ホンダ、車両回収&副生水素を使用する定置燃料電池の運用実証へ

データセンターのGX化と⾃治体や地元企業のDXへ貢献

本田技研工業(ホンダ/本社:東京都港区、取締役代表執行役社長:三部敏宏)は8月1日、トクヤマ、三菱商事と検討を進めてきた「副生水素と車両からのリユースを想定した定置用燃料電池電源のデータセンター向け実証」を山口県周南市で開始し、同日、実証サイトの開所式を開催した。

実証で使用する定置用燃料電池電源

実証は、2023年6月に国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「水素社会構築技術開発事業/地域水素利活用技術開発/地域モデル構築技術開発」事業として採択され、3社で実証開始に向け検討、準備を重ねてきたもの。

今実証では、山口県周南市の実証サイトに於いて、トクヤマが⾷塩電解事業で製造する副⽣⽔素を活⽤し、ホンダが燃料電池自動⾞からのリユースを想定して開発する定置用燃料電池電源から、三菱商事が運⽤する分散型データセンターに電⼒を供給する。

この実証の中で、⾞載⽤燃料電池の定置用燃料電池電源へのリユースの可能性を探索し、今後普及が⾒込まれる燃料電池の有効活⽤を通じて、定置用燃料電池電源の導⼊や運⽤に掛かる経済的負担の軽減、電⼒の脱炭素化に貢献することを⽬指す。

また、⼤容量のデータ処理を必要とする⽣成AIや⾃動運転などの普及拡⼤により、今後、データセンターの電⼒需要の更なる増加が⾒込まれている。

こうした中、分散型データセンターの電源として、低炭素で安定受給できる副⽣⽔素と、リユースを想定した燃料電池を活⽤することで、データセンターのグリーントランスフォーメーションと、⾃治体や地元企業のデジタルトランスフォーメーションへの貢献を⽬指す。

実証で検証する運用パターン

今回の実証では、副生水素を活用した定置用燃料電池電源と、系統からの電力、定置型バッテリー(BESS/Battery Energy Storage System)、再生可能エネルギーといった複数の電力を組み合わせ、より高効率かつ最適な電力構成、運用パターンに基づいた検証を行う。

具体的な定置用燃料電池電源の活用方法として、非常用電源としての活用に加え、系統電力から切り離した常用電源としての活用、電力系統のピークシェービング(電力需要が最も高くなる時間帯(ピーク時)における電力消費量を削減する取り組み)および系統への電力供給といった電力需給調整力としての活用など、具体的な想定活用シーンに基づく様々な運用パターンをエネルギーマネジメントシステム(EMS)で切り替えて実証を行う。

これにより、定置用燃料電池電源の運用に於ける実用性、事業性の検証はもちろん、多様な活用可能性を探索する。

(1)Hondaの定置用燃料電池電源について
ホンダは、2050年にHondaの関わる全ての製品と企業活動を通じて、カーボンニュートラルの実現を目指しており、30年以上に亘り水素技術や燃料電池の研究・開発に取り組んでいる。

この中で燃料電池モジュール活用のコアドメインとして、燃料電池自動車(FCEV)に加え、商用車、定置電源、建設機械の4つを定め、事業機会の拡大に取り組んでいる。

実証に使用する定置用燃料電池電源は、Hondaの燃料電池自動車「CR-V e:FCEV(シーアールブイ イーエフシーイーブイ)」にも搭載されている燃料電池を活用していく。

工場や事業所などの大型施設向けに水素由来のクリーンな電力を供給する定置型蓄電システムとなる。

ホンダの定置用燃料電池電源は、お客様が必要とする最大出力消費電力量をニーズに合わせ供給する。また冷却システムや内部レイアウトの設計を最適化することでコンパクトなサイズを実現し、設置環境にも柔軟に対応する。

加えて、非常時には信頼性の高いバックアップ電力を迅速に提供するために、起動から10秒以内に電力の供給を開始する高い応答性を目指している。

ホンダは、同製品を通じて多様な電力ニーズに対応する電力を供給し、製品の導入からアフターサービスまで幅広い支援を行い、脱炭素化に貢献していきたい考えだ。

(2)定置用燃料電池電源システム諸元
出力帯
250kWユニットをベースに4ユニット(1,000KW)まで連結可能
4ユニット(1,000kW)をベースに並列設置が可能
定格電圧:AC 200 – 480V 3相4線式
準拠規格:ANSI/CSA FC1 / IEC 62282-3-100
始動時間:10秒以内
動作環境
温度:-25°C – +45°C
高度:最大許容高度 2,000 m / 性能保証 1,000 m
騒音レベル:76dBA(@7m)以下
排気:ゼロエミッション(CO2 、NOxなし)
*記載の情報は、待機運転条件下で動作する標準製品に於いての仕様・数値。仕様は予告なく変更されることがある。

(3)実証概要
実証名称
副⽣⽔素と⾞両からのリユースを想定した定置⽤燃料電池電源のデータセンター向け実証

実証内容
– 燃料電池の特性を活かしたデータセンター向け非常用電源・系統電力から切り離した常用電源・ピークシェービング用途での活用可能性、および需給調整市場向けの活用可能性の検証。
– 燃料電池と水素供給を組み合わせたビジネスモデルの経済性・事業性の検証。

実証期間
2025年8月~2026年3月(予定)

実証イメージ