東京地検特捜部は1月11日、日産自動車の前会長カルロス・ゴーン前会長(64)を、私的投資の損失を日産自動車に付け替えさせたとされる事件について会社法違反(特別背任)罪で追起訴した。併せて自身の役員報酬で、直近3年分を過少に記載したとされる事件でも金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)罪で追起訴した。
また東京地検特捜部は、サウジアラビアの知人に対して日産自動車が支出した資金。その他にゴーン前会長の指示で、日産自動車が支出した資金ついても中東のオマーン等の政府当局に捜査共助を要請。今回起訴した以外の資金の流れについても捜査を継続する意向とみられる。
特に中東・オマーンの知人などに機密費から支出した約50億円と見られる資金の支出については、ゴーン前会長自ら子会社の社員に指示していた可能性が浮上。その他にも3社連合の統括会社から一部のルノー取締役に非公表の報酬を支出していた可能性も浮上している。
なお先の私的投資の損失について東京地検特捜部は、平成20年10月に約18億5千万円の評価損を一時的に日産に付け替えた他、損失の信用保証に協力したサウジアラビアの知人側に対して、傘下の中東日産を経由し平成21~24年の4年間で計1470万ドル(当時のレートで約12億8400万円)を支出させたとしている。
一方、役員報酬の過少記載については、日産自動車のグレゴリー・ケリー前代表取締役(62)と共謀し、平成27~29年度の約42億円の報酬を過少に記載したとしてケリー前代表取締役に加えて法人としての日産を金商法違反罪で起訴した。ケリー前代表取締役は「退任後の支払い方法は検討していたが、役員報酬とは関係ない」と供述していた。
昨日に高熱を出して取り調べに応えられずにいるゴーン前会長の身柄拘束は、昨年11月19日に逮捕されてから今日1月11日で通算54日間に及ぶ。このため弁護人は、同日中にも東京地裁に保釈を請求する模様。
これらの起訴の流れを受けて日産自動車は、フランス・パリの住居賃料の支払い停止に続き、ゴーン前会長に対して東京都港区の住居退去を通告。継いで富裕税逃れのため契約していたと見られているオランダ・アムステルダム等の住居賃貸契約の解除も行っていく模様。
併せて日産自動車は法人としてリリースを発表し、このなかで「元代表取締役会長カルロス・ゴーンが会社法違反(特別背任罪)により起訴されました。これに先立ち、当社はカルロス・ゴーン元会長について、同法違反で東京地方検察庁に刑事告訴いたしました。
今般の刑事告訴は、多額の会社資金の不正な支出などを対象とするものですが、かかる行為は会社として到底容認できるものではなく、厳重な処罰を求めるものです。
当社といたしましては、同様の不正な支出の有無等について、引き続き調査を行うこととしております。
また本日、元代表取締役会長カルロス・ゴーン及び元代表取締役グレッグ・ケリーの両名が金融商品取引法違反(虚偽有価証券報告書提出罪)により追起訴されました。併せて、当社につきましても、同法違反により追起訴されました。
当社として、このような事態に至ったことを大変重く受け止めており、改めて関係者の皆様に多大なご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。
当社は、過日設置したガバナンス改善特別委員会における議論・提言を踏まえ、今後、更なるガバナンスの強化に努め、企業情報の適切な開示を含め、コンプライアンスを遵守した経営に努めてまいる所存であります」と結んでいる。