アルピーヌ・ジャポンにより、先の2017年に仏・ルノーがジュネーブショーの会場で初披露して、自動車ファンの羨望を集めた新型(ALPINE)アルピーヌA110が、この日本でも6月22日に発表され、販売受付も開始された。
久々の復活となったこのアルピーヌ・ブランドだが、その歴史は、1955年にフランスのレーシングドライバー、ジャン・レデレ氏の手によって創設されたのが始まり。
当初は、ルノーとの資本関係を持っていた訳では無く、独自にルノー製・小型乗用車「4CV」のシャシーを流用したレースカーを製作しては競技に出走していた言わばレーシング・コンストラクター的な立ち位置にいて、1956年には、鋼管フレームにFRPを被せた専用車両を「A106」の名前を与えて世に送り出していた。
その後、独自のリファインを繰り返していたアルピーヌは、1959年に「A108」をリリース。さらに1963年にリアエンジン車のセダン8(ユイット)を下敷きとした「A110」を生み出す。
この「A110」は登場するやいなや並み居るラリーシーンで、破竹の快進撃を開始。ルマン24時間レースへの参戦も果たした。さらに1962年の「M63」を皮切りに、毎年のように矢継ぎ早に「M64」、「M65」、「A210」を送り出した1969年。フランス北西部の大西洋に面したノルマンディー地域圏の町「ディエップ」に開発・製造拠点を移転させた。
さらに4年後の1973年には、ルノーがこのアルピーヌを子会社化するべく動く。以来、アルピーヌブランドは、ルノーという大企業傘下でルノーお墨付きのスペシャル・オペレーション・モデルの輩出を手掛ける特別な自動車生産会社になった。
ただ残念なことに一旦、「A610」を以て1995年から40年間続いたアルピーヌ・ブランドの自前車両自体が途絶えてしまった。しかし「ソシエテ・デ・オートモビル・アルピーヌ・ルノー」として、企業自体の存続は続いていたのである。
そしてカルロス・ゴーン氏がルノー取締役社長、最高経営責任者に就任した後の2007年10月9日に、遂にルノーによりアルピーヌブランド復活が宣言され、それが今回の新型「A110」に結実する。
これこそが今回、発表され、販売の受付が開始された新型アルピーヌ「A110」である。そのスタイリングは、初代アルピーヌ「A110」のテイストを踏襲しつつ、最新テクノロジーを取り入れたモダンなアルミ製のボディーをまとっている。
そのパッケージは、今や数多の装備搭載により、車体の重さだけが際立つライバルのスポーツカーとは一線を画す車重1110kgの2人乗りのライトウェイトスポーツとなっている。
車体は、贅肉をそぎ落とした「懐かしさ」さえ感じさせる20世紀のスポーツカー然とした流麗なスタイリングなのだが、懐古趣味満点なのは単なる訴求イメージだけで、車両スペックを見ると、今日に相応しい性能で裏打ちされている。
実際、時速250km/hの速度域で、完全なフラットなアンダーボディによるダウンフォースが190kg。後部バンパーの下に設けられた機能的なリアディフューザーによる同じくダウンフォースが85kg。空気抵抗係数値が0.32である。
この意外感は駆動方式にも現れており、当時のA110を認識しているエンスージアストが想定するRR(リアエンジン・リアドライブ)からMR(ミッドシップ)に切り替わり、動力源となるパワーユニットは、ルノー・日産アライアンスが共同開発した1798ccの直列直噴4気筒ターボエンジンを搭載。
これにエアインテーク、ターボチャージャー、エキゾーストシステム、エンジン制御系にアルピーヌ専用仕様のセッティングを加え、最大出力は252ps(185kW)/6000rpm、最大トルクは32.6kgm(320Nm)/2000rpm。
トランスミッションには、素早いシフトチェンジを可能にするゲトラグ製の電子制御湿式7速AT(DCT)が組み込まれている。もちろんマニュアルモードが搭載されているから、ステアリングポストに装備されたパドルで変速が可能だ。
気になる加速性能は0-100km/h4.5秒となっている。車格は、4205×1800×1250mmとなっており、これらの数値によりパワーウエイトレシオは4.4kg/psを可能とした。最高速度はリミッターが作動する時速250km/hまで続く。
