マイルドハイブリッド テクノロジーを採用した3.0 TFSI V6エンジン
アウディAG(本社:ドイツ・バイエルン州インゴルシュタット、取締役会長:ルパート・シュタートラー、以下アウディ)は、2017年ジュネーブ国際モーターショーで、将来のQ8モデルシリーズの可能性を示した1台のコンセプトカー「Audi Q8 sport concept」を発表した。
https://www.youtube.com/watch?v=A1oQJo1AZ5o
このAudi Q8 sport conceptは、アウディによると、同開発者とデザイナーが考える、高効率な未来のSUV像を具現化したものだと云う。
そんなAudi Q8 sport conceptは、フロントとリヤに施されたエアロダイナミクスのための処理が目を引く。その他、効率を高めるための駆動方式や投入技術自体は、今となっては個々に於いて、もはやいずれも珍しいものではない。
それでも世界で初めてマイルドハイブリッドシステムと、電動式コンプレッサーを備えた6気筒3.0 TFSIエンジンを搭載する等、今の時代を象徴する機能が搭載されている。
その動力性能は、350kW(476hp)のパワーと、700Nmのトルク値を持ち、0-100kmを4.7秒で通過。
クローズの自動車試験場など、特定の条件を備えた環境であれば、そのまま275km/hのトップスピードまで息つくことなく加速し続ける。
その一方で、途中のエネルギー補給を行う事無く1,200kmを超える航続距離も実現しており、ロングドライブにも適したSUVに仕上がっている。
併せて先の通りで、マイルドハイブリッドシステムを搭載しているため、20kWのエネルギー回生能力も備えており、こうした補助動力のシステムを持たない通常の6気筒TFSIエンジン搭載モデルと比べると、 100km走行あたり1ℓ消費もそれに応じて少なくなっている。これをCO2排出量に換算すると25g/kmの削減に値するレベルとなった。
この車両に関わる技術的恩恵について、AUDI AG取締役会・会長のルパート シュタートラー氏は、「Audi Q8 sport conceptは、当社の量産モデルに賭けた高効率と、サステナビリティの最適化に向けた取り組みとして、大きなステップを印したと云えます。
マイルドハイブリッドテクノロジーと、TFSIエンジンの組み合わせにより、エレクトロ・モビリティと内燃エンジンの統合化に向けた新たなベンチマークを確立しています。
この組み合わせは将来、多くのアウディ車に広く使われることになるでしょう」と述べた。
さてここで一旦、このクルマの動力源を説明すると、電動コンプレッサーを採用した331kW(450hp)の6気筒3.0 TFSIエンジンと、回生効率を高めたマイルドハイブリッドシステムを初めて組み合せたものだ。
より具体的には、クランクシャフトとトランスミッションの間に配置されたスタータージェネレーターが、エネルギー回生の役割を担い、必要に応じて逆方向に作用して、補助の駆動用モーターとして働く。
一方電力の確保という面では、48ボルトのエレクトロニクスシステムを搭載したことにより、常に十分なパワーが確保される仕組みとなっている。
こうしたシステムを介して、内燃エンジンと電気モーターが同時に働く、いわば「ブースト運転」の間は、電気モーターを介して20kWのパワーと170Nmのトルクが共に加算され、エンジンパワーと併せて合計350kWのシステム出力と、700Nmのシステムトルクが得られることになる。
併せて、リヤのラゲージコンパートメント下には、エネルギー容量0.9kWhのリチウムイオンバッテリーが搭載されており、ストップ&ゴーが続くような渋滞時には、内燃エンジンを停止させたままでも走行することができる。
また、これによって低速での方向転換や、駐車の時も電気モーターだけでの運転が可能になった。
加えて制動時には、20kWの強力なスタータージェネレーターによるエネルギー回生により、バッテリーへ素早く再充電される仕組みのため、仮にそのように頻繁に電動走行させても動力系に支障が生じることはないと云う。
