FIAフォーミュラ・ワン世界選手権、第7戦カナダGP(開催地:カナダ・モントリオール、ジル・ビルヌーブ・サーキット<コース全長:4.361km・決勝70周>、開催期間:6月10~12日)の予選セッションが、現地時間6月11日(土曜日)の13時から実施された。
大西洋と北米の五大湖をつなぐセントローレンス川上の人工島に位置するジル・ビルヌーブ・サーキットは、コース全域が平坦であること。路面のグリップ力が低いこと。
さらにコーナー立ち上がりの直後に、サーキットバリアが点在しているため、市街地コースと同じくスロットル・コントロールが難しく、ドライバーにとってはリスクの高いコースである。
勝敗の鍵は、エンジンのピックアップ特性に加え、タイヤ、サスペンション、ブレーキ冷却が握ることになる。
決勝レースで使用するタイヤは、前戦のモナコと同じくウルトラソフト、スーパーソフト、ソフトコンパウンドの3種が用意されており(但し1セットはQ3用・今レースではウルトラソフト)、さらにチームに所属するドライバー達は、各々週末に13セットのタイヤバリエーションから、10セットを自由に選択できる。
但しフリープラクティスで、6セットの返却が義務付けられ、ピレリが指定した3セットはフリー走行で返却できない。
結果、予選前になると各ドライバーの手持ちタイヤは、「ピレリが指定する3セット(但し1セットはQ3用)」に加え、自由選択した4セットとなり、Q1は6セットで臨まなければならず、かつ決勝レースでは、ピレリが指定した残タイヤのうちの1セットの使用が義務づけられることから、意外だが自由度は低い。
つまるところ、決勝レースに向けて、どの新品タイヤを決勝に残すかかが、勝機を掴む大きな要因になる訳だ。
さて迎えた6月11日(土曜日)の午後、現地は、比較的涼しい一週間だったが、天候の変化が気になる時節となった。
加えて、先の通りのコースの性格上、河川からの風の影響を受けて体感温度はさらに低く感じる。予選開始時直前13時の天候は、曇天。コースコンディションは気温15度・湿度74%、路面温度20度となった。
時折、雨粒の存在を感じながらも、大半の出走車両はウルトラソフトコンパウンドのタイヤを履いてコースイン。
当初は、1分13秒台を刻むニコ・ロズベルグ(メルセデス)とセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)の争いとなる。
次第にセッションが進むにつれ、雨粒の影響が拡がり、タイム更新に難航するドライバーが続出するなか、 リオ・ハリアント(マノー)が右リアタイヤをコース脇に接触させたことによりQ1セッションが敢えなく終了。
これによってジョリオン・パーマー(ルノー)、パスカル・ウェーレイン(マノー)、 マーカス・エリクソン(ザウバー)、フェリペ・ナッサー(ザウバー)、ハリアント(マノー)が脱落した。
続くQ2は開始早々、カルロス・サインツ(トロ・ロッソ)が、最終コーナーのウオールに接触。コース全域が、レッドフラッグとなりセッション中断。
再開後、ルイス・ハミルトン(メルセデス)が、1分13秒076で首位。これにニコ・ロズベルグ(メルセデス)が続く。
結果、セルジオ・ペレス(フォース・インディア)、ジェンソン・バトン(マクラーレン)、ダニール・クビアト(トロ・ロッソ)、エステバン・グティエレス(ハース)、ロマン・グロージャン(ハース)、カルロス・サインツ(トロ・ロッソ)が脱落した。
Q3に臨んだのは、ルイス・ハミルトン(メルセデス)、ニコ・ロズベルグ(メルセデス)、セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)、ダニエル・リカルド(レッドブル)、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)、キミ・ライコネン(フェラーリ)、バルテリ・ボッタス(ウィリアムズ)、フェリペ・マッサ(ウィリアムズ)、ニコ・ヒュルケンベルグ(フォース・インディア)、フェルナンド・アロンソ(マクラーレン)となった。
このQ3では、ハミルトンとロズベルグが1分12秒台のワンツー体制。
これにセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)が食らいつき、1分13秒台を叩き出して3番手。但し、以降の大きなポジション変化は起こらず、そのままハミルトンのPPが確定した。
1位:ルイス・ハミルトン (メルセデス)
「他のドライバーと接戦とならずにポールポジションを決める筋書きは、本来臨んでいる内容じゃないが、結果は喜びたい。