サスペンションは、前後ダブルウイッシュボーンタイプのアルミ製構造で、ダンパーにはバンプストップラバーを配したハイドロリックコンプレッションストップが採用された。
ブレーキシステムには、通常のリアキャリパーより2.5kg軽量のオールアルミ・モノブロック製。これにパーキングブレーキアクチュエーターが内蔵されたリアブレーキキャリパーが世界初採用となっている。
装着タイヤはミシュラン製パイロットスポーツ4で、サイズはフロントが205/40R18、リヤ235/40R18。ホイールはドイツブランドの軽量なFUCHS(フックス)製鍛造ホイールで、ばね下重量の軽減に寄与。前後重量配分はフロント44%・リヤ56%である。
室内空間は、天然皮革とカーボン素材にアルミを組み合わせたもの。シートは1脚あたり13.1kgの軽量、イタリアのサベルト製が奢られた。
乗員以外のユーティリティ空間は、純スポーツカーとしては望外の車体前後にラゲッジルームが備わっており、その容量はフロントが100リッター、リアが96リッターとなっている。
同社のトマ・ビルコCOOによると、日本への第一弾は全世界販売1955台のうちの50台となるが、秋以降に量産モデルがリリースされる予定としている。
ちなみに今回発表されたのは、初期ロットの発売記念モデルとなる限定車「プルミエール・エディション」で車両価格は790万円。ボディーカラーは「ブルーアルピーヌメタリック」のみの設定となる。
率直に云って価格に見合う革新的な搭載装備がある訳ではなく、むしろシンプルさが際立つ車両だが、60年余りの歴史に裏打ちされたブランド価値を、現代の消費者に受け入れられる価格に収めたということなのだろう。
ただ軽量設計や、比較的判り易い企画コンセプトは、機能拡大・重厚化の一途を辿る現在のクルマ造りに対して、どの程度の販売量が確保できるか如何によって一服の清涼剤になる可能性を秘めている。
日本の初回の販売台数は先の通りで、わずか50台とまさしく稀少な生産数となり、購入予約は7月10日まで。おそらく購入申込みが販売台数を大きく上回るのは必須。
車両入手は7月15日のフランス大使館での抽選を潜り抜けた限られたドライバーだけのものとなるだろう。納車は、順当に進めば9月以降に開始される。なお現段階に於いて日本国内での販売は14拠点設けられたアルピーヌ・ジャポン正規販売店のみとなる。
なおディーラーネットワークについては以下の通りとなっている。(坂上 賢治)
- アルピーヌさいたま桜 開設準備室
332-0006 ,
埼玉県川口市末広1-11-2
(セントラルグループ本社ビル1F仮設) - アルピーヌ所沢
359-1151 ,
埼玉県所沢市若狭4-2451-1
(ルノー所沢内) - アルピーヌ柏
270-0143 ,
千葉県流山市向小金1-837-1
(ルノー柏内) - アルピーヌ東京有明
135-0062 ,
東京都江東区東雲2-14-8
(ルノー東京有明内) - アルピーヌ横浜青葉
225-0024 ,
神奈川県横浜市青葉区市ヶ尾町631-1
(ルノー横浜青葉内) - アルピーヌ沼津 開設準備室
410-0022 ,
静岡県沼津市大岡1158
(ルノー沼津内) - アルピーヌ名古屋緑 開設準備室
480-1111 ,
愛知県長久手市山越111
(ルノー名古屋東内仮設) - アルピーヌ西宮
662-0977 ,
兵庫県西宮市神楽町12-10
(ルノー西宮内) - アルピーヌ岡山
700-0035 ,
岡山県岡山市北区高柳西町15-7
(ルノー岡山内) - アルピーヌ山口
753-0251 ,
山口県山口市大内千坊6-2-1
(ルノー山口内) - アルピーヌ徳島
779-3232 ,
徳島県名西郡石井町城ノ内56-1
(ルノーネクストワン徳島内) - アルピーヌ高松
761-8057 ,
香川県高松市田村町950-1
(ルノー高松内) - アルピーヌ福岡
812-0892 ,
福岡県福岡市博多区東那珂2-8-23
(ルノー福岡中央内) - アルピーヌ鹿児島
891-0115 ,
鹿児島県鹿児島市東開町4-11
(ルノー鹿児島内)
アルピーヌ・ジャポン オフィシャルウェブサイトhttps://alpinecars.com/ja/