独VWディース新CEO、年次株主総会で業界リーダーへの返り咲き宣言


 企業文化の変革を加速させるプログラムを本格始動。2018年の力強いスタートを切る

独フォルクスワーゲン AG(本社:ドイツ・ニーダーザクセン州ヴォルフスブルク、グループCEO:ヘルベルト・ディース、以降VW)は5月3日、ベルリンに於いて年次株主総会を開き、新たに最高経営責任者(CEO)に就任したばかりのDr. ヘルベルト・ディース氏のもと、包括的な企業グループ再編のペースを加速させていく構えを示唆した。

https://www.youtube.com/watch?v=1f5KQfaudXM

*年次総会動画(英語)の尺は約72分あり

その決断の理由を、この日、登壇したディース氏は以下のように語った。「フォルクスワーゲングループは、現在、精力的に推し進めてきた経営戦略が実を結び始め、事業・財務の両面に於いて堅調な推移を示しつつあります。

そうしたなか私は、さらなる未来へ向けて、自動車業界の将来を握るであろう重要課題に対して、より秩序ある体系的な取り組みを打ち立て、これをひとつひとつ消化しながら着実な経営改善を進めていく所存です。

そんな当社が目指す道程は、まだ永く遥かな道のりではありますが、 その過程で2018年は大変重要な節目を控えています。それは世界の自動車業界が大きな変化を重ね続けるなか、我々のビジョン“Strategy 2025”に基づき、当社はグループの再編をさらに勢いをつけて推進していかなければならない時期に来ているのです。

なかでも特に、フォルクスワーゲン自身が歩み・育んできた企業文化そのものの新たに変革させていくこと。これこそがフォルクスワーゲンの将来の成功にとって極めて重要です。

我々フォルクスワーゲンは、未来に向けて、より正直で、よりオープンで、より誠実な企業にならなければなりません。言い換えれば、よき企業市民のお手本を示さねばならないということです。なぜなら今後、我々が経済的成功を永続的に継続させていくために、健全な企業文化を持っていることこそが未来を語れる企業として必要不可欠な要素であるからです。

そこで、まず私はグループ内に於ける組織の基礎を固めていくこと。これを最優先課題に据えています。なぜなら私たちの組織は、将来の発展に向けて、これまでとは異なる極めて堅牢な組織構造・信頼されるプロセス・透明かつ論理的なプログラムを必要としているからです。

そうしたなか最も重要なことは組織内の我々全員が何事に於いても正しく行動することです。それは規則を遵守して法律に従うことはもちろんのこと、常に確固たる価値観に基づく倫理に即した行動を行っていかなければなりません。

ゴーイングコンサーンであるべき企業グループという組織体は、将来永劫に渡って永続的に事業を継続していくなかで、時に倫理に反した行為や法令違反に鈍感になってしまうことがあります。それは経営上に於いて誤った方向を向いてしまうという経営上に於ける重大な過ちですが、我々、フォルクスワーゲングループは昨今、そのような過ちに近づいてしまう場面が多過ぎました。

従ってこのような状況をまず変えていくこと。それが取締役会のメンバーおよび私個人にとっての最も優先すべき課題です。今回、取締役会が包括的なプログラム“Together4Integrity”を立ち上げた理由は、 こうした喫緊の問題を、より迅速に改善するための方策でもあるのです。

加えて今後、特に社内の内部通報制度をさらに拡充していきます。併せてコンプライアンス体制とその整備をより一層強化し、これまで以上に組織を実直かつ緻密なものにしていきます。

VWグループの経営幹部と共に写真に収まる中央右のディース新CEO。なお持ち株会社のポルシェ・オートモービル・ホールディング(ポルシェSE)のマティアス・ミュラー戦略・企業開発担当取締役は退任した。
VWグループの経営幹部と共に写真に収まる中央右のディース新CEO。なお持ち株会社のポルシェ・オートモービル・ホールディング(ポルシェSE)のマティアス・ミュラー戦略・企業開発担当取締役は退任した。

具体的な例としては、本来。我々が厳しく敷いた筈のコンプライアンスの原則に従って、サプライヤーとより緊密に連携していくことが挙げられます。この過程で組織構造と実施プロセスを、より良く改善するだけでなく、企業文化自体に倫理的行動規範を永続的に浸透させていくことに焦点をあてていきます。

特にこうした行動規範を遵守することについては、管理職が最も厳しくあたらなければなりません。管理職が自らを律し、従業員の模範とならなければなりません。

それは役職のレベルに関わらず、常に私たちは、信頼でき、 正直で、誠実な人間でなければなりません。つまりフォルクスワーゲンという組織は常に真摯で正しい行動を示し、それを有言実行していかなければならないのです。また私たちが、事業の様々な場面に於いて、常に何をしているのかを、いつでも、世界のどこにいても、包み隠すこと無く説明できるようにしなければなりません。