一方、排気駆動で2つのターボチャージャーから過給を受ける3.0ℓ6気筒エンジンへも、エンジン回転が充分ではなく、その排気系ターボチャージャーからの流量が得られずに素早くパワーが生まれにくい際、電動式コンプレッサーからエアが供給されることで、瞬発力が低下する場面を防ぐ。
この電動式コンプレッサーを装着したことで、3.0 TFSIは低速時に於いてもタイムラグのないダイレクトで力強いレスポンスを示すようになった。
しかしこれは従来に於いても、アウディブランドとしてディーゼルエンジンと電気モーターの組み合わせでのみ可能としていた訳で、今回アウディは、過去の生産型のAudi SQ7で成功を収めた手法を、今回初めてガソリンエンジン搭載車にも適用したことになった。
なおその電動コンプレッサーは、インタークーラー用のバイパス回路の下流、つまりエンジンのすぐ近くに設置されている。
タービンホイールの代わりに小さな電気モーターを内蔵して、わずか250ミリセカンドのうちに、コンプレッサーホイールを70,000rpmまで加速させることができる。
この電動コンプレッサーのサポートのおかげで、3.0 TFSIは低回転域からでも、ドライバーがアクセルペダルを踏み込んだ瞬間に強力なパワーを発揮することができる。つまり、この特性により発進加速において、ライバルを数メートルリードすることができようになったのである。
また、反対にゆったりとクルージングするような場合でも、電動式コンプレッサーのサポートにより、シフトダウンの頻度が減り、低いエンジン回転数で快適に走り続けることが可能となった。
他方、スポーティな走りを好むドライバーは、コーナーを抜けた瞬間から絶大なパワーが得られることに手応えを感じるだろう。
結果、V6 TFSIと電気モーターを採用したAudi Q8 sport conceptのドライブシステムは、8気筒エンジンに匹敵するパフォーマンスと4気筒エンジンの経済的な燃費効率を同時に実現する。
このエンジンは、マイルドハイブリッドシステムを持たない同様のエンジンと比べて、20kWのパワーが追加されながら100km走行あたりの燃料消費を1ℓも削減。85ℓの燃料タンクを備えたAudi Q8 sport conceptの航続距離は1,200kmを超えるまでになった。
このパワーユニットの頼もしさと同じく、quattroフルタイム4輪駆動システムも駆動力を巧みに路面に伝える働きをする。
足まわりは、シャシーのトレッドを拡げる一方で、Audiの上級クラスのモデルから、幾つかのメカニズムを移植した。
なかでもダンパーコントロール機能付きのエアサスペンションであるアダプティブエアサスペンションは、クルージング時のソフトな乗り心地から固くタイトなハンドリングまで、幅広い走行環境に対応する。
さらに最低地上高も90mmの幅を持って5段階に調整できるようになっており、走行条件に応じた理想的な高さの選択が可能だ。加えてフロントとリヤのサスペンションには軽量設計の5リンクシステムが採用された。
この足まわりに組み込まれたホイールサイズは11J×23で、それに305/35のタイヤと20インチ径のセラミックディスクを採用したブレーキシステを組み合わせている。
5.02メートルの全長を持つAudi Q8 sport conceptは、3メートルものホイールベースのおかげで、乗員とラゲージのために広いスペースが提供される。
スタイリングそのものはクーペのような傾斜したルーフラインを採用しながら、リヤシートの乗員にも十分なヘッドルーム及びショルダールームが確保されている。
コクピットには、大型タッチスクリーンを用いた新しい操作方式が採用され、さらに拡張したアウディバーチャルコクピットやコンタクトアナログ式のヘッドアップディスプレイなどが搭載された。
ヘッドアップディスプレイには、現実とバーチャルな世界を融合した、インテリジェントなアグメンティッドリアリティ(拡張現実)テクノロジーが活用されている。
車幅は2.05メートルで、フロントに細いウェッジシェイプのヘッドライトが埋め込まれた。
