真夏のスーパーフォーミュラ第4戦ツインリンクもてぎ・プレビュー:マシンセッティング編


パワーで勝るトヨタ、コーナリングで強みを持つホンダ。後半戦の主役を演じるのは…

スーパーフォーミュラは、いよいよ今回から搭載エンジンが最終戦までの新型ユニットに切り替わる。

昨シーズンは、この時期の新型エンジン投入を境に、前半戦で苦汁をなめていたホンダ勢が一気に巻き返しに転じ、シーズン後半の勢力構造が大きく変貌した。

Super Formula Round 4 Twin Ring Motegi Preview1

翻って今年、トヨタ、ホンダのエンジン性能差はほぼ均衡しているといっていい。但しピークパワー(最大出力)によるスピードでは、トヨタが若干優勢。一方、ドライバビリティ(操縦性能)の良さによるコーナリング性能では、ホンダに歩があるという状態である。

さて後半は、双方の新型エンジンの投入で、その微妙な均衡状態はどのような変化を見せるのだろうか?

今年3月から熟成を重ねてきた新型エンジン。その強みを活かすのはどちらの陣営か?

実は後半戦仕様のエンジンは、今季の開幕前には、すでに開発が進められていた。早くも今から半年近く前の3月、岡山に於けるテスト段階で、トヨタもホンダもエンジンの基本仕様をほぼ固めていたのだ。

Super Formula Round 4 Twin Ring Motegi Preview2

それがいよいよ、永い開発期間を経て、両社の新型エンジンが実戦へと望む。このため第4戦ツインリンクもてぎは、後半戦の展開を占うためには極めて重要な週末となるはずだ。

もてぎの高速オーバルとテクニカルなインフィールドコースで、私たちは新型エンジンのパフォーマンスを直に目撃することになるからだ。

なお、この第4戦は、燃料リストリクターによる燃料流量制限は、第2戦岡山と同じ1時間あたり換算で90kg(122.3リットル)の流量とされている。

第1戦鈴鹿、第3戦富士の95㎏よりも、ガソリンの流量がやや減るため、若干のパワーダウンは否めない。一方で、新型エンジンによって、それに勝るドライバビリティが発揮出来るのであれば、フォーミュラマシーンならでは俊敏で、鋭い走りが期待できるだろう。

連覇で逃げ切りたいトヨタ、ホームコースでの勝利をもぎ取りたいホンダ

さてそのエンジンのパフォーマンスだが、最高出力が活きるメインストレートも見物だが、一方で小さなコーナーが連続するセッションでは、ドライバーの意思通り・操作どおりに忠実にエンジンのパワーを加速・増減させるフレキシブルさが求められる。

Super Formula Round 4 Twin Ring Motegi Preview3

これまでの展開から考えると、先の通りでストレートはトヨタエンジン、コーナーではホンダエンジンにそれぞれすこしづつ分がある訳だが、双方共にエンジンの制御マッピングは改良できるため、当然、両メーカー共に、ツインリンクもてぎに向けのエンジンセッティングを施してくる。

実際、第2戦に先立つ5月12、13日には両エンジンメーカーのテストカーがツインリンクもてぎで走行し、それぞれのエンジンの開発を進めていた。

トヨタは連覇で逃げ切りたいところだろうし、ホンダは決勝での勝利をもぎ取りたいだろう。そして、この激しい戦いは近未来の自動車のためのより高効率で高性能なエンジン開発へとつながっている。

酷暑が続く北関東、もでき特有のコースレイアウトは冷却の厳しい要求に応えられるのか?

第4戦は8月終盤の戦いとはいえ、内陸の北関東のツインリンクもてぎは晴れると気温が一気に上昇する。

これはエンジンやブレーキの冷却にとっては、楽ではない条件だ。その上、ツインリンクもてぎのコースは、短いストレートを30Rや50Rのような半径の小さなタイトなコーナーで結んだようなところが多く、常に強いブレーキングと加速が繰り返される。

短いストレートではエンジン冷却のラジエーター、過給されて熱をもった吸気を冷やすインタークーラー、ブレーキのディスクとパッドとキャリパーに冷やすための風が当たる時間が短く、すぐにまたブレーキングになってしまう。

つまりツインリンクもてぎはシーズンで最も冷却に厳しいコースとなっているのである。

もてぎのコースを攻略するためには、廃熱と空力のバランスが鍵

ブレーキについては、昨年からツインリンクもてぎ戦用に、冷却性能を向上させたブレーキディスクと、大型のブレーキ冷却用ダクト(空気取り入れ口)が用意されている。

ブレーキディスクは、中に冷却用の空気が通る穴が開いているが、この穴の数を多くしたものがある。この大型ブレーキ冷却用ダクトは、開口部の面積が大きく、より多くの空気を取り込めるようになっている。

Super Formula Round 4 Twin Ring Motegi Preview4

だが、車体の空力性能に対しては悪影響もあるので、気温とブレーキの状態をみながら大型か通常型かを最終決定をすることになるだろう。

また通常、エンジンのラジエーターとインタークーラーの冷却は、左右のサイドポンツーンの後端と、サイドポンツーン上に立つチムニー(排熱用の煙突)で行っている。

だが、暑い時には、とくに右側のサイドポンツーンの排熱口をどう開けてくるかがポイントとなる。

右側のサイドポンツーンには、高温の排気ガスの熱で赤くなりながらエンジンの吸気を加圧するターボチャージャーと、その加圧された吸気の熱をとるインタークーラーがあり、これを冷やすことがエンジン性能にとって重要となるからだ。