そのためにも「建設的な異議を唱える文化“culture ofconstructive dissent”」は大変重要です。例えば私にとって、優れたコーポレートガバナンスというものは、責任を取ること、違法行為を罰することに加え、透明性を保ったコミュニケーションを取り続けることを意味します。

こうした事柄に対する一例について、米国の独立した監査人であるラリー D. トンプソン(Larry D. Thompson)が、我々フォルクスワーゲングループに対して、『コンプライアンス及びインテグリティ担当には、車両開発、製造、販売などと同等の事業上の経営権と重要性を与えるべき』だと要求しており、私は、この決定に同意します。

VWディース新CEO、ハンス・ディーター・ペッチュ監査役会会長と共に
VWディース新CEO、ハンス・ディーター・ペッチュ監査役会会長と共に

これを踏まえ、今後フォルクスワーゲングループは、経営上の意思決定やその実行について、より迅速に、体系的かつ効率的に行動しなければなりませんが、それを言い換えれば、私たちはフォルクスワーゲングループを「動きが遅い巨大タンカー」から、「パワフルなスピードボートのように船団」に変えていかなければならないということです。

そこで私は、今後数か月間に亘ってそのための基盤を構築し、具体化させるべく、幾つかの基本的な経営要素を備えた新たな経営モデルの姿を目指していきます。

その新しい経営モデルの第1の基本要素は、顧客セグメントまたは製品の価格帯を踏まえて、当社のブランドを再編成することにあります。これにより、個々のブランドライン上での責任の所在をより明確化し、迅速で互いの相乗効果を備えた新たな組織になることを目指していく所存です。

第2の基本要素は、グループ内の調整役としての任務を以前よりも精緻に分担することです。これにより、肯定的な意味で相互責任と相互依存の関係が高まり、その結果として協調性が促進されると同時に、意思決定とその実施に対する拘束力が強化されます。

この際、見直した経営構造上で最も重要なのは「subsidiarity(より小さい単位でものごとを進め、 できないことのみ大きな組織が補完する考え方)」の原則にあります。つまり今後は、現場に最も近く、可能な限り低い責任レベルに於いても素早い意思決定が行われるようになるということです。

我々フォルクスワーゲングループは今後、そうしたリーンなグループとなって力強くブランドを牽引する組織になっていくのです。そんな新たなリーダーシップの仕組みは、グループ内の業務が、より権限移譲されたものになることを意味しています。

これによって今後、グループの舵取りをする責任が、より分担されていくでしょう。そして個々グループと、その中核となるフォルクスワーゲンブランド上で、より新しくフレキシブルな経営の手法が生み出されるでしょう。

また2018年度の数字面の見通しですが、概ね明るい見通しをここに改めて表明いたします。それは年初の車両販売台数及び売上高が過去最高を記録したことに加え、第1四半期の業績も非常に良好で、今後に向けて期待が持てる状況になっているからです。

例えば今年の販売台数は、新記録となった昨年の数値をある程度上回ると予想しています。売上高も最大5%増加すると見込んでいます。総じてフォルクスワーゲングループは、営業利益率が6.5~7.5%の間になると予測しています。

また今後、ブランドの垣根を越えたニューモデル攻勢を継続していくことにより、この好調さを維持することができるものと考えています。具体的な数字では今期以降、約80の革新的なモデルを発売する予定です。

但し懸念事項がひとつあり、新しいWLTP試験手順への移行は、 自動車業界全体にとって大きなチャレンジになるでしょう。

我々フォルクスワーゲングループは、2018年9月1日から施行される有害物質/CO2排出量/燃料消費量を測定するための新しい試験手順であるこのWLTPに対応するために、可能な限り早い段階からこれらに対する対策を精力的に進めてきました。

ディースCEOは今壇上に於いて、2輪のドゥカティや変速機のレンク、大型エンジン部門のMANディーゼル・アンド・ターボなどの非中核事業について、分離・独立の可能性にも言及している。
ディースCEOは今壇上に於いて、2輪のドゥカティや変速機のレンク、大型エンジン部門のMANディーゼル・アンド・ターボなどの非中核事業について、分離・独立の可能性にも言及している。

しかし一方で幅広いモデル ラインナップを揃える我々フォルクスワーゲングループにとって、WLTPへの移行には多大な努力が必要です。状況により、WLTPへの移行に当たって、私たちの販売プログラムに一時的な支障が生じる可能性もあるかも知れません。

けれどもそのような状況を考慮したとしても、この2018年はフォルクスワーゲングループにとって再び好調な年になると見込んでいます。

なぜならフォルクスワーゲンは、今の事業を現状の経営上に於いて軌道に乗せていくだけでなく、未来に向けて事業の効率的な再編にも精力的に取り組んでいるからです。私たちは、より慎重かつ大胆に企業再編に取り組んでいます。

フォルクスワーゲングループで実現を目指している私の目標は、当社を収益性、革新性、持続性といった多角的な見地で、いずれに於いても世界の自動車業界をリードする存在に変えていくことにあるのです。」