三菱マテリアル、ガバナンス体制の再構築策を報告


三菱マテリアル株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:竹内章)傘下の三菱電線工業株式会社(以下、電線社)と、三菱伸銅株式会社(以下、伸銅社)を含めた対応の進捗状況とグループのガバナンス体制の再構築策を報告した。

その概要は以下の通り

【1.安全性確認について】

(1−1)電線社
まず電線社のシール材については、2015年4月1日から2017年9月30日迄の2年半の期間で不適合品を出荷した可能性のある顧客企業229 社に対して安全性の確認を進めてきた。

しかしその後、同社で検査の一部を実施していない行為(一部検査不実施)を検証した結果、不適合品の出荷範囲がさらに広がることが判明。改めてその出荷先の特定作業を実施し、同作業が12月27日に完了した。

これを踏まえ、11月23日時点での不適合品出荷先は229社としていたものが精査の結果204 社であることが判った。

また一部検査不実施による不適合品の出荷先は、約230社としていたものが精査の結果107 社であることが判った。

ちなみに両不適合品の出荷先には重複があり、重複を除いた不適合品の出荷先は218 社(不適合品全体の出荷数量は約1.8億個、売上高約42億円、当該期間のシール材の売上高に占める割合約14%)となっている。

現在、これら顧客への説明を開始し、安全性の確認を進めている。一方、平角マグネットワイヤ(電線社商品名「メクセル」)については、不適合品出荷先の連絡が完了し、併せて安全性の確認を進めている。

2017年12月27日ま進行状況は以下の通り

(1−2)伸銅社
対して伸銅社については、若松製作所の銅条製品で12月20日になって新たにデータの書き換えがあったとの報告を受け、2016年10月18日から2017年10月17日までの 1 年間の出荷製品の実態調査を実施した。

その結果、規格が社内仕様値よりも厳格に設定していた一部の顧客け製品について、成分の含有値に関するデータを書き換えていた製品(合 計71トン、売上高74百万円、当該期間の若松製作所の売上高に占める割合約 0.14%)を2社の顧客へ出荷していたことが判明した。現在、これらの顧客の協力を得つつ安全性の確認を進めている。

2017年12月27日現在の安全性確認の進捗状況は以下の通り

【2.ガバナンス体制の再構築策について】

(2−1)受注時のフロントローディングシステムの浸透
受注時に於いて、事業内の開発設計・生産・検査・営業等、複数の関係部門で生産能力 を考慮。

上記を踏まえ受注可能な製品であることを検討したうえで、仕様や受注を決定する仕組み(フロントローディングシステム)の浸透を図っていく。

またこのフロントローディングシステムは、自社の生産能力を超えた製造困難な製品の受注を避けることが目的とし、システムの浸透を介して以下項目を併せて進めていく。

<1>各部門間のコミュニケーションの促進。
<2>部門間の能力のアンバランスを把握し、解消すること。
<3>部門間の権限のアンバランスの改善を推進し、以下具体策を通して継続的な実効性を高める。

  • 定期的な生産能力(工程能力、検査能力、出荷能力など)の確認。
  • 上記結果に基づく、適切な修繕計画、設備更新、新規設備導入の実施。
  • 適切な人員配置とスキル不足を解消する教育の実施。

(2−2)品質管理部門の体制・権限の強化
品質管理体制については、技術統括本部品質管理部が中心となって、グループ全体の品質管理レベルの向上を図るた めの体制を整備すると共に、事業・製品毎に必要となる品質管理機能を以下を踏まえて構築する。

<1>各事業の品質管理の機能分担を再定義し、規定類に反映する。
<2>上記機能分担に基づき、必要に応じて、コーポレート部門、カンパニー等、各事業所、各子会社に於いて組織変更も実施する。
<3>事業毎の品質管理部門に検査や品質保証を適切に行うことができる権限を与える。
<4>製造部門からの品質管理部門の独立性を担保する。
<5>品質管理に精通した人材を育成する仕組みを整備する。また、各社・各部門の次世代経営人材を積極的に品質管理部門に配置する。

(2−3)品質教育の拡充
品質教育については、グループの全ての階層(製造現場から経営層まで)、全ての職種(製造、検査、営業 等)の従業員が、品質の重要性及び品質を維持・向上させるために行うべきことを理解することを目指す。

その際、顧客との契約の遵守、顧客に提供する品質の重要性、品質の作りこ みの必要性、ものづくり企業としての誇り、品質への拘り等、品質リテラシーに関わる教育 も行う(こうした教育に今回の事例を活用する)。

また、組織の末端まで品質教育を徹底するため、各階層で行うべき教育内容のガイドライ ンを策定し、グループ各社の階層別教育に具体的に落とし込むことにより、グルー プ全体として整合し、かつ、グループ各社の業態に応じた実践的な教育体系を構築する。

(2−4)検査設備自動化の推進
製造工程内での検査データから最終検査に於ける検査データに至るまで、製品に関わる検査デー タについて、以下の取組みを推進する。

これにより、データ書き換え等の不正行為を防止すると共に製品検査データが顧客から求められる仕様に合致していることを正確かつ迅 速に確認できる体系を構築していく。

<1>検査データの自動取得。
<2>検査データの管理システムへの取り込み。
<3>検査データと要求仕様の整合確認。
なお、この取組みは、個々の装置での検査データ自動取得の検証。顧客からの要求仕様をシステムに取り込むため、受注システムと生産システムの連携を行う等、確認と構築に時間と費用がかかることが予想される。

しかし可能な部分から迅速に対応を開始できるようグルー プ全体で取り組む。また、この取り組みに必要となる予算を確保していく。

(2−5)品質監査の強化
品質監査は、技術統括本部品質管理部と総務統括本部経営監査部が中心となって、より充実した品質監 査を目指し以下の項目を検討・実行する。
<1>監査部門の独立性向上と権限強化。
<2>監査員増員による品質監査周期の短縮。
<3>品質監査における高度な専門性を持つ人材の育成。
<4>不正行為を防止することを目的とした監査手法の適用。
<5>当社経営監査部と関係会社監査部門との連携強化。
<6>IT 技術を活用した監査業務の高度化。

(2−6)外部コンサルタントの起用
品質管理に第三者の視点を導入するため、品質管理に精通した外部コンサルタントを継続 的に起用する。

外部コンサルタントによる同社直轄事業拠点、子会社の定期的な訪問によってグループの品質管理活動、品質保証業務に対する指導、助言を得る。

これによってグ ループの品質管理活動が独善に陥ることを防止し、実効性のある品質管理活動を確立していくことを目指す。

【3.業績への見通し】
同事案が同社業績に与える影響は、現時点では不明としている。これについては今後影響の程度が判明した時点で公表をする予定としている。