F1ロシアGP決勝、バルテリ・ボッタス優勝にフェラーリが続く。アロンソ脱落・バンドールン初完走


FIAフォーミュラ・ワン世界選手権、第4戦ロシアGP(開催地:ロシア連邦・ソチ、オートドローム・サーキット<コース全長:5.872km・当初予定の決勝周回は53周>、開催期間:4月28~30日)の決勝レースが、現地時間4月30日(日曜日)の15時(日本時間21時)から実施された。

優勝は、予選でPPを獲得して首位スタートを得たフェラーリ陣営を交わし、1周目からトップに立ったバルテリ・ボッタス(メルセデス)が、そのまま、ほぼ独走状態で逃げ切って、ボッタス自身の5年間のF1キャリア上に於いて初の優勝を成し遂げた。

なお前日の予選で、ポールポジションを叩き出したのは、セバスチャン・ベッテルと、0.059秒差で2番手につけていたキミ・ライコネンのフェラーリ勢だ。

しかし翌日に行われた決勝では、予選時のフロントロースタートの優位点を生かし切れず、結果、今季のソチに於いてもメルセデス優位の定説に図らずも貢献してしまう結果となった。

但しコース上に於ける絶対スピードでは、ソチの決勝に至るまでの週末に掛けて、終始、フェラーリがメルセデスを上回るスピードを刻んでいた。

具体的には、メルセデス勢のボッタスが3番手、ルイス・ハミルトンが4番手に甘んじるという、メルセデスにとっては前季であれば屈辱の結果となっている。

この事実についてルイス・ハミルトンは、自身としては精いっぱい努力した結果だと語り、今季刷新となった新規レギュレーション下に於いて、メルセデス陣営のマシンバランスがまだ仕上がりに欠けていることが露呈した格好だ。

さて1周5.872kmのソチ・オートドロームを53周走って勝敗が決まる日曜日の決勝レースは、気温25度・湿度32%・路面温度41度と云う格好のドライコンディション下で各車グリッドに並ぶ。

なおこのポジションに至るまでの間に、ペナルティで脱落したのは、カルロス・サインツ(トロ・ロッソ)が、予選結果から3グリッドダウンの14番手スタートに。

マクラーレンホンダのストフェル・バンドールンは、5基目のエンジンコンポーネント交換で最後尾まで下げられた。ちなみに足まわりで大半のドライバー達は、ウルトラソフトを履いてスタート位置に着いている。

そして切られたフォーメーションラップ。今回の悲運は既にこのスタート前に発生した。フェルナンド・アロンソ(マクラーレン)がERSソフトウェアの不具合でピットまで戻ることができず、コース上に車両を止めてしまったのである。

これで全車、再度フォーメーションラップが行われた。このことにより予定周回数は1周減算され、全52周でソチF1レースのスタートが切られた。

まずは1周目。この際、ライコネン(フェラーリ)を出し抜いたボッタス(メルセデス)が、その勢いをそのままターン2でも発揮して、先行していたベッテル(フェラーリ)をオーバーテイク。ここで早くもトップポジションに躍り出る。

一方この時点で、集団の後方を走っていたジョリオン・パーマー(ルノー)と、ロマン・グロージャン(ハースF1チーム)が互いに接触・リタイアの憂き目に。

これによってコース上はペースカーが出ることになってフルコースコーションに。その後、3周目にレースは再開したが、そのなかでダニエル・リカルド(レッドブル)がリアブレーキトラブルでリタイアを喫する。

その間、トップを淡々と走り続けたボッタス(メルセデス)は、そのまま走行ベースを上げて、追いすがる2台のフェラーリ陣営を引き離しに掛かる。

しかしその後方を走っていたハミルトン(メルセデス)は、先行する3台の彼らを追い切れずに、単独4位のポジションを維持。それ以上ペースを上げ切れずに終わり、不完全燃焼の走りとなっていた。

レースも中盤に差し掛かった28周目。ボッタスは他車に先んじて装着タイヤをスーパーソフトに換装。

しかし後続グループは、これに続かず、3番手を走るライコネン(フェラーリ)と、4番手のハミルトンが30周目になってからタイヤチェンジを実行。2番手に付けていたベッテル(フェラーリ)は34周目にタイヤ交換を終えた。

このタイミングでトップのボッタスと2番手を走るベッテル(フェラーリ)は4.7秒差、その後方の3番手を走るライコネン(フェラーリ)は、さらに2.5秒差のまま以降、レースは膠着状態となる。

しかしようやく終盤残り2周の時点で、ベッテル(フェラーリ)がボッタス(メルセデス)の1秒後方にまで接近。

残り周回数に於いてベッテル(フェラーリ)は、果敢にボッタス(メルセデス)に迫るものの、F1キャリアを通して今回、初優勝の栄冠が掛かっているボッタス(メルセデス)は逃げ切り体制。

