トヨタ自動車株式会社(本社:愛知県豊田市、社長:豊田章男、以下、トヨタ)は、8月22日(土)と23日(日)の両日、栃木県芳賀郡茂木町のツインリンクもてぎでスーパーフォーミュラの第4戦「ツインリンクもてぎ2&4レース」の戦績を発表。
具体的には優勝の石浦宏明(中左)、2位の中嶋一貴(左)、3位のジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ(右)と、前戦富士に続き、トヨタエンジンが表彰台を独占した。
レースは、石浦宏明(P.MU/CERUMO・INGING)がポール・トゥ・ウィンで今季2勝目を挙げた。
中嶋一貴(PETRONAS TEAM TOM’S)は今季3度目の2位。3位にジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ(Lenovo TEAM IMPUL)、4位にアンドレ・ロッテラー(PETRONAS TEAM TOM’S)が続き、トヨタエンジンがトップ4を独占した。
レース前半3位を走行していた小林可夢偉(KYGNUS SUNOCO Team LeMans)はピット作業で大きく遅れ、追い上げていたファイナルラップに接触。17位に終わった。
全7戦で戦われる2014年シーズンのスーパーフォーミュラも、折り返しの4戦目を迎えた。昨年シャシー、エンジン共に一新した新世代スーパーフォーミュラとしての初年度を戦い、全7戦9レース中8レースを制したトヨタRI4Aエンジンは、2年目を迎えた今年も、開幕から3連勝を続けるなど好調さを示している。
昨年同様、今大会より後半戦へ向けて改良された新スペックエンジンが投入された。ハイスピード、ローダウンフォースだった前大会富士とは一転、テクニカルでハイダウンフォースなもてぎ、そしてそのままオートポリス、SUGOと同タイプのサーキットが続くため、後半戦を占う上でも重要な一戦となることが予想された。
昨年のもてぎ戦は、もてぎで過去6勝、表彰台8回と圧倒的な強さを見せてきた「マイスター」アンドレ・ロッテラー(PETRONAS TEAM TOM’S)がF1出場のため欠場となり、ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ(Lenovo TEAM IMPUL)がポール・トゥ・ウィンでもてぎ4勝目を挙げた。今年はこのもてぎを得意としている2人と、勢いに乗る石浦宏明(P.MU/CERUMO・INGING)、中嶋一貴(PETRONAS TEAM TOM’S)、小林可夢偉(KYGNUS SUNOCO Team LeMans)らのバトルに注目が集まった。
【予選】
22日(土)午前中のフリー走行でセッティングを詰めた各車は、午後1時15分から、ノックアウト方式の予選Q1に臨んだ。空は雲が覆っているが路面はドライ。気温31度、路面温度34度というコンディションながら、湿度が高く、非常に蒸し暑い中での予選となった。
Q1(20分間)はセッション開始と共に全車コースインし、まず中古タイヤでタイムを出すことに。タイムを出した全車は、一旦ピットへ戻り、残り7分くらいから新品タイヤで再びコースへ。充分にタイヤを温め、残り3分あたりから各車アタックを開始、めまぐるしくタイムが塗り替えられ、順位が入れ替わっていった。
そんな中、アタックに入ろうとしたジェームス・ロシター(KONDO RACING)が突然シフト系のトラブルに見舞われスローダウン。そのままピットへ戻り、このセッションは最下位となってしまった。
チームメイトのウィリアム・ブラー(KONDO RACING)もタイムを伸ばせず、17番手。午前中のフリー走行でステアリング系のトラブルに見舞われ走行出来なかった中山雄一(KCMG)もセッティングを詰め切れず18番手でQ1敗退となった。
このQ1では、もてぎではあまり走行経験がなく、午前中のフリー走行でもタイムが伸び悩んだため、大きくセッティングを変更して予選に臨んだ小林がトップタイムをマークした。
Q2(7分間)開始時には太陽も顔を出し、路面温度も急上昇する中、僅差のアタック合戦が展開。オリベイラ、ロッテラー、中嶋一貴、小林らが0.1秒以内の僅差の上位争いを繰り広げる中、好調な石浦がファイナルラップにタイムを塗り替えトップに。
上位8台が0.25秒という僅差の予選となり、平川亮(KYGNUS SUNOCO Team LeMans)が10番手。やはり午前中のフリー走行でシフト系トラブルに見舞われ、終盤僅かな走行しか出来なかった国本雄資(P.MU/CERUMO・INGING)が12番手で無念のQ2敗退となった。
