日本特殊陶業( 本社所在地:名古屋市東区、代表取締役社長:川合尊 )とAVL List GmbH
( エイヴィエル / 本社所在地:オートリア・グラーツ、会長兼CEO:ヘルムット・リスト )は6月4日、互いが持つ技術的優位を持ち寄り、革新的な水素製造技術の共同開発に着手する。
*写真は、左からキャサリン・リスト氏( AVL文化財団CEO )、ヘルムット・リスト氏( AVL CEO )、アレクサンダー・ファン・デア・ベレン氏( オーストリア共和国連邦大統領 )、ドリス・シュミダウアー、鈴木啓司氏( 日本特殊陶業 上席執行役員 )、森茂樹氏( 日本特殊陶業 エネルギー事業本部 本部長 )
まず日本特殊陶業は長年、スパークプラグや酸素センサーなどセラミック技術を基盤に自動車部品の開発・製造を手掛けてきた。
そうしたなかで今日、同社は、自らの電気化学の知見を活かしたSOEC( 固体酸化物形電解装置 )技術の開発に取り組んでいる。
特に近年、注力しているのはSOEC技術領域の〝開発〟〝スケールアップ〟〝産業化〟分野であり、このような領域はアルカリ型、PEM型、AEM型といった他の水素製造技術と比較して、電気エネルギーから水素への変換に係る過程でのネルギー効率面で、独自の優位性を保持し続けてきた。
そうした領域での優位性は、製鉄、石油精製、化学品製造、合成燃料の生産など、排熱を利用できるプロセスと組み合わせた場合に一段と発揮される。
つまり日本特殊陶業は、固体酸化物セルおよびスタックに関して数十年に亘る数多くの知見を有している企業といえるだろう。
対してAVLは、自動車業界をはじめ、鉄道、船舶、エネルギーなどの広域に於いて事業展開するリーディングカンパニーであり、近年は、モビリティの電動化、ソフトウェア、AI(人工知能)などの領域に取り組んでいる。
更に同社は、エネルギー集約型セクターが、より環境に優しく効率的なエネルギー生成・供給を実現するべく取り組んでいる。例えば、スタックをモジュールや電解装置全体のシステムへと統合する技術では極めて高い専門性を持っている。
そこで今回、両社は双方の知見と技術を結集し、スタックモジュールおよび電解装置全体のシステム開発に注力していくという。
さて、この協業に至った発端は、先の2025年5月21日、オーストリア共和国連邦大統領アレクサンダー・ファン・デア・ベレン博士の立ち会いのもと、AVLのヘルムット・リストCEOと、日本特殊陶業でグローバル戦略本部経営戦略グループ経営戦略室・事業基盤戦略室担当上席執行役員を務める鈴木啓司氏が、オーストリア貿易使節団のプロジェクト「Composing the Future – Together(未来の共創)」の一環として取り組むことを決断したもの。
この際に鈴木啓司上席執行役員は、「SOECは、産業分野に於ける最も効率的なグリーン水素製造技術としての導入が期待されており、我々が長年培ってきた電気化学材料技術の知見を提供。これにAVLのシステム設計力を組み合わせることで、まだ見ぬ、未来を切り拓いていけるでしょう」と述べた。
一方でAVLのCEO兼会長のヘルムット・リスト教授は、「SOECは、その高い効率性により、グリーン水素の製造に於いて益々重要な役割を担いつつあります。
今回の日本特殊陶業との協業は、この重要な技術のスケーリングを加速させるうえで大きな一歩です。
今後は産業界のCO₂排出量を持続的に削減させ、気候に優しいエネルギー社会への移行を積極的に推進すること。これを両社の明確な目標として据えて、取り組んでいきます」と結んだ。