ただ、もう少しタイムが削れれば良いと思っていた。コースはカートトラックに似ていて、ブレーキングを遅らせて走りきるドライビングスタイルが合っているのだろう。F1で初勝利した場所でもあるし、そもそもこのコースは自身との相性がいい。
決勝レースは、タイトな争いになる気がしている。昨日のマシンセッティングがフィーリングにマッチしていたので、決勝では昨日の状態で走りたい。
当面のライバルはフェラーリだが、彼らはロングディスタンスで強いから、それに備えてマシンセッティングを詰めていきたい」
2位:ニコ・ロズベルグ (メルセデス)
「ポールポジションを逃してしまったが、フロントローからの決勝スタートはまずまずの結果だろう。
今日は、Q1の当初からルイスが速かった。Q2でギャップを縮めようとしたが、ターン1でロックアップしてミスした。
ただ決勝レースでは、ルイスをオーバーテイクできる機会はあると思う。ここのところ自身では良いスタートが切れているから、スタート順位はあまり気にならない。
明日は天候がどうなるか分からないから、タイヤ戦略で勝ちを得られる可能性もあるかもしれない。カナダはいつも特別なレースだから、決勝レースを愉しみたいと思う」
3位:セバスチャン・ベッテル (フェラーリ)
「フリープラクティスを走った後の状態は良く、ポールポジションを狙っていた。
予選でのクルマの感触も素晴らしかった。予選の最後のラップにはとても満足しているが、トップに迫ることができなくて残念だった。
ターン10の立ち上がりで、早くパワーを掛け過ぎてトラクションを失った可能性がある。それによってストレートへの勢いを失ってしまった。ただ決勝レースではもっとうまくやれる筈だ。
フリープラクティスから、クオリファイに掛けて問題は発生しなかったし、過去2レースで抱えていたトラブルも出なかった。チームは本当に良い仕事をしてくれた。
そもそも、このコースは様々なことが起きるサーキットだし、明日の天気予報もかなりトリッキーだから、それを上手く利用して、ドライビングを愉しんで良い結果を残したい」
以下はマクラーレン・ホンダ陣営の予選終了後のコメント
フェルナンド・アロンソ MP4-31-04
FP3 8番手 1分14.801秒(トップとの差 +0.882秒) 19周
予選
Q1 14番手 1分15.026秒(オプションタイヤ)
Q2 10番手 1分14.260秒(オプションタイヤ)
Q3 10番手 1分14.338秒(オプションタイヤ)
「明日のレースは我々にとって厳しい状況となるだろうが、今日はうれしいサプライズがあった。予選セッションの結果は満足している。
このコースは、今日のようにドライとウエットが入り混じったコンディションになると攻略が難しいサーキットになる。明日は雨が降る可能性があるが、場合によるとそうなった方が我々にとっては好都合となるかもしれない。
我々は、過去1年間でマシンの開発のためにコツコツと仕事を成し遂げてきた。
その結果、Q2で我々はフェラーリからわずか0.4秒差まで詰め寄った。今のポジションは自分たちが期待していた以上かもしれない。
この結果に対してチームの皆にお礼を述べたい。これはチームメンバー全員が自分たちの信念を強固なものにし、モチベーションを上げることにつながるだろう。
明日もアタックする準備はできている。そもそも我々は、今季についてはワールドチャンピオンシップを掛けて戦っている訳ではないから、失うものはなにもない。明日は精一杯のアタックを仕掛けていく」
ジェンソン・バトン MP4-31-03
FP3 13番手 1分15.023秒(トップとの差 +1.104秒) 17周
予選
Q1 10番手 1分14.755秒(オプションタイヤ)
Q2 12番手 1分14.437秒(オプションタイヤ)
「予選順位でトップ10周辺というところが、今の我々のポジションであり、ここ数戦は、それが我々のレース結果だった。
それでも、ここのサーキットでは、モナコほどの競争力は期待していなかったから、今日はポジティブな収穫を得たと思う。
特にフェルナンドは、Q2のバックストレートエンドで強い加速力を得ることができていた。
一方、個人的には同セッションの最後のラップで、自身はそれが得られなかった。当初Q3進出に向け、良い走りをしていたのだが、最終セクターで牽引力が得られず、Q3進出を逃した。
結果、Q2で予選セッションを終えたため、もしも明日のレースがドライコンディションであれば、自身は新品タイヤを履いてスタートする予定だ。それを最大限に活かして、ポイント獲得を目指す。
