかりだ。