2016年米国自動車初期品質調査(IQS)、米国に於ける新車初期品質改善の幅が過去7年間で最大値に
米国ミシガン州デトロイトに於いて6月22日に発表した J.D. パワーの「2016年米国自動車初期品質調査SM(Initial Quality Study、略称IQS)」で今年の新車の初期品質は、昨年の倍の6%改善し、2009年以降で最大の改善幅となったことが明らかになった。
今年で30年目を迎えたこの調査は、車両購入後90日間での新車の品質を調べたもの。
初期品質は、100台当たりの不具合指摘件数(PP100)として算出され、数値が小さいほど不具合指摘件数が少なく品質が良いことを示している。
今年の調査では、新車の初期品質は8カテゴリー(外装、走行性能、装備品/コントロール/ディスプレイ、オーディオ/コミュニケーション/エンターテインメント/ナビゲーション(ACEN)、シート、空調、内装、エンジン/トランスミッション)など全てに於いて改善した。
また、当調査の対象となった33ブランドのうち21ブランドで初期品質は改善し、1ブランドでは昨年と同水準となっている。
J.D. パワーの米国オートモーティブ品質部門バイス・プレジデントのレネ・ステファンズ氏は、「自動車メーカーは今、これまでで最も品質の高い製品を製造している。
過去数年間にわたる当社のデータを見ると、自動車メーカーは顧客の声に耳を傾け、問題となっている箇所を特定し、継続的な改善に重点的に取り組んでいることが明らかである。
不具合の原因とされている先進技術を含む、機能や技術が新たに加わってはいるが、総合的な初期品質は向上し続けている」と述べている。
主な調査結果:米国系メーカーの初期品質は大きく改善
米国系ブランド全体の不具合指摘件数は、輸入ブランド全体の不具合指摘件数よりも少なくなった。これは同調査の30年の歴史の中で2回目のことである。
米国系メーカー3社全てに於いて、昨年から初期品質が改善している。3社の平均は103 PP100で、昨年から10%の改善となったが、これは平均が106 PP100だった輸入ブランドの2倍の改善幅である。
前回、米国系ブランドが輸入ブランドを上回ったのは2010年で、その時の差は1PP100だった(108 PP100対109 PP100)。
ノンプレミアム系ブランドの不具合指摘件数が少なく
2006年以来初めて、ノンプレミアム系ブランドの不具合指摘件数(104 PP100)がプレミアム系ブランドの不具合指摘件数(108 PP100)よりも少なかった。
高い品質が高いロイヤルティを生む:ユーザーの49%が、新車の購入時に最も重視する点として「信頼性」を挙げている。
新車を購入または、リース契約してから90日以内に不具合を経験しなかったユーザーでは、54%が次に買い替えるときも同じブランドを選択している。
しかし、不具合を1件経験したユーザーではその割合は50%に、不具合を3件以上経験したユーザーでは45%に低下する。
これについては、顧客が新車に対して経験する不具合の件数と、次の車の買い替えやリースする際の決定には直接的な相関関係がある。
買い替えの際に同じブランドを選ぶ割合の低下は小さくたいしたことがないように見えるが、シェアが1%低下するだけで、自動車メーカーは何百万ドルもの売り上げを失うことになり得るとしている。
ブランド別ランキングとセグメント別ランキング
ブランド別ランキングでは、起亜が83 PP100で第1位となり、27年ぶりにノンプレミアム系ブランドが、全ブランドのトップになった。起亜は2015年は2位となっており、2年連続でノンプレミアム系ブランドの中でトップとなった。
第2位はポルシェ(84 PP100)、第3位はヒュンダイ(92 PP100)、第4位はトヨタ(93 PP100)、第5位はBMW(94 PP100)となった。
新車の初期品質が最も改善したブランドはクライスラーとジープで、両ブランドとも2015年から28 PP100改善した。
セグメント別ランキングでは、ゼネラルモーターズが7モデルでアワードを受賞して最多となり、続いてトヨタ自動車の6モデル、現代自動車とフォルクスワーゲンAGのそれぞれ4モデルがアワードを受賞した。
- ゼネラルモーターズ:ビュイック・カスケーダ、シボレー・エクイノックス、シボレー・シルバラードHD、シボレー・シルバラードLD、シボレー・スパーク、シボレー・タホ、GMC・テレイン
- トヨタ自動車:レクサス・CT、レクサス・GS、サイオン・tC、トヨタ・カムリ、トヨタ・カローラ、トヨタ・ハイランダー
- 現代自動車:ヒュンダイ・アクセント、ヒュンダイ・アゼーラ、起亜・ソウル、起亜・スポーテージ
- フォルクスワーゲンAG:アウディ・Q3、アウディ・TT、ポルシェ・マカン、ポルシェ911
プラントアワード
レクサス・ESを製造するトヨタ自動車のジョージタウン3工場(ケンタッキー州)と、レクサス・ESおよびレクサス・RXを製造する九州第2工場(日本)が、不具合指摘件数が最も少ないモデルを生産して同率でプラチナ賞を受賞した。
なおプラントアワードには設計不具合は含まれず、製造不具合のみに基づいている。
欧州/アフリカ地域では、ポルシェ911およびポルシェ・ボクスターを製造するポルシェのシュトゥットガルト工場(ドイツ)がゴールド賞を受賞した。
(参考)2016年の米国自動車初期品質調査は、2016年型車を購入もしくはリース契約した80,000人以上の対象者に、購入(またはリース)後 90 日を経てから調査した回答を基にしている。
この調査は、8カテゴリーに分けられる233の質問から構成され、自動車メーカーに不具合の特定を促し、車の改善に役立つ情報を提供することを目的としている。本調査は、2016年2月から5月にかけて実施された。