独・フォルクスワーゲン、今年の年次総会で2020年を目処にSUVラインナップの大幅拡充を発表


2017年の年次総会に於いて、「TRANSFORM 2025+」の実施効果を報告。ターンアラウンドの加速化を示唆

独・フォルクスワーゲンブランドは、欧州ドイツ中央時間の5月5日、2017年の年次総会を実施した。ここで昨年2016年11月に自らが示した新戦略「TRANSFORM 2025+」を打ち出し、同戦略を消化・前進させたことで収益性が大きく改善していると報告した。また併せて、2020年までに現行2車種のみのSUVラインナップを、来る2020年を目処に19車種まで拡充すると発表した。

一昨年に発覚したディーゼル不正問題を経た同社は、2017年、第1四半期に於ける車両販売台数で86万2000台を記録。売上高も190億ユーロに到達して、前年同期比に於ける事業全域の営業利益は、およそ9億ユーロ上昇。4.6%にまで改善した営業利益率を踏まえ、来る2025年の営業利益率目標を6%に据えた。

併せて昨年2016年に740億ユーロの売上高。16億ユーロの営業利益。2.1%に終わった営業利益率についても、今期2017年に2.5~3.5%を見込む。

また今後も相次ぐ合理化策を打ち出して、収益率の高い事業へと選択と集中を推し進め、苦戦が続く事業運営のなかでさらなる収益改善を強力に推進していく。

実際、危機以降は投資コストを厳格管理したことで、SUV攻勢や電動化アーキテクチャーおよびデジタルエコシステムに必要な先行投資を行なったにもかかわらず、2017年第1四半期の固定費については、前年度の低い水準またはそれ以下に維持することに成功していると云う。

なお当面の注力領域は、新型車種のより効率的な生産に根ざした立ち上げ体制、機械化の向上による作業時間の短縮、そしてプロセスの改善が含まれている。

さらに2018年以降は、積極攻勢に出る。これについて具体的には、ウォルフスブルグ工場でグループ傘下の他ブランドによる新型車種が生産される。また、エムデン工場で生産する第4のモデルは開発段階にある。

コンポーネントの拠点ザルツギッターで設立された「Center of Excellence (最先端の研究開発拠点)」は、バッテリーセルとモジュールの開発、調達、品質保証を担当。試験生産は、現在計画段階であるとしている。

なおこの領域に於ける目に見える成果としては、ドイツ国内事業内に関して昨年2016年に3億ユーロのコスト削減に成功。今後は、来る2020年までに事業生産性を25%にまで高めてく。

加えてドイツ国内領域で3万人の人員削減を目指すとした合理化策についても、同じく2020年を目処に労使間で協調しながら進めて行くと述べた。

5月5日の現地時間午前10時から、質疑応答を含め延べ2時間に亘って行われた2017年の年次総会に登壇したフォルクスワーゲン ブランド取締役会・会長を務めるヘルベルト ディース氏は、「2016年はフォルクスワーゲンブランドにとって大きな変化の年でした。

ディーゼル危機のなか、当社は新たな経営戦略を打ち出し、設備投資・研究開発の強化等のターンアラウンドを開始。結果、我々のブランドは新たな進展の途に就きました。そんな私達の目的は明確です。

未来の自動車産業に於いて、具体的には2020年までに、現在取り組んでいる事業再編を完全に終え、電気自動車領域に於いて技術面・商業面の両面で2025年までに世界のリーダーになることを目指します。

2025年以降の自動車産業は、それまでとは大きく異なる新たな産業構造に生まれ変わっていると考えられますが、当社はその新たな未来に於いて、1年あたり100万台の電気自動車を販売していきたい考えています。

昨秋に策定・発表した『TRANSFORM 2025+』の実施に向けて、当社は大規模なリストラクチャリングプログラムを実行し、その結果、米大陸とロシア地域に於ける今第1四半期では、着実な成長軌道に乗せることに成功し、各地域で市場占有率を拡大させました。

具体的には、最も危機の大きかった米国に於いて、当社ブランドは市場シェアを10パーセント増大させ、これによって危機後の1年半の取り組みを通して当地の事業を危機前のレベルに戻しています。

また南米では、再編プログラムを引き続き継続する予定です。と同時に、製品のポートフォリオの若返りと拡充を行います。

一方、中国に於いては、引き続きマーケットリーダーの地位を保持し続け、この立ち位置を確保していくことに注力します。

こうした目標を踏まえて我々は、現行車種のトゥアレグ並びにティグアンに加えて、年内に新たなSUV2車種を追加。

さらに来年には5車種のSUVを追加していきます。そして今後2018年の終わりまでに、7台の新しいSUVを世界市場に向けてリリースしていきます。

なお、このなかには7人乗りの大型SUVだけでなく、当社の主力車種である『ゴルフ』シリーズの流れを汲むSUVタイプも含まれます。

今年度について具体的には、来る6月にポロのフルチェンジ車を投入します。6代目となるこの新型ポロは、最新モジュール・プラットフォーム「MQB」をベースに現行の5代目よりも大幅に軽量化されます。

搭載するパワートレインは各種3気筒および4気筒が用意され、その頂点には200馬力程度を発生する「ポロ GTI」も遅れて追加される予定です。

その後の夏頃には、ポルトガルのパルメラ工場で新型クロスオーバーSUVの量産を開始。中国に向けては、当地専用モデルでセダンタイプのプラグイン・ハイブリッドがお目見えします。

さらに秋には、新型トゥアレグの欧州リリースに加え、新型ポロのセダン・バージョン『Virtus』が南米市場に投入。北米では第4四半期に『ジェッタ』も刷新します。

なかでも今夏発表の新型クロスオーバーSUVは、シャシーコンポーネンツに最新モジュールの『MLB Evo』モジュールを採用しており、同モジュールは今後、多くの姉妹モデルが登場することになるでしょう。

このようにすべての地域中で、フォルクスワーゲンはこれまでにない最大の製品攻勢に出て、市場占有率を安定させて、さらに拡大させていくことに努めていきます。

またこれらの各地域市場向けの生産車のいくつかは、『新しい動力源をそなえたクルマ』になるでしょう。

例えば航続距離300kmを実現した新型「e-Golf(e-ゴルフ)」は、日常における実用性と、お客様にとっての高い使い勝手を融合させています。

さらにフォルクスワーゲンは、「I.D. (アイ.ディ.)」、「I.D. BUZZ(アイ.ディ.バス)」、「I.D. CROZZ(アイ.ディ.クロス)」によって、未来のeモビリティを予見させるモデルを提示しています。「I.D.」ファミリーは、新しい電気自動車アーキテクチャに基づいて設計されています。

このアーキテクチャは、グループにおける未来の主力電気自動車の技術的および経済的基盤を構築するものです。

ミドルクラス以上の車種ラインナップに対しても、新たな電気自動車の追加や、ハイブリッド車の追加も検討しています。併せてコネクテッドカー戦略も進展させ、この分野に関しては、具体的な指針と製品戦略を、いち早く提案していきます。

なお懸案となっているディーゼルユニットの改善計画は、当初の計画通りに進展しています。

例えば、ドイツ国内に於いては必要なソフトウェアアップデートに関しては該当市場で延べ260万台に相当する4分の3を実施済としています。

今年2017年末までに、対象となるフォルクスワーゲンブランド車の改善措置を全て終える計画となっています」と結んだ。

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