独フォルクスワーゲン AG(本社:ドイツ・ニーダーザクセン州ヴォルフスブルク、グループCEO:マティアス・ミューラー、以降VW)は、これまで考えられてきた自動車の定義を根底から覆すパーソナルモビリティの姿として、近未来世界の主役となるべく生まれたコンセプトカー「Sedric(セドリック)」を初披露した。
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VWは今回、現代人が未だ見た事も無い未知の世界を初披露するにあたり、「当社は、未来の道路交通システムの形を具体的に提示した世界初の自動車メーカーになった」と自らで述べている。
そんな未知の乗りものであるVWグループ製の『Sedric(Self-driving carの略称)』は、「特定の区間内を効率良く移動したい」と、人間なら誰しも望む切なるニーズを満たしつつ、車両に搭載されたボタン操作のみで、安全かつ簡単に『完全な自動運転車』となるべき、真のパーソナルモビリティの未来形を示したものだと云う。
思えば、VWはこれまでも、永い時代の変遷のなかで常にパーソナルモビリティの「民主化」を実現してきた。そして今回のSedricは、そうした取り組みをさらに1段積み上げた、次なる移動体の世界を担うべき、あるべき自動車の姿であると宣言した。
それは自動車という移動体が、街づくりを巻き込み、複雑な制御システムと連動することであり、それによって、これまでステレオタイプに信じられてきた「凝り固まった自動運転という旧い概念に、まったく新しい意味合いを付け加えることになるだろう」とVW陣営は語っている。
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実際、この新たな自動車を動かす手順は、ひとつのボタンをタッチするだけだ。そうすればSedricは、自動的に依頼者の前にやってきて、乗車を促し、快適かつ安全に目的地までエスコートしていく。
そんなSedricは、これまでの『車両を所有する』という概念で、個々のドライバーの所有欲を生み出し、ある意味、彼らの心を縛ってきた考え方から大きく転換し、「移動ツールを共有するという、まったく別の新たな概念を根付かせる」。
そしてこのことから、駐車スペースや道路の占有スペースなど、車両に関わる必要スペースを大幅に減らし、エネルギー消費を抑え、より安全で持続可能な社会の実現を目指すものとなる。
またこの概念は、『大人』『子供』『年配』という年齢のステージで人々を切り分けてきたクルマとの関係性をも覆し、『身体の不自由な人たち』『クルマそのものあるいは、クルマの運転免許を持っていない都市生活者』『初めての訪問先に於いて、即座にA地点からB地点へ移動したいと考える旅行者』など、すべての人々のニーズに応えた、新たなモビリティ社会の姿を提供することになるだろうとも述べていた。
ちなみにそんなSedricは、VW史上初の『レベル5の完全自動運転』を実現した文字通り『ドライバー不要』のクルマでもある。また、同時に、今後新たな形態のパーソナル・モビリティを生み出す「揺り籠」となるべきクルマでもある。
今後はまもなく、グループ傘下の各ブランドからSedricの『子供』または『孫』となるクルマが登場する。
そしてそれらのクルマたちは、各ブランド独自のデザインで製作され、テーラーメイドされた顧客専用の装備を特徴とすることだろうとも語っている。
但し、そんな未来に於いても、自動車に関わる『設計』『開発』『製造』『マーケティング』は、自動車ビジネスに於ける重要な役割と意味を持つ。
そしてそこに至るプロセスは「Together – Strategy 2025」と彼らが呼ぶプロジェクト共によって始まったとされる。
この部分の戦略造りはVWという自動車メーカーが、新たなモビリティ社会に向けて単なるクルマメーカーから、世界的なリーディング・プロバイダーへと変貌を遂げるための道筋を切り拓くものであったのだと云う。
さて、そんなSedricは、独ポツダムの『FutureCenter Europe(フューチャー センター ヨーロッパ)』と、ウォルフスブルグの『VWグループ研究部門』が常に協力して考案、設計、開発、製造してきた結晶の産物である。
