ドイツのボッシュこと、ロバート・ボッシュGmbは、AIを搭載した自動運転用のオンボードコンピューターをベルリンで発表
独・ボッシュこと、ロバート・ボッシュGmbH(本社:シュトゥットガルト・ゲーリンゲン、代表取締役社長:Dr.rer.nat.Volkmar Denner <フォルクマル・デナー>、以下、ボッシュ)は、ベルリンで開かれた国際カンファレンスで、同社が開発を重ねている未来の自動運転車両のための頭脳を公開した。
公開した場所は、ベルリンで開催した「Bosch ConnectedWorld 2017」国際カンファレンスの会場内。
ここで同社は、自動運転車両用のオンボードコンピューターを発表。人工知能(AI)を備えたコンピューターは、機械学習の手法で、その頭脳を自らで鍛えることができる。
ボッシュが開発したAI対応オンボードコンピューターは、複雑な交通状況でも、また車両にとって初体験の状況でも、自動運転車両を安全に誘導できる。
ボッシュ取締役会会長のフォルクマル・デナー氏は、モノのインターネット化(IoT)をテーマとするこの国際業界カンファレンスに於いて、「私たちは、状況を自分で判断して 道路を走るすべをクルマに教えているところです。
車両は、ボッシュのセンサーで周囲の状況をモニターできるところまで来ています。
次の目標はAIを利用して、把握した状況を車両が解釈し、他の道路利用者の次の振る舞いを予測できるようにすることです。
自動運転は未来の道路交通の安全性を高めますが、それに欠かせないのがAIです。私たちはクルマをスマートにします。
AIのベースとなるオンボードコンピューター開発のため、ボッシュは米国のテクノロジーカンパニーであるNvidiaと協力します。
ボッシュはNvidiaから、機械学習の手法によって生 成したアルゴリズムを搭載したチップの供給を受けており、AIオンボードコンピューターは、遅くとも2020年代初頭には量産化できる見通しです」と述べた。
2020年代にはドライバーレス車両が日常生活の一部に
同社の技術解説によると、ボッシュのAIオンボードコンピューターは歩行者や自転車を識別できると云う。
但し一般に物体認識と呼ばれる同機能だけでは、今や驚くに値しない。しかし同社が開発したAIは、自動運転車両が状況を評価、判断するのを助けると云う。
例えばターンシグナルを点灯した車両は、そうでない車両に比べ車線変更する可能性が高いと考えるのが普通だ。
そうした自動車が街や道路を運行していく環境並びに対処法を知識として備え、これを動員してAIを搭載した自動運転車両は、対向車が方向転換しようとしている場合など、複雑な交通状況を認識・評価。
こうした環境や状況変化に応じて、自車の動きをコントロールするのだと云う。
またAIを備えた車載コンピューターは、これらの未知の道路環境を走っている間に学習したすべてのことを人工ニューラルネットワークに蓄える。
こうして蓄積された知識をラボで解析し、正確さレベルをチェック。そして路上テストを行った後に、人工的に生成された知識構造を、別のAIオンボードコンピューターにコピーしてアップデートしていくのだと云う。
先のデナー氏は、「私たちは自動運転を、あらゆる状況に対応できるものにしたいと考えています。実際、来る2020年代にはドライバーレス車両が日常生活の一部になる見込みです。
ボッシュは技術開発のあらゆる最前線で自動運転の実現に取り組んでいます。
私たちはAIの分野でも、業界のリーダー企業としての地位を確立したいと考えています。
今後はAIがモビリティに限らず、ボッシュのあらゆる事業分野で重要な役割を果たすようになるでしょう。具体的には10年後、すべてのボッシュ製品が何らかの形でAIを利用しています。
多くの製品にAIが採り入れられる一方、仮にAI を搭載していない製品があったとしても、製造過程でAIの恩恵を受けるようになるはずです。
そうした指針・計画を踏まえ、我々は今年初めにAIセンターの設置構想を発表しました。そしてこの分野の専門能力を磨くため、ボッシュは約3億ユーロを投資する計画です」と述べ、自社のAI戦略の進展に期待を込めていた。
インターネット上でのセキュアなデータ共有と所有
こうしてデナー氏は、Bosch ConnectedWorld 2017のオープニングの挨拶に於いて、2,700人ほどの参加者を前にボッシュの新たな事業分野開拓につながると技術をリストアップした。
そうしたなかAI、クラウドなどと並んで挙げられたものの一つが、「ブロックチェーン」技術だ。
同社によると、消費者はこの技術を使ってデータをオンラインでセキュアに共有できるようになる。その際、第三者に情報が洩れる気遣いが無くなる。
つまりオンラインで当事者同士が取り決め、契約を交わし、支払いを安全に実行できるようになる訳だ。この際、データの匿名化は技術的に保証される。
