米国のフォード・モーター・カンパニー(Ford Motor Company、本社:米ミシガン州ディアボーン、会長:ウィリアム・クレイ・フォード, Jr、以下フォード)は米国時間1月26日、2016年12月期通期の決算を公表した。
それによると売上高は1519億米ドル(約17兆3998億円)で対前年比1.5%増。純利益は45億9600万米ドル(約5283億円)で対前年比38%の減。結果1株利益は1ドル15セントとなり、大幅な純利益減となった。
なおこれを第4四半期でみると、卸売販売台数の減少影響により売上高で前年同期比4%減の387億米ドル(約4兆4329億円)。米国単独では2%の減収となっている。
同営業利益は20%減の21億米ドル(約2405億円)。調整後の1株利益は0.30ドルとなり、当初の市場予想(0.31ドル)を下回った。
減益の主たる要因となったのは、新興国市場に於ける販売成績の下落にある。中でもドル高影響が色濃い国にアルゼンチン、ブラジル、南アフリカ、中国などを挙げている。
2017年通期の見通しについては、既に自動車販売市場の減速が始まっている北米に加え、英国の欧州連合(EU)離脱が事実上動き出した欧州地域でも売り上げが減少するとみている。
これにドル高懸念と原油要因が影響。決済数値の下落が予想されるとし、かねてよりの2017年の利益が2016年を下回るとの見通しを据え置いている。
加えて、先のトランプ政権圧力によるメキシコ撤退コストも重しになっていくとしている。実際、同社は同日16億米ドル(1833億円)を投じるとしていたメキシコの新工場建設計画取り止めに絡む費用として、約2億米ドル(約228億円)の特別損失を計上した。
ちなみに北米部門だけの調整後利益率では、8.5%と前年同期の8.2%から上昇した。同じく同切り口での第4四半期及び2016年通年利益についても、リコール関連費用の5億7000万米ドル(655億円)の影響を含みながらも北米部門が貢献している。
これは対メキシコペソに対して、ドル高の影響が出ていることも関連しており、メキシコでのインフレ上昇により、皮肉にもメキシコ生産による割安感が増してきている。
今後もドル高の維持が進めば、さらにメキシコ生産の優位性が増すという結果につながる。
トランプ大統領就任後、米国政府は「国境税」などの税制改正を掲げ、国内自動車メーカーに米国内の製造拠点拡大を要請しているが、メキシコ経済の2017年の先行きはトランプ大統領の「壁」の問題がなくても困難である。
このことから今後もドル高が続いていくことになれば、為替の影響により経営マターでは、海外生産のカードが益々有利になっていく。
つまり、このままドル高が続く場合、既に保有しているメキシコ生産拠点については、政府と折り合いをつけつつ、維持していく方が得策である可能性が浮き彫りになってきている。