結局、ボッタス(メルセデス)は0.4秒程その差に対して詰め寄られたものの、周回遅れの処理タイミング(ウイリアムズのマッサをかわす)がボッタス(メルセデス)に味方をしたことで、終始首位のポジションを譲ることはなく無事ゴールラインを潜る。

結果、今レースに於いては予選でワンツー体制を敷き、フェラーリはライバル達に速さを見せつけたにもかかわらず、これまで勝利を得ていなかったボッタス(メルセデス)に完全に出し抜かれてしまいチャンピオン経験者のベッテル(フェラーリ)が2位、ライコネン(フェラーリ)がその後方の3位でフィニッシュした。

ハミルトン(メルセデス)は先行するフェラーリ勢を攻略するには至らず、我慢の走りで4位。5位フェルスタッペン(レッドブル)、6位セルジオ・ペレス(フォース・インディア)。

7位エステバン・オコン(フォース・インディア)、8位ヒュルケンベルグ(ルノー・スポールF1)、9位マッサ(ウイリアムズ)、10位サインツ(トロ・ロッソ)が続いた。

なおマクラーレン・ホンダのストフェル・バンドーンは14位完走となっている。

バルテリ・ボッタス
「気持ち的には、まだ初優勝を果たしたという実感に乏しい。勝利の栄冠を噛みしめるには、もう少し時間が必要だと思う。

そもそも普段の僕は、さほど感情的にならない方だけど、フィンランド国歌を聞いた時は、とても特別な気分になったよ。

初勝利なんて、なんだか夢のようだけど、今回勝ったことを喜ぶより、今後の沢山の勝利を積み上げていくための、第一歩になって欲しいと願っている。

レース中は、セバスチャンからのプレッシャーは気にしないようにした。むしろ周回遅れのマシンをパスすることに全勢力を注ぎ込んだ感じだ。

実際、レース中のアベレージスピードを失う事無く、彼らをパスしていくドライビングはとてもリスキーだったよ。

しかもレースも終盤になって、残り15周ほどの時点でタイヤをロックアップさせてしまた。このミスによりペースに乱れが出そうになったけれど、どうにか対処できたことは良かったと思っている。この勝利は、僕にとって間違いなく、今後さらにその先に進むための大きな自信になるだろう。」

セバスチャン・ベッテル
「オープニング時点の滑り出しはそれほど悪い感触ではなかった。ただスタート時にシグナルが消えるまでの間で少しタイミングを逸してしまったようだ。

今日はそれに乗じて、ボッタスがスタート時点で大きなアドバンテージを築いてしまったから、その後のプッシュもあまり効果的に効かなかったようだ。

とにかく今日のレースで、バルテリは素晴らしいレースをしたと思う。実際、僕はレース終盤に向けて、彼との車間を詰めた後、残り周回を全力で攻めたてた。

作戦としては、バックストレートあたりでプレッシャーを掛けたら、ミスを誘発するんじゃないかと思ったけど、実際にはそうはならなかった。

ただ、僕らのチームもバルセロナでいい感触を得ていたから、シリーズ緒戦に於いて良いスタートが切れたと思う。

この長いチャンピオンシップに立ち向かうにあたり勝利を目指し、ベストを尽くしてきたけれど、僕たちが学び、改善できることはまだまだ沢山ある。

今日のレースでも、もう少しうまくやれた要素はあるし、そもそも僕らには強いクルマがあり、強いチームがある。ポジティブな面は多いし、まだまだ伸びていく余地を見せられるだろう」

キミ・ライコネン
「バルテリのレース初勝利は素直に嬉しいことだ。彼にはきっと明るい未来が待っているだろう。一方、僕自身のレースについては、最初の3戦に比べ、今レースはポジティブな要素に包まれていたと思う。

クルマには充分満足できていたし、ライバルに対してさらにプッシュが必要な時には、より速いタイムを引き出すこともできていた。

だけど、今日のレースはスタートで決まったような形になって、僕には少し分が悪かった。スタートでかなり遅れてしまったからね。

それでもマシンの状態は良かったから、どうにかポジションを取り戻して3位に留まることができた。

但し、レース後半でまだ課題があるように思う。僕自身としてはベストは尽くしたけれど、実際にできることは少ななってしまい、最後は自分のポジションを守ることに終始してしまった。

それだけに今回、ポディウムに上がれたこと自体はとても嬉しい。自身のドライビングで悔やまれるのは、スタートでポジションを落としてしまったことだ。

だけど僕らはまだかたづけなければならない仕事が残っている。マシンセッティングを含め、細かい作業がシーズンの終わりに大きな違いにつながるから」

なお以下はマクラーレン・ホンダ陣営の決勝終了後のコメントとなる。

フェルナンド・アロンソ
「今週末もストレスが溜まるレース内容になった。フォーメーションラップでパワーユニットが備えているべきパワーがなく、エンジニアからステアリングのセッティングを変えるよう指示された。