そんな「Sedric」に乗り込み、ブッシュボタンにタッチすれば、誰もが、いつでも、どこからでも移動することができる。そもそも走り始めたSedricは、到着時間を色のシグナルで表示すると同時に、視覚に障害を持つ人々のためにバイブレーションによるシグナルも提供する。
出張や旅行先でさえ、自宅に居る時と同じようにボタンを押すだけで社会の共有モビリティ ビークルとしてSedricは、自動運転によってユーザーの元へやってくる。
その一方で、VW ブランドの1モデルとしてSedricを個人的に購入することもできる。
VWは多くの人々が、将来的も個人的にクルマを所有したいと考えるものと認識しており、この新しいクルマも、個々のユーザーに合致した固有の搭載機能が実行されるようにしたいと考えているようだ。
そんなSedricは、自律的に子供たちを学校に送迎し、両親をオフィスまで連れて行き、自律で駐車スペースを探し、注文した品物を回収し、駅に到着した来客を出迎え、息子をスポーツから連れて帰ってくる。
しかも、これらはすべてボタン操作、ボイスコントロール、またはスマートフォンアプリを使用して、完全に自動的、確実かつ安全に行うことができる。
そうしたSedricの当初の開発目標は、徹底的に無駄を排し、できるだけシンプルに、しかも直感的に操作できるものにしていくというものだった。
その走りの工程はごく単純だ。ボタンを押すだけでSedricは、事前に指示した時間に正確に到着し、ユーザーを認識して両開きのドアを解放する。
ドアの開口部は広く高いため、荷物を持ったままでも簡単に乗り込むことができる。また広々とした室内には、乗員のバッグやスーツケースを置く十分なスペースが用意されている。
室内に乗り込むと乗員は、Sedricに話しかけることができる。乗員は目的地、そこへの行き方、走行時間、現在の交通状況、あるいは途中での休憩といった内容について、あたかも個人的なアシスタントに話すようにSedricに語りかけることができる。
一方、乗員は走行中の時間を自由に活用することも可能だ。Sedricのフロントウィンドウは、コミュニケーションとエンターテインメントセンターとして機能するオーグメンテッド リアリティ(拡張現実)による大型 OLED(有機 EL)ディスプレイとなっており、乗員はシートに深く腰掛けて、目を閉じてリラックスすることもできるのだ。
Sedricのスタイリングは、フレンドリーかつ人々の共感を呼ぶもので、一目見ただけで人々に安心感を与えるというものとした。また力強い流線形を描くサイドシェイプと安定感のあるルーフピラーにより、堅牢、安全で信頼できるクルマという印象を与えるこにも腐心した。
左右に開くドアは、ルーフ部分まで伸びており、大きなドア開口部により、乗客は快適かつ容易に乗り降りが可能だ。併せてSedricは、都市やその周辺部のみならず、郊外に於いても活き活きと活躍する。
またSedricは、現在のクルマとして伝統的なプロポーションに捕らわれることなく設計されているため、ボンネットやショルダーといった既存のエレメントを備えていない。
新しいエンジニアリング構造により、ひとつの大きな塊から削り出したようなボディとなったSedricは、フラットなバッテリーパックを前後のアクスル間に搭載し、コンパクトな電動モーターをホイールの高さに設置。
エアコンディショナーや「自動運転」用の電子知能などのシステムは、コンパクトな前後オーバーハングに配置された。
そんなSedricが、既存車と大きく異なる点は、ステアリングホイール、ペダル、コックピットなどが何も無く、まるで自宅のソファで寛いでいるような世界が創出されているところにある。
そうした意味でSedricの室内は、厳選された素材による快適なラウンジのようだと表現できる。また室内の2+2デザインにより、車両のフロア面積を最大限に活用することも可能になった。
2座のリヤシートは、快適なソファとして機能し、リヤウィンドーの前方に設置された空気清浄器は、竹炭を使用した大きなエアフィルターの効果を高めている。
なお大きなウィンドーからは、外の景色が良く見える。加えて大型で高解像度のOLEDスクリーンは、透明になっているため、スクリーンを通して車両前方を見ることもできる。