独・シンクタンクのローランド・ベルガー pvt. ltd(roland berger strategy consultants 、本社:独ミュンヘン、CEO:シャレドア・ブエ)は、「自動車産業で起きる非連続な変化を読み解く(Automotive Disruption Rader)」と題する調査結果を公表し、今日、世界の自動車産業が大きな変革期に直面していることを提示している。
それによるとデジタル化がもたらす自動車産業全域に関して、カーシェアリングやライドシェアなどのモビリティ・サービスを促し、インターネットによる販売など新たな販売チャネルも拡大させている。
また電気自動車の市場が急拡大するだけでなく、自動運転の急速な進歩も止まる気配がない。テクノロジーが既存技術を破壊していくディスラプションが目の前に迫っているとする。
例えば、「消費者は新たな変化をどのように受け入れるのか。もし消費者が真に望む産業像があるならば、自動運転と電気自動車のどちらかが大きく成長するのだろうか」と問い掛けている。
同社の具体的なアンケート結果によると、46%の消費者はロボットタクシーが自由に低価格で利用できれば、「今後は自家用車を購入しない」と回答。また、37%の消費者は次の自家用車の購入の際に電気自動車を検討していることが明らかになった。
これについてローランド・ベルガー ミュンヘン本社にあるグローバル・オートモーティブ・コンピテンスを率いるマーカス・ベレットは氏によると、「自動車産業はディスラプティブな傾向を受け、複数の新たな業界構造を形成している。
あらゆる変化に対し、同時に適用することが求められており、過去130年間で最大の変革期に直面している。急進的な変革は、全ての関連産業に大きな影響を与える。
従来のバリューチェーンは消失し、新たなビジネスモデルが誕生する。現在の自動車メーカーやサプライヤーは変化する市場勢力図に対処する必要がある。
Automotive Disruption Radarは、不安定な環境における事実に基づいた対策を明確にし、企業の投資判断や数々の課題への対処を提供している」と話す。
アジアで顕著化する、新しいモビリティの考え方
世界的な視野で自動車産業を俯瞰した場合は、地域別では、シンガポールと中国の消費者が新たなモビリティに最も大きな関心を示しているとする。
その数字はシンガポールで84%、さらに中国の83%の回答者は、「自動車を購入せずシェアリングで移動している人を、1人は知っている」、と答えている。
一方、他の先進国では、カーシェアリングやライドシェアのモデルに積極的な回答した消費者は少ない。 イギリス(37%)、フランス(34%)、日本(29%)、そして米国(22%)が最下位となった。
この数字について同社のパートナーであるウォルフガング・ベルンハルト氏は、「シェアリングエコノミーが普及している現在、消費者の考え方が変化しつつある。新たなビジネスモデルが成長し、ロボットタクシーのような低コストの代替手段が確立されれば、この傾向は今後数年で大幅に加速すると考えられる。
『自家用車を購入せずに、ロボットタクシーを利用してもよい』と、回答した消費者は特に人口密度の高い都市を有する国に多い。オランダ59%、日本56%、シンガポール51%の順だ。
一方、国土の広い国が消極的な傾向を示している。米国35%、インド33%、中国27%という結果だ。自動運転・電気自動車は2021年から市場に投入されると予測されている。
自動車メーカーはサプライヤーやIT企業などと協力し、この分野での競争力獲得に向けた多大な努力を重ねている。現在、新たなモビリティサービスや自動運転分野に従事している労働者は、全世界で約4万人相当に達する』と指摘している。
電気自動車に対する期待が最も高いのは中国
なお調査結果より、地域格差が顕著な分野のひとつはEVやPHEVを含む「E-モビリティ」である。
中国の消費者はEVに対する高い購買意欲を示しており、60%が次の自家用車としてEVの購入を検討している。韓国でも54%と回答者の半数以上がEV購入を検討している。
日本、韓国、欧州、米国の消費者は電気自動車購入の際にネックとなるのは値段だと答えている。日本の消費者で、次に電気自動車の購入を検討すると応えた回答者は22%に過ぎない。
この調査結果について先のウォルフガング・ベルンハルト氏は、「バッテリー技術の進化により走行距離が伸び、結果的に利便性も向上した。
電気自動車に必要な高いエネルギー密度のリチウムイオン電池に代表される電池のコストは2020年までに1キロワットあたり約120ユーロまで下がると想定され、初期モデル時のバッテリーコストの3分の1に相当する。
このような進化は、従来の自動車産業が一つの時代を終えつつあることを示唆している。消費者は新しいモビリティ、自動運転を初めとするさまざまな変化に期待を抱いている。
この動きが新たなビジネスモデルの成長を後押ししている。企業はあらゆる変化に対しバランスを取りつつ対応することを求められている。
自動車メーカーとサプライヤーは共にディスラプションに適応し、新たな可能性を模索することが求められる。
一方で、既存のインフラから脱却するだけでなく、変革プロセスに積極的に取り組むことも必要となる。これこそが市場のプレーヤーにとって最大の挑戦といえるだろう」と結論付けている。