しかし、それでもパワーを取り戻せることはなく、しかもオープニングラップの終盤にエンジンがシャットダウン。これで僕のレースはスタートの前に終わってしまった。

今日のレースに参加できなかっただけでなく、今シーズン一度もレースをフィニッシュできていないというのはものすごくきつい。でもF1は僕の人生だ。近いうちに状況を改善できることを願っている」

ストフェル・バンドールン
「僕自身の努力でできたことは、14位というポジションを維持することだけが、日できる最善の結果だった。

スタート自体はまずまずだったけど、スタートグリッドポジションの関係で1コーナーのアクシデントを避けなくてはならなくなった。しかもターン2でコースを外れたとして、5秒のタイムペナルティを科された。

でも、そのアクシデントがなかったとしても今日のリザルトが変わったとは考えていない。

今回のレースでも、僕は自分にできる最大限のことをした。14位というのが今の僕らの実力だよ。

フェルナンドがスタートできなかったことからも分かるように、信頼性の面ではまだまだ仕事をしなければならない。2戦でマクラーレンが2台スタートできなかったんだからね。

その点は残念だったけど、少なくとも今日は最後までたどり着けた。チームにとっても僕にとっても学ぶことがすごく多かったよ。でも、ペース的にまだ速さが足りないのは明らかだ」

エリック・ブーリエ(レーシングディレクター)
「マクラーレン・ホンダは14位フィニッシュを目指してレースに挑んでいるわけではないし、このようなレベルのパフォーマンスが長く続くことのないように必死に取り組んでいる。

そのことは信じてほしい。とはいえ、レース週末に信頼性やパフォーマンスの問題を抱えることほど残念なことはない。このポジションから脱するために力を合わせて取り組む必要がある。

今日のレースでマシンのパフォーマンス自体に制限があったことを考えると、ストフェルは本当によくがんばってくれたと思う。

効率的なレースを戦い、タイヤのケアや燃料セーブなどチームから求められることはすべてうまく対応してくれた。

14位は褒められる成果ではないが、今日の彼のマシンが発揮できた最良の結果だろう。彼が完走し、いくらかのマイレージを稼げたことは喜ばしく思っている。

フェルナンドに関しては、彼のフラストレーションは大いに理解できるし、2戦続けてたった1台しかグランプリをスタートできないなど、到底、受け入れられない。早急に対応せねばならない。フェルナンドは失望しているが、次回はきっと改善されるだろう」

長谷川祐介(株式会社本田技術研究所 主席研究員 F1プロジェクト総責任者)
「ロシアでは信じられないほど難しく、また非常に失望感の強い週末になってしまった。

それでも、グリッド最後尾からのスタートとなり、非常に難しい条件の中でストフェルが完走したことはポジティブに思っている。

今日の彼の走りには感銘を受けた。難しい状況ながらもタイヤと燃料のマネジメントをしっかりやりつつ、一貫したペースを維持した。

ストフェルはすべてのレース週末に多くの問題が起きたがゆえに楽なシーズンスタートではなかったので、14位はもちろんわれわれが望んでいる場所ではないものの、ようやくチェッカーフラッグを受けられたことは素直に喜びたい。

一方、フェルナンドはフォーメーションラップ中にERS(エネルギー回生システム)の故障でデプロイメントからのパワーを失い、走行中にシステムを再起動して何とか直そうとしたが、リカバーできず、結果として、コース上にマシンを止めなければならなくなった。

ダブル完走を果たせず、とてもがっかりしているが、ここから前に進み、プッシュし続けるしかない。この先の数レースを通してパワーユニットにアップデートを施していく予定なので、信頼性を改善し、より競争力をはっきできるように開発を継続していく」

ロシアGP決勝結果
位_No・ドライバー/チーム_______周回_タイム差
1_77・Vボッタス/メルセデス_____52_1:28’08.743
2_5・Sベッテル/フェラーリ_____52_+0.617
3_7・Kライコネン/フェラーリ____52_+11.000
4_44・Lハミルトン/メルセデス____52_+36.320
5_33・Mフェルスタッペン/レッドブル_52_+1’00.416
6_11・Sペレス/フォース・インディア_52_+1’26.788
7_45・Eオコン/フォース・インディア_52_+1’35.004
8_27・Nヒュルケンベルグ/ルノー___52_+1’36.188
9_19・Fマッサ/ウィリアムズ_____51_+1周
10_55・Cサインツ/トロ・ロッソ____51_+1周
11_18・Lストロール/ウィリアムズ___51_+0周
12_26・Dクビアト/トロ・ロッソ____51_+1周
13_20・Kマグヌッセン/ハースF1____51_+1周
14_47・Sバンドールン/マクラーレン__51_+1周
15_9・Mエリクソン/ザウバー_____51_+1周
16_94・Pウェーレイン/ザウバー____50_+0周