トヨタ自動車、カーシェア事業用アプリ開発。米国ハワイ州で実証開始


まずは当地で、カーシェア事業の本格始動を目指すトヨタ販売店の「Servco社」が実施するカーシェア事業をサポート

トヨタ自動車株式会社(本社:愛知県豊田市、代表取締役社長:豊田 章男、以下トヨタ)は、トヨタ販売店向けのカーシェア事業用アプリを開発し、米国ハワイ州のトヨタ販売店、Servco社と実証事業を開始した。

利用者用画面イメージ

実はServco社に於いては、既に本年7月から試験的な運用を開始してきており、これをベースに本年後半からは、同州ホノルルで一般顧客向けの本格的なカーシェア事業を稼動させる予定だ。

Servco社Webサイト

またこのカーシェア事業用アプリについては、スマートフォンによるドアの開閉システムである「スマートキーボックス(以下、SKB)」を用いたドアロックの開閉などの機能に加え、事業者向けに、車両管理や利用者の認証、決済サービスといった機能を実装した。

ちなみにこのスマートキーボックスこと「SKB」は、トヨタが想定・展開を計画しているカーシェア事業で、セキュアにドアロックの開閉や、エンジン始動を実現させるために独自開発した仕組みである。

利用者用画面イメージ

そもそも今日、一般のカーユーザーにも馴染みがあるだろうが、いわゆる従来型のカーシェアの利用環境では、鍵の受け渡しにコンソールボックス内に鍵を置いていた。

または特殊な通信装置を車両のCAN(Controller Area Network : 車両情報を伝送するネットワーク規格)に直接接続することで鍵の開閉などを行っているのが普通だ。

これに対してトヨタ自動車が開発したSKBは、車両を改造することなく、車両の所有者(事業社)が、専用の端末を車内に設置するだけで良いというイージーさが売りだ。

利用者用画面イメージ

これにより利用者側は、自身が所有しているスマートフォンにインストールしたアプリを使い、「鍵の開閉」の他、「エンジン始動」ができるようになる。

トヨタによると、この仕組みによって車両の貸し借りに於けるセキュリティ環境が大きく改善されると云う。

この仕組みについて、より具体的には、車両の所有者がSKB端末を車内の任意の場所に設置。

車両の利用者は、スマートフォン上のアプリを操作することで、トヨタスマートセンターから、SKB端末にアクセスするための暗号キーを受信。

管理者用画面イメージ

利用者がそのスマートフォンを車両に近づけると、SKB端末との間で暗号キーが認証され、通常のスマートキーと同様に鍵の開閉などの操作を行うことができる。

操作可能な時刻や期間は、利用者の予約内容に応じてセンターで設定・管理される。

今後トヨタでは、このシステムの幅広い活用を積極的に推進していく予定であり、日本国内於いても、レンタカーの無人貸出しサービスなどへの活用拡大などの検討を進めている。

Getaround社Webサイト
写真中央が、Getaround社のCEO(最高経営責任者)であるサム・ザイード氏。向かって左がマーケティング部長のジェシカ・スコーピオ氏。向かって右側が技術部長のエリオット・クルー氏

予てよりGetaround社のCEO(最高経営責任者)であるサム・ザイード氏は、「当社の理念は、お客様にどこでもカーシェアをご利用いただけるようにすることにある。

当社の経験やカーシェア専用の技術を、モビリティサービスに関わるトヨタの取り組みと組み合わせ、トヨタのお客様や日々増え続けるカーシェア利用者に新たなサービスをご提供していきたい」と述べていた。

なお、このアプリは、トヨタの北米におけるコネクティッド分野の戦略事業体であるToyota Connected North America, Inc.(2016年1月に設立したToyota Connected, Inc.から改称した。以下、TC)が、トヨタから開発、運営を委託されている。

図は、モビリティサービス・プラットフォーム(MSPF)の全体図とその相関関係を表す

対してトヨタは昨年、自社開発の決済機能を実装したMSPF(モビリティサービス・プラットフォーム)を開発した。

MSPFは、これらのカーシェア等のモビリティサービスの普及を踏まえ、既存のトヨタスマートセンター、トヨタビッグデータセンター、金融・決済センターの上位に設けられたサービスプラットフォームだ。

今後トヨタがライドシェアなどのモビリティサービス事業者と提携する際、車両管理システムやリースプログラムといった個別の機能をすべて包括している。

このシステムを用いたカーシェアの実証実験自体は、先の通りで米国でカーシェア事業を手がけるGetaround社とともに本年1月からサンフランシスコで展開してきた。

これを今回、米国ハワイ州でも実証事業を行うことで、カーシェア事業用アプリと、このMSPFの完成度を高めていく。

プラットフォーム内の機能をサービス内容に応じて利用することで、より便利で細やかなサービスを顧客に対して提供していくことが可能だ。

今後、様々なシェアリング事業者は、このプラットフォーム内の機能をサービス内容に応じて利用することで、より便利で細やかなサービスを顧客に対して提供していくことが可能になる。

そしてトヨタは今後、このMSPFをカーシェアやライドシェアといったモビリティサービスだけに留まらず、テレマティクス保険など、様々なサービス事業者との連携に活用していく構えだ。

トヨタの専務役員で「コネクティッドカンパニー」プレジデントの友山茂樹氏

この取り組みについてトヨタの専務役員で「コネクティッドカンパニー」プレジデントの友山茂樹は、「トヨタは、モビリティサービス・プラットフォーマーとして、あらゆる企業、サービスとオープンに連携し、より便利で安心な移動をお客様に提供すべく、新たなモビリティ社会の創造へ貢献していきたい。

また今回のカーシェア事業用アプリにより、トヨタのモノづくりの強みと、地域に根ざした販売店のオペレーションを組み合わせることで、より快適なカーシェアサービスをお客様に提供できるようになると考えている」と語っている。

写真は、TCNAのCEOであるザック・ヒックス氏

また、TCNAのCEOであるザック・ヒックス氏(Zack Hicks)は、「次世代のプラットフォームとしてMSPFの構築を推進することで、車両管理やカーシェア事業、ひいては将来のモビリティ社会の到来に向けたグローバル基盤を整備していく。

高性能で柔軟なプラットフォームを用いてビジネスチャンスを発掘し、地域ごとに最適化したモビリティ事業の展開をサポートしていきたい」とコメントしている。

対してトヨタ自動車では、「安心、便利で魅力的なモビリティーサービスの実現に向け、今回のカーシェア事業用アプリやMSPFを、その他地域の販売店のほか様々な事業者にも展開すべく、取り組みを進めていく」と結んでいる。