自らが英国最大の自動車メーカーであると謳うジャガー・ランドローバーオートモーティブPLC(Jaguar Land Rover Automotive PLC、本社:英国・コベントリー、CEO:ラルフ・スペッツ)は、英国時間の1月10日、全世界で4500人規模の人員削減計画を発表した。但し、この削減対象地は英国内が中心となる見込みだ。(坂上 賢治)
これは同社が予てより計画・実施を公表していた事業革新プログラム「Charge and Accelerate(チャージ&アクセラレティ)」の一環となるもの。
同プログラムは、18か月間で25億ポンド(約3千500億円)のコスト削減とキャッシュフローを改善すること。さらに長期的な戦略的運用効率を実現することにあるのだが、今回の追加策はこれをさらに1段進めるための施策であるという。
計画を1段進めた理由は、先の2018年の4-9月に3億5400万ポンド(約490億円)の損失を計上したことが事業経営に影響した。
昨年は、これを受けて英国バーミンガム近郊のソリハル工場を2週間閉鎖。同じく同地域のキャッスルブロムウィッチ工場での稼働日数を週3回とした。さらにおよそ1000人の人員削減も実行している。
今回、実施を決断した要因は、中国市場に於ける消費意欲減退やディーゼル車の販売減速が背景であり、さらにこれに加えてブレクジットに伴う経営環境の不透明感が拍車を掛けた格好となっている。
実際、同社では当初来る2020年までに全世界規模でおよそ100万台の車両を生産していく予定としていたのだが、最も新しい通期売り上げを見ると、それには届かない60万台弱(前年比4.6%減)の成績となっている。
リストラ策の大半は先の通りで、英国内が中心になって行われ、その規模は全世界で4万2500人を配する同社にとっておよそ1割に相当する規模となる。全世界規模の削減策でその1割が英国内での人員削減となるだけに、英国政府にとって、その影響は計り知れないものとなるだろう。
同社によると具体的には、長期的に持続可能な収益成長を築くべく、よりスリムで、より回復力のある組織とすることを目指すという。そのために世界規模での自社労働力の約4500人削減する。
同施策の実施についてジャガーランドローバーの最高経営責任者であるラルフ・スペッツCEOは、「当社は現在、自動車業界が直面している地政学的な課題や国際的な規制などを要因とする複数の課題に直面し、長期的な成長を実現するための指針を策定した上で同計画を進めています。
今回はそれに沿って、全世界規模で従業員数を約4,500人削減することを目的とした組織改編を行います。これは2018年に退職した1500人に加えて行われる計画です。
なお同施策は英国内を中心に実施され、同施策によりフラットな管理構造を持つスリムで回復力のある組織として生まれ変わることが可能となります。
結果、自社のコスト体質と利益効率を改善することで、当社は長期的成長の青地写真が描くことができるようになります。これにより、企業の将来展望を守り、自動運転技術やコネクテッド技術、車両電動化への継続的投資を可能していく方針です」と話している。
これまでのところ’Charge and Accelerate’プログラムは、2018年段階で5億ポンド(約700億円)以上の改善が達成され、今後に掛けて10億ポンド(約1400億円)以上の改善が実現されることを見込んでいるとする。
またこれらの投資には、今年後半から次世代駆動ユニットのEDUがウルヴァーハンプトン(イングランド中部ウェスト・ミッドランズ州)にあるエンジン製造センターで生産されるという発表内容も含まれている。
次世代EDUはノースウォリックシャーのハムズホール(バーミンガム近郊)に新設された同社のバッテリーアセンブリセンターの組み合わされ、英国全体だけでなく古くからの同社製造の中核となってきたウェスト・ミッドランズ州全体の事業強化にも役立つとしている。
しかし祖父・父・孫と、その多くが過去3世代に亘って自動車生産に携わってきた当地の工場労働者にとっては、状況の低迷に落胆の色が濃い。
但しジャガーランドローバー全体が、全世界的な事業縮小を行っている訳では無く、2018年にはハンガリーのアイルランド共和国と英国のマンチェスターに専門のエンジニアリング拠点への投資を行っており、さらに中国の生産拠点では4000人の人員を抱え、スロバキアでも3000名の従業員を配する最新の自動車製造工場を開設・運用している。