Q3(7分間)では、ロッテラーとオリベイラ、アンドレア・カルダレッリ(LENOVO TEAM IMPUL)がスタート前からピットロードに車両を並べ、ロッテラーを先陣にコースイン。小林が最後にコースへ向かった。
まずロッテラーがトップタイムをマークするが、その直後にオリベイラがこれを塗り替えトップへ。
中嶋一貴は最終コーナーで僅かに挙動を乱したものの、この時点での2番手タイムをマーク。
セッション終盤に入るとホンダ勢の野尻智紀(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)がこれまでのタイムを大きく上回る1分32秒台に。しかし、ここで好調石浦が野尻のタイムを100分の2秒上回る驚速のタイムでコースレコードを更新。
その後は小林がオリベイラのタイムを上回り32秒台に入れたものの、上位2台には届かず。石浦が第2戦岡山に続き今季2度目となるポールポジションを獲得した。
小林が3番手、オリベイラ4番手、中嶋一貴5番手、カルダレッリ6番手、ロッテラーは7番手から明日の決勝に臨むこととなった。
【決勝】
23日(日)、雲に覆われた決勝日のもてぎは、併催のF3レースが終了した昼過ぎから雨が降り始め、路面は一気にウェットに。
しかしその後雨は止み、スーパーフォーミュラのウォームアップ走行が始まる頃には、ライン上は乾き始めるという微妙なコンディション。全車スリックタイヤを装着、併催レースの遅延により、予定よりも5分遅れた午後3時5分に決勝レース(52周)のフォーメーションラップがスタートした。
レーシングライン上のため、やや乾いている予選奇数グリッドのポールポジション石浦、3番手小林、5番手中嶋一貴の3台は好スタート。中でも中嶋一貴は第1コーナー進入でアウトへとラインを振り、前の小林に並びかけると、立ち上がりで先行。
石浦、中嶋一貴、小林、オリベイラの順のレース序盤戦となった。首位を行く石浦は、2位の中嶋一貴との差をじりじりと広げて独走状態に。その差は9周目には4秒まで広がった。
11周目終了時、4位と6位を走行しながらも、前走車に詰まる形となっていたオリベイラとロッテラーが早くもピットイン。給油と共にオリベイラはタイヤを4本、ロッテラーはリアの2本のみ交換し、オリベイラが前でコースへと復帰した。
その後、続々と後続勢がピットへ向かうが、石浦、中嶋一貴、小林のトップ3台はレース折り返しを過ぎてもピットを引っ張り、32周目終了時にようやく小林がピットへ。
しかし、ここで小林はピット作業で、右リアタイヤのロックナットを締める際にミスがあり、20秒近い大きなタイムロス。11位へと後退。小林は、交換したタイヤが温まりきる前のアウトラップでもライバルにかわされ、更に順位を落とすこととなってしまった。
中嶋一貴は34周終了、そして首位の石浦は最後まで引っ張って36周終了時点でピットイン。共に給油とタイヤを4本交換し、1位、2位を維持してコースに復帰。
全車がピットを終えた時点で、首位石浦と2位中嶋一貴との差は約7秒。そこから6秒離れて3位オリベイラ、早めのピット作戦が効を奏したロッテラーが更に6秒離れての4位と、トヨタ勢がトップ4を占めての後半戦となった。
上位勢が大きな間隔を空けての走行となる一方、後方グループは各所で接近戦が展開。7位の平川、11位に落ちた小林は、ハイペースで前走車を追い、テール・トゥ・ノーズでのバトルを繰り広げた。
上位勢では、石浦と中嶋一貴がファステストラップを塗り替え合いながらの、ハイペースで周回。残り10周を切ると、中嶋一貴が猛プッシュを開始。更にファステストラップを更新しながら、首位石浦との差をじりじりと詰めて行った。
中嶋一貴の猛追に気付いた石浦もペースアップ。負けじと追い上げる中嶋は、残り2周で3秒まで差を詰め、更にプッシュを続けたが、序盤に築いたマージンもあり、石浦が、最後は1.7秒差で逃げ切り、トップチェッカー。第2戦岡山に続き、ポール・トゥ・ウィンで今季2勝目を挙げた。
中嶋は今季出場した3戦で3度目となる2位表彰台。3位にオリベイラで、前戦富士と順位は異なるものの同じ3人が連続表彰台に。4位にロッテラーが続き、トヨタエンジンはトップ4を独占することとなった。
順位を落としながらも最後まで猛追を続け、ファンを湧かせた小林は、ファイナルラップにアタックを仕掛けたが接触し、痛恨のスピン。グラベルに捕まり、レースを終えることとなってしまった(17位完走扱い)。
今大会の結果、2勝目を挙げた石浦は、ドライバーズタイトル争いで2位のオリベイラに7ポイントとその差を広げた。しかし、中嶋一貴、オリベイラ、ロッテラーも着実にポイントを稼いでおり、残り3戦、4レースでのタイトル争いはまだまだ全く行方の分からない激戦となっている。
