100年に一度の渋谷駅再開発計画、いよいよ最終章へ

東急、東日本旅客鉄道、東京地下鉄が推進する渋谷駅街区計画は5月9日時点に於いて、渋谷スクランブルスクエア開発、渋谷駅改良、ハチ公広場や東口広場を包括する広場整備などを同時並行で進める100年に一度の大規模再開発の最終章に取り組んでいる。

*記事冒頭の画像はスクランブル交差点からの視点

宮益坂交差点方面からの視点

その工期は、2019 年の渋谷スクランブルスクエア第Ⅰ期(東棟)の開業に続き、2025年5月に渋谷スクランブルスクエア第Ⅱ期(中央棟・西棟)の工事に着工。今後はいよいよ最終章に進む概略を公開した。

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当該計画のポイントは以下の通り
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2030 年度に渋谷駅と渋谷の東西南北を、地上とデッキ階で結ぶ多層な歩行者ネットワークが誕生する。これにより渋谷駅とその周辺のアクセス性が飛躍的に向上し、巡り歩いて楽しい“駅まち一体開発”の実現に大きく近づく。

JR 渋谷駅は、改札とコンコースの整備が概ね完了し、駅の東西を結ぶ最大幅員20m超の自由通路も整備される。これにより渋谷駅は快適に利用できる、渋谷のまちに相応しい象徴的な空間へと生まれ変わる。

2031年度には、渋谷スクランブルスクエア第Ⅱ期(中央棟・西棟)が完成する。商業フロアは、完成済みの第Ⅰ期(東棟)と併せて1フロアあたりの売場面積が最大約6,000 ㎡となる首都圏最大級の商業施設となり、回遊性が向上。多様な過ごし方を提供する施設が誕生する。

ハチ公広場などを含めた全体の完成は2034年度を予定している。工事期間中は工事の情報発信を継続的に行い、利用者の安全を最優先に大規模ターミナル駅としての機能を保ちつつ段階的な街づくりを推進していく。
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より具体的には、駅機能や都市基盤施設が段階的に完成・開業を迎える2030年度~2034年度を「まちびらき最終章」と位置づけ、2030年度から段階的に各鉄道駅間の乗換えや街へのアクセスが飛躍的に改善。渋谷の魅力溢れるスポットが一層、利用し易くなる。

なお同計画は、駅とまちが一体となった都市再生に関するモデル的プロジェクトであり、渋谷のまちを眺め憩い、多様な人々の交流が賑わいを生む拠点として渋谷の駅前空間の整備を進め、世界中から常に注目を集める渋谷の核となることを目指す。

但し開発・計画の変更があり、そのポイントは以下の通り

2010 年頃から計画の検討・策定が行われ、激甚豪雨による浸水・冠水対策として、貯水量約4,000㎥の東口雨水貯留施設整備が行われた。

また乗換え利便性向上のため、埼京線や銀座線ホームの移設などを行いつつ2019年に渋谷スクランブルスクエア第Ⅰ期(東棟)を開業した。

そのような中で、インバウンド旅行者を含めた来街者の増加による来街者ニーズの変化、歩行空間や広場空間に求められる機能の多様化など、時代に合った計画となるよう、進化と刷新を重ねた。

例えば、渋谷駅およびその周辺は、JR 山手線・埼京線と東京メトロ銀座線が立体交差する上に建物とホームが一体の構造物になっているという複雑な環境・構造を抱えているため、度重なる施工計画の見直しを行いながら、工事を進めてきた。

また駅前のさらなる快適性・回遊性向上のため、広場空間と歩行者動線を再編、防災性・安全性の強化のための都市基盤施設の変更なども行うなどの工程の検討を実施した。

これら計画の見直しを踏まえ、2027年度の完成を目指してきた渋谷スクランブルスクエア第Ⅱ期(中央棟・西棟)は、開発スケジュール・計画を変更を行った。

3階改札前コンコースのイメージ

自由通路のイメージ

渋谷駅の東西を結ぶ多層ネットワークの完成(2030年度予定)

「まちびらき最終章」のはじまりとなる2030年度には、長年に亘る渋谷駅改良工事の中で移設を繰り返してきた通路や改札、階段などの駅設備や駅機能を担う主要施設が概成を迎える。

特に3階のJR 線および銀座線コンコースの概成に合わせて、銀座線渋谷駅の直上に位置する「4 階東口スカイウェイ(仮称)」や、渋谷スクランブルスクエア西棟の西側に整備される「西口 3 階上空施設(仮称)」の一部が概成することで、渋谷駅を中心とした東西南北に繫がる2~4 階レベルでの高さとなるデッキ階の歩行者ネットワークが誕生する。

更に銀座線渋谷駅ホーム直上には、空中回廊として通行可能な「4 階東口スカイウェイ(仮称)」が完成し、渋谷スクランブルスクエア中央棟に接続する。

これにより渋谷駅東口エリアおよび新宿方面・恵比寿方面まで見渡せるようになり、渋谷スクランブルスクエア東棟展望施設「SHIBUYA SKY」と共に渋谷を代表するスポットが誕生する。