そんなブロックチェーン技術の基本は、一種の分散化データベースである。具体的には、入力された情報を数千台のコンピューターに伝送して、互いに共有・連動・把握していく。それによって互いのコンピューター間でデータの共通化が図られる。
つまり、無数のコンピューターにより、特定のデータが完全に共有されることから、悪意を持つ特定されたコンピューターネットワークが幾らデータを改ざんしようとしても、対象データの改ざんが物理的に不可能となる仕組みだ。
結果、消費者が特定の1カ所のコンピューティングセンターに依存する度合いが大きく軽減され、結果、データの信頼性が膨大なコンピューター間によって保証される結果となる。
オドメーターの不正操作防止に向けてボッシュとTÜVが協力
デナー氏が、ブロックチェーンの実際的なユースケースとして取り上げたのは、中古車売買で不正操作の温床となっているオドメーターの操作防止であった。
ボッシュは、この技術をドイツの技術検査協会ラインラントTÜVと共同開発中で、カンファレンスではそのライブデモが行われた。
これにより中古車の走行距離をごまかすという、広く行われている慣行に終止符が打たれる。
現在、ドイツ国内だけで、オドメーターの不正による損害は60億ユーロにのぼると推測されており、この不正行為撲滅のため、多数のコンピューターへのデジタルログブックの伝送を利用していく。
車両は定期的にオドメーターの読みを、単一のコネクターからこれら複数のコンピューターに送る。これにより車両のオーナーは、スマートフォンアプリで現在の走行キロ数をいつでも確認し、車載ディスプレイの表示と比較できる。
そしてもしも愛車を手離す時は、このクルマのオドメーターの表示が正しいことを裏付ける証明書の発行を受けることができるようになるという仕組みだ。なおこの証明書はインターネット上の、中古車販売店のオンラインプラットフォームで共有することもできる。
ボッシュは車両を修理工場とネットワーク接続
ボッシュによると、これらインテリジェントネットワーク技術によって、自動車ユーザーの日常生活は大きく変わっていくと云う。
例えば、クルマを利用しての旅行中に、はねた小石が当たって、クルマのサイドウインドウが割れたとする。するとこの車両を管理している修理工場のネットワークは、クラウド経由で自動的に車両のウインドウが割れた通知を受け取り、必要な部品を自動車ユーザーの現在位置から最も近い拠点に迅速に手配する。
こうした物流管理のネットワーク化により、顧客が現在位置に最も近い整備工場に到着した際には、交換部品が早くも用意されており、後はクルマの到着を今や遅しと待つだけとなる。
そして車両が到着すると、拡張現実メガネを着用したメカニックが、ディスプレイに表示された指示に従って、他の方法では考えられないほど素早く作業を済ませてしまう。
ドライバーは、整備工場で短時間待っている間に修理は完了し、素早く目的地に向けて再出発できる。
もはや近未来は、「クルマを預けて翌日受け取りに来る」、その間高額の費用を払って代わりの足を確保する、などの必要は一切なくなる訳だ。
Bosch ConnectedWorld 2017には130人が講演、約2,700人が参加
今年で4回目を迎えたBosch ConnectedWorld 2017は、ベルリンで3月15日と16日の両日にわたって開催された。
ベルリンのステーションビルで開催されるこの業界イベントは、モノのインターネット化をテーマとする世界最大級のカンファレンスのひとつであり、ネットワーク化がもたらす利点の様々な例を、数多くの業界の企業人が紹介していく。
今年のカンファレンスの参加者は、開発担当者、業界代表、ジャーナリストなど2,700人に昇った。
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— Ingenieurversteher (@IngVersteher) 2017年3月16日
講演したスピーカーは、ボッシュのCEOであるフォルクマ ル・デナー氏ほか130名ほどで、その中にはTimotheus Höttges(ドイツ・テレコムCEO)、Edzard Overbeek(HEREのCEO)、Dr. Jen-Hsun Huang(NvidiaのCEO)らの名前も見られた。
なおイベントの一環として開かれたハッカソンでは、プログラマー、スタートアップ企業従業員、デザ イナーなど約500名が参加して、「コネクテッドモビリティ」、「コネクテッドインダストリー」、そして「コネクテッドビルディング」に関係した体験情報とアイデアが交換された。
また併催される展示会で来場者は、80社を超える企業が出品する革新的なネットワーク化ソリューションに触れた。