【レース後の各選手のコメント】
決勝1位
P.MU/CERUMO・INGING 38号車 ドライバー 石浦宏明
昨日の会見で逃げるレースがしたいと言ったが、スタート後はライバルをどんどん離していくことが出来、前回の岡山とは違って1人でレースをしていた感じだった。
正直、後半の一貴選手の追い上げにはびっくりした。毎周サインボードを見て、タイム差を見ていたが、プッシュしてもどんどん追いついて来て、序盤の差は何だったんだろうとか考えながら走った。
あと何周かあったら抜かれたと思うので、楽はできないレースだった。
もてぎでは、ブレーキングポイントをミスするとコースアウトのリスクもあり、安定したペースでクルマを走らせるのは難しいので、集中して走った。自分のレース人生で、こんなに順調に行ったのは初めてだ。
決勝2位
PETRONAS TEAM TOM’S 1号車 ドライバー 中嶋一貴
今週の流れは決して悪くなかったが、予選の最終コーナーでのミスが悔やまれる。
あそこで失敗してなかったら、もしかしたら予選で2番手につけられたかも知れない。もちろん、仮に2番手だったとしたら濡れた側でスタートを失敗したかもしれないし、何がどう転ぶかわからない。
スタートは狙っていた。とは言え、第1コーナーまでの距離が短いので、どこまで行けるかと思っていたが、幸いストレートの内側も濡れていたし、可夢偉選手を1コーナーのブレーキングで外からうまく抜けたのは大きかった。
その後は石浦選手から離され過ぎてしまい、序盤は良くなかった。前回の2戦と比べれば、レース終盤巻き返すことも出来た。
昨年は、もてぎ戦で苦しみ、少なくとも得意ではなかったが、それを払拭出来たので、残りのレースにも繋がって行くと思う。
決勝3位
LENOVO TEAM IMPUL 19号車 ドライバー ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ
週末を振り返ってみると、完璧とは言いがたい。今日は勝ちたかったので、表彰台に上れたとはいえ満足していない。
予選では自分のミスも2つほどあり、良いポジションにつけられなかった。決勝レースは、私がスタートする右側のグリッドは路面が濡れており、厳しい状況だったが、何とか可夢偉選手の後ろで4番手をキープできた。
表彰台獲得のためには戦略での工夫が必要だと考え、早めのピットストップを敢行した。
ロッテラー選手も同時のピットインで、彼らは2本しかタイヤを交換しなかった。我々は4本交換したが、先にピットアウトすることが出来た。
その後は、燃料の心配もあったし、自分のペースでポジションをキープすることに専念した。
できる限りのことができたと思うよ
決勝4位
PETRONAS TEAM TOM’S 2号車 ドライバー アンドレ・ロッテラー
スタートはすごく良かった。しかしその後イン側のラインを選んだのが良くなかった。アウト側から行った方が良かったし、イン側を選んだことでもっとポジションを上げるチャンスを失ってしまった。
その後は、できる限りのことができたと思う。作戦も良くて、いいタイミングでピットに呼び戻してもらったし、クルマも良かった。僕自身も最大限プッシュした。
1回ちょっとミスしてワイドに行ってしまって、コンマ3〜4秒タイムをロスした場面もあったが。僕自身は、自分の仕事には満足している。
石浦選手が一体何であんなに速かったかは分からない。だから、僕らのクルマにはもっとポテンシャルが必要だろう。
後半、燃料が減ってきてからは、どんどんバランスが良くなって行った。今日、ポイントが獲れたのは良かったが、もっと前に行きたい。次は、そこを目指す。
決勝5位
NAKAJIMA RACING 64号車 ドライバー 中嶋大祐
とにかく結果的に良かった。チームとスタート前にこういう作戦でいこうと決めたこと、タイムのことやピット作業も含め、なにもミスなくすべて完璧にできた結果として、望み得る最高の結果だったと思う。
満足感は高いし、チームとしても富士、もてぎとこれまで一生懸命いろんな点でがんばってくれていたので、それが結果に反映できた。
今日の作戦としては、まず路面が悪い中でのレースになったので、僕らのベストな状況から少し妥協したウェットにも対応できるセットにしてスタートした。
結果、タイヤにはやさしい(負担が軽い)ということになるのがわかっていたので、タイヤを換えないことも十分に考え、結果的にも(タイヤ)無交換で走り切ることができた。伸び代がまだまだあるので、後半戦に賭けたい。
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