渋谷スクランブルスクエア西棟の前面に約3,000㎡の歩行者デッキとなる「西口 3 階上空施設(仮称)」を整備する。

JR渋谷駅および銀座線渋谷駅の3階改札と渋谷中央街方面、桜丘方面を繋ぎ、渋谷スクランブルスクエア西棟にも接続する。なお、この「西口 3 階上空施設(仮称)」は内藤廣建築設計事務所がデザインを手掛けた。

地上レベルでは、JRハチ公改札前(ハチ公像位置含めハチ公広場の最終形状は検討中)に最大幅員22m、同じくJR南改札前に最大幅員23mの東西を結ぶ自由通路が整備される。これにより利便性が高く・開かれた駅空間が誕生すると共に、東側の宮益坂方面、西側の道玄坂方面へのアクセス性が大きく向上する。

結果、渋谷駅の課題であった混雑が緩和され、快適で分かり易い歩行環境と渋谷らしい楽しい空間を利用者に実感して貰えるようになるとしている。

つまり、これらの歩行者デッキや自由通路の整備によって、渋谷スクランブルスクエアを中心としてデッキ上からの渋谷のダイナミックな街並みを楽しみながら、宮益坂上と道玄坂上をスムーズに移動できるようになるという。

スクランブル交差点方面からの視点

宮益坂交差点方面からの視点

渋谷スクランブルスクエア第Ⅱ期(中央棟・西棟)完成(2031年度予定)

2031年度には、渋谷スクランブルスクエア第Ⅱ期(中央棟・西棟)が完成する。商業フロアは、完成済の東棟と併せて1フロアあたりの売場面積が最大約6,000㎡となる首都圏最大級の商業施設となる。

これにより回遊性が向上し、多様な店舗・商品を選ぶ楽しさが増え、渋谷に来訪される皆様に多様な過ごし方を提供する施設として生まれ変わる。

また、中央棟の 10 階屋上に各国大使館などと連携したグローバルな文化交流体験を提供する施設「10 階パビリオン(仮称)」を整備し、渋谷スクランブル交差点や大型ビジョン群に代表される渋谷駅西側の世界でも有名な景色と新宿方面の街並みの両方を見渡す唯一無二の体験ができる空間を提供する。

この「10 階パビリオン(仮称)」は、プリツカー賞受賞など世界で活躍する SANAA がデザインを手掛ける。

全体完成(2034 年度予定)
中央棟・西棟完成後、2033 年度には中央棟 4 階に最先端技術を活用したコンテンツを体感できる施設「4 階パビリオン(仮称)」および中央棟4階とハチ公広場をつなぐ歩行者ネットワーク向上のための縦軸移動空間「アーバン・コア」が完成する。

ちなみに上記アーバン・コアは、エレベーターやエスカレーターにより多層な都市基盤を上下に結び、地下やデッキから地上に人々を誘導する開かれた縦軸空間となる。

「4 階パビリオン(仮称)」は、JR 山手線・埼京線のすぐ上に位置し、渋谷スクランブル交差点を至近で見渡すことができるロケーションとなり、先端技術を発信する渋谷の象徴となる施設として整備される。

そのデザインは、渋谷スクランブルスクエア第Ⅰ期(東棟)のデザインにも関わった隈研吾建築都市設計事務所が手掛る。

上記の他、2034 年度までには、「ハチ公広場」「東口地上広場」「中央棟 4 階広場(JR 線路上空)(仮称)」「西口3階上空施設(仮称)」「中央棟 10 階広場(仮称)」の計約20,000㎡の5つの多様な広場空間も誕生する。

この広場空間は、世界有数の大規模ターミナル駅である渋谷駅直近に位置し、非常時の一時避難場所としての機能を持ち、賑やかな渋谷の街に居ながら、“憩い・潤い・リラックス”も感じて貰えるよう、愛される広場にしていく考えだ。

広場位置図

全体完成までの工事期間中の取り組み
最後に工事期間中には、来街者への理解促進と利便性向上を図るべく、工事中の情報発信などを継続的に実施する。その第一弾として、工事現場見学会も実施。

渋谷駅前の工事は、公共交通機能と歩行者ネットワークを常に確保しながら、狭く限られた空間で幾つもの工事が並行して実施されており、世界でも類を見ないほど難易度の高い工事と言われてる。

その工事現場を実際に見て体感し、渋谷の駅前空間の今と未来の姿を知って貰う見学会を、渋谷駅街区計画の完成までの期間に複数回実施される見込みだ。

渋谷駅街区開発計画 第Ⅱ期(中央棟・西棟)の計画概要
事業主体
東急株式会社
東日本旅客鉄道株式会社
東京地下鉄株式会社
所在
東京都渋谷区渋谷二丁目23番 外
用途:店舗、駐車場等
延床面積:約 95,000 ㎡(参考 全体完成時 約 276,000 ㎡)
階数:中央棟:地上 10 階 地下 2 階、西棟:地上 13 階 地下4階(東棟:地上 47 階 地下 7 階)
高さ:中央棟:約 61m、西棟:約 76m(東棟:約 230m)
設計者
設計:渋谷駅周辺整備計画共同企業体
(日建設計・東急設計コンサルタント・JR東日本建築設計・メトロ開発)
デザインアーキテクト
日建設計、隈研吾建築都市設計事務所、有限会社 SANAA 事務所
施工者 :東急建設株式会社(駅改良工事関連等は除く)
予定工期:2025 年度~2031 年度