サイドシルエットではドアにウインドーフレームを持たず、ルーフラインの低い印象をさらに強調している。ボディの全高は1.70メートルある。
サイドウインドーの下端、ショルダー、ダイナミックライン及びシルのラインなど、ボディサイドにあるすべてのラインが後方に行くに従って、ダイナミックに高さが増していくデザインとなっている。
フェンダー、ドア、サイドパネルの面にはプレスカーブラインが施され、ドアのロワセクションには深いフィレットが形成されている。
サイドミラーにはカーボンファイバーを採用。ドアはタッチ機構により開く仕組みで、BもしくはCピラーにあるAudiリングに触れると決まった角度まで自動的に開く。
リアセクションに移るとフラットなリヤウインドーの上には、長いルーフエッジスポイラーが設置され、パワー開閉機構を備えたラゲージコンパートメントハッチの上に特徴的な輪郭を形成している。
Audi Q8 sport conceptのインテリアは4人の乗員を乗せた上で、大型スーツケースが積載可能な程余裕がある。ラゲージコンパートメント容量は630ℓ。センタートンネルの上には、電気的に作動する8速ティプトロニックを操作するためのセレクターレバーを備えたコンソールが設置されている。
そうした室内に於けるラップアラウンドのデザインモチーフは、ドアの部分から始まる。この水平方向の大きなアーチはフロントウィンドウ下端に沿って、ドライバーと助手席シートを取り囲む形だ。スポーツシートとリヤの2つの独立式シートは、明確に張り出したサイドボルスターからヘッドレストまで複数の独立した部分から構成されているように見える。
なおバックレストはウインドーショルダーの高さで、アルミ製トリムパーツにより上下に分離されている。
インストルメントパネルは、上部がインテリアの方向に向けて傾斜がつけられ、中央の操作/ディスプレイの面は、いわゆる「ブラックパネル」(アルミ製のフレームに囲まれた黒い帯状の面)と完全に一体化しており、スイッチオフしたときには、モニターは見えなくなってパネルの中に溶け込み、インテリア全体のデザインと融合するようになる。
前席のエリアでは、このブラックパネルにquattroのロゴバッジが組み込まれている。矢印をかたどったドアのインレイのデザインも印象的で、インレイにビルトインされたアルミ製の装飾バーがドアオープナーの役割を果たしている。夜間には、LEDライトガイドが点灯して、インテリアを白い光で照らす。
シートはファインナッパレザーとヌバックレザーのコンビネーションで、いずれも色はパステルシルバー。シート張地はバックレストを上下に分割するトリムパーツの部分で反転していて、そこを境に内側の部分が外側になる。ヘッドレストカバーには、レザーと同じ色のストラクチャード テクスタイル(ハイテク布地の一種)が用いられた。
情報の提供と操作の指示は、主としてタッチディスプレイを介して行い、アウディバーチャルコクピットとコンタクト-アナログ式のヘッドアップディスプレイにより機能が補完される。
また、すべてのディスプレイにもっとも重要な内容にシステマティックに集中するようにした新しい「デジタルデザイン」が採用された。
コンタクト-アナログ式のヘッドアップディスプレイは、重要な情報をドライバーの直接的な視界のなかにあるフロントウィンドウ上に投影する。
このアウディバーチャルコクピットは、画面が1,920×720ピクセルになり精度が向上。ステアリングホイール上に配置されたボタン操作により、ドライバーは「パフォーマンス」モードに切り替えることもでき、同モードに切り替えると、スピードメーターとパワーメーターの針が3Dディスプレイのなかに浮かび上がってくる趣向だ。
Audi Q8 sport conceptでは、それ以外のモニターはすべてタッチディスプレイになった。この方式の大きな利点はダイレクトで素早く、誰にもわかりやすい操作が可能になることにある。
ドライバーは見たその場所でそれぞれの機能を選択することができ、タッチスクリーンのおかげで、ボタンやスイッチやレバーの数を減らすことができた。結果として、かつてないクリーンで整然としたインテリアが実現している。