予選と決勝で、短時間の走行なので空力優先、決勝では冷却優先

右側のサイドポンツーンには、上面に熱気を排出する大きな開口部が設けられている。

しかし、サイドポンツーン上面の気流に悪影響を出さないように、通常はこの開口部は閉じられているか、後部をほんの少し開ける程度。また、側面にも熱気を排出するルーバー(サメのエラのような形の空気排出口)を開けているところが多い。

車体の空力性能を考えれば、なるべく冷却のためのダクトや開口部を大きく開けずに、気流を乱さないようにしたい。

Super Formula Round 4 Twin Ring Motegi Preview5

反面、エンジン性能と信頼性を考えれば、冷却をしっかりとさせたい。この相反する要求にエンジニアはどう対処してくるのか?

予選では短時間の走行なので空力優先、決勝では冷却優先とするのか?予選と決勝でセッティングを自由に変更できるスーパーフォーミュラならではの面白さがここにも活かされてくる。

空力性能と、クルマ本来のシャシー性能の両方で高度なバランスが求められる厄介なコース

そもそもツインリンクもてぎのコースは、先述のように速度が低めのタイトコーナーが多い。ここをいかにうまく抜けて、フル加速に移れるか、そして、次のコーナーへより短い距離と時間でブレーキングを完了できるかが速く走るために重要となる。

これを実現するためには、ダウンフォースをしっかりつけておきたい。これで車体とタイヤをしっかり路面に貼りつかせ、ブレーキング、コーナリング、加速をより安定した状態で行えるようにしたいのだ。

しかし、冷却性能を優先すると車体周りの気流への影響から、ダウンフォースが減ったり、空気抵抗が増えたりする可能性もある。

Super Formula Round 4 Twin Ring Motegi Preview6
さらにテンポ良くコーナーを抜けた後も、鋭い加速が重要だ。この加速時に路面をとらえて前に進む瞬発力を獲得することをトラクションといい、このトラクションのかかりの良さが鋭い加速ができるかどうかを左右する。

トラクションの掛かりを良くするためには、空力によるダウンフォースでタイヤを路面に貼りつかさせることも大事だ。またさらにタイヤがきちんと路面をとらえるようにさせることも大切となる。

そのためにはサスペンションのセッティングもきわめて重要となる。サスペンションに加えて、前後の重量配分などクルマとしてのシャシーの基本機能も問われる。

ツインリンクもてぎは、走れば走るほど走行ラインのバリエーションが見つかる奥の深いコースと言われている。と同時に、マシンのセットアップについても、フォーミュラカーならではの空力性能と、クルマ本来のシャシー性能の両方で高度なバランスが求められる厄介なコースでもあるのだ。

複雑に絡みあう要素のなかから、ドライバーとエンジニアは最適なセッティングを見つけ出さなければならない

いずれにしてもダウンフォースが欲しい。これはツインリンクもてぎを走るスーパーフォーミングマシンには共通した課題だ。

しかし、ダウンフォースをつけると安定性が増して、コーナリングやブレーキング時のトラクションは良くなるが、空気抵抗が増えがちで、ストレートスピードはその分落ちてしまう。

接近戦と追い抜きが得意なSF14が昨年から投入されたことで、ツインリンクもてぎは、バトルポイントが多いエキサイティングなコースになった。

特にヘアピンコーナーから90度コーナーへの762メートルのダウンヒルストレートは、SF14のオーバーテイクシステムとが相まって決勝でオーバーテイク(追い抜き)ポイントとなる。

Super Formula Round 4 Twin Ring Motegi Preview7

そしてこの時は、ダウンヒルストレートでのスピードが重要となるのだ。ダウンフォースを重視して空気抵抗が増えてしまうと、たとえオーバーテイクシステムを利用してもオーバーテイクを達成できるスピードにならなくなってしまう。

逆に、ダウンヒルストレートでのスピードを重視しすぎてしまうと、ダウンフォース不足で30Rのヘアピンの立ち上がりのトラクションが悪くなってしまって、最高速に達するのが遅くなってしまう。

その上、90度コーナーでのブレーキングでもマシンが不安定になるのを抑えるため、早めにブレーキングを開始する必要が出るかもしれない。

こうなるとダウンヒルストレートでライバルにつけいる隙を与えてしまうことにもなりかねない。また、ストレートスピードを重視しすぎると、決勝ではタイヤの性能の低下が早まってしまう恐れもある。

ダウンフォース、トップスピード、タイヤの性能変化、ピットストップでのタイヤ交換本数と燃料補給量など、きわめて複雑に絡みあう要素のなかから、ドライバーとエンジニアは最適なところを見つけ出さなければならない。

だが、それを見つけるのに使えるのは土曜と日曜のフリー走行とスタート前の8分の走行のみ。限られた走行時間で、どう対処してくるのだろうか?第4戦は戦略的にもとても興味深いレースである。

 

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