一方、もしもウエットコンディションであるなら、決勝では慎重に様子を見ていくしかないだろう。
天候次第で非常に混乱した状況になる可能性もあるため、タイヤを上手く使って、正しい戦略を選択を目指したい。これまでもそうした判断では強みを発揮できていたので、明日の決勝を愉しめる要素は沢山あるだろう」
エリック・ブーリエ|McLaren-Honda Racing Director
「フェルナンドは、午後の予選で3戦連続のQ3進出を決めるという、非常にいい仕事をしてくれました。
一方、ジェンソンはQ3進出をわずか0.177秒差で逃し、明日のレースを12番手からスタートします。
両ドライバーともマシンのバランスには満足しており、レースの合間に我々が実施している仕事が、少しずつではあるものの実を結んでいることは明らかです。
特に、Hondaが今回のレースに向けて投入した新しいターボチャージャーは、デプロイメントに関して設計通りの改善が見られています。
また、新しいEssoの燃料はそれだけで1周あたり0.1秒ラップタイムが向上するとされています。ですから、両パートナーに対して感謝するとともに、お祝いの言葉を述べたいと思います。
明日は雨の予報です。ドライコンディションのレースの方がいつも管理しやすいのですが、両ドライバーとも難しい天候をマスターした走りをこれまでに幾度となく見せてくれました。
また、2人ともここでの優勝経験があります。フェルナンドは2006年にドライコンディションで、そしてジェンソンは2011年にウエットコンディションで勝利を収めました。
5年前、ここカナダで豪雨の中、ジェンソンがすばらしい追い上げで勝利を勝ち取ったことは、それを観た人の記憶にいつまでも残っているでしょう。
当然のことながら、明日のレースでMcLaren-Hondaが優勝することはないでしょう。ただ、フェルナンドもジェンソンも、そしてもちろんチームも、いつも通り冷静かつ果敢にレースに臨みます」
長谷川 祐介|本田技術研究所 主席研究員 F1プロジェクト総責任者
「スペインやモナコからはコース特性が大きく異なるこのカナダで、アロンソ選手が3戦連続のQ3進出を果たし、非常に力強い結果となりました。
バトン選手は残念ながらQ3進出を逃しましたが、明日のレースのスタートではタイヤ選択が自由になることを戦略的に活かしたいと思います。
ここはブレーキングが非常に重要なサーキットであることから、明日のレースは耐久戦になりそうです。ただ、レースでは新しいターボの効果に期待できることと、週末を通して車体バランスが非常に良いので、チームとして前向きに臨みます」
カナダGP 2016予選結果
順位_ドライバー・No./チーム/タイム/最終セッション
– 1_ルイス・ハミルトン・44/メルセデス/1’12.812/Q3
– 2_ニコ・ロズベルグ・6/メルセデス/1’12.874/Q3
– 3_セバスチャン・ベッテル・5/フェラーリ/1’12.990/Q3
– 4_ダニエル・リカルド・3/レッドブル/1’13.166/Q3
– 5_マックス・フェルスタッペン・33/レッドブル/1’13.414/Q3
– 6_キミ・ライコネン・7/フェラーリ/1’13.579/Q3
– 7_バルテリ・ボッタス・77/ウィリアムズ/1’13.670/Q3
– 8_フェリペ・マッサ・19/ウィリアムズ 1’13.769/Q3
– 9_ニコ・ヒュルケンベルグ・27/フォース・インディア/1’13.952/Q3
– 10_フェルナンド・アロンソ・14/マクラーレン/1’14.338/Q3
– 11_セルジオ・ペレス・11/フォース・インディア/1’14.317/Q2
– 12_ジェンソン・バトン・22/マクラーレン/1’14.437/Q2
– 13_ダニール・クビアト・26/トロ・ロッソ/1’14.457/Q2
– 14_エステバン・グティエレス・21/ハース/1’14.571/Q2
– 15_ロマン・グロージャン・8/ハース/1’14.803/Q2
– 16_カルロス・サインツ・55/トロ・ロッソ/1’21.956/Q2
– 17_ジョリオン・パーマー・30/ルノー/1’15.459/Q1
– 18_パスカル・ウェーレイン・94/マノー/1’15.599/Q1
– 19_マーカス・エリクソン・9/ザウバー/1’15.635/Q1
– 20_フェリペ・ナッサー・12/ザウバー/1’16.663/Q1
– 21_リオ・ハリアント・88/マノー/1’17.052//Q1
– 22_ケビン・マグヌッセン・20/ルノー/-/Q1