日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:澤田純、以下 NTT)は11月26日、存在を意識させることなく周囲に馴染む電池として光透過性を有する『透ける電池』を作製し電池動作を確認したと発表した。
NTTでは予てより、ICTサービスの実現に向けた蓄電池をはじめとする電池に関する研究開発を進めてきた。これを踏まえ今後は、IoTの更なる可能性を拡げるために『透ける電池』を適用できる領域を探索すると共に性能向上を図っていく構え。
この技術に取り組んだのは、あらゆるものがデバイス化しネットワークに接続されるIoTの普及が進んでいるため。
今後さらにIoTが普及することで利便性が向上する一方で、世の中に様々なデバイスが溢れ、デバイスの存在感が増し煩わしさを感じる可能性も考えられる。
そこでデバイスの存在感を抑えるために、これまでの“小型化”、“軽量化”などの取り組みを超え、“透ける・透明”に着目し、新たなデバイス作製の可能性を探索していく。
ちなみに従来電池の電極は、金属の集電層上に活物質、導電材、結着剤が混合された合材層が形成され、全体的に黒色で光を透過しない構造が一般的であった。しかし今回、光透過性の観点で電池を構成する材料と構造に着目し、入射光の吸収と反射を抑制する技術開発を行い、存在感なく周囲に馴染むデバイスを目指している。
具体的には構造制御技術 光の吸収と反射を抑制しやすい構造になるように電池の電極を作製。また適用できる領域を拡げる事を目指して電極を導電性フィルム上に成膜し、電解質をゲル化することで“透ける”に加えて“曲がる”電池を実現している。
現状で開発した電池は、一辺が9×5cmの長方形で市販LEDに接続して5分間の点灯が確認できている。性能としては光透過特性で平均約25%の透過率を実現。この透過率は向こう側が透けて見える一般的なサングラスの透過率に相当する。
また電池の充放電性能は、平均電池電圧1.7V、放電容量0.03mAh(電流密度0.01mA/cm2)を示している。同容量は一般家庭にある市販コイン電池CR1025の容量に相当する。また充放電を100回繰り返した後でもLED点灯が可能であることを確認している。
今後はこの透ける電池が従来では適用困難だった領域に、広く適用できる可能性があり、例えば情報表示端末のディスプレイ、建物の窓等の建材分野の太陽光発電素子などと組み合わせることで、IoTの新たな可能性拡大に繋がるという。なおこの成果は、2018年11月29日~30日に開催されるNTT R&Dフォーラム2018(秋)で出展される予定だ。