FIAフォーミュラ・ワン世界選手権、第7戦カナダGP(開催地:カナダ・モントリオール、ジル・ビルヌーブ・サーキット<コース全長:4.361km・決勝70周>、開催期間:6月10~12日)の決勝レースが、現地時間6月12日(日曜日)の14時から実施された。
予選に於いて、ルイス・ハミルトンがPP、2番手ニコ・ロズベルグと、定番のメルセデスの1・2体制でスタートした今レースだった。
しかし蓋を開けてみると、優勝したのはハミルトン(メルセデス)であるものの、2位セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)、3位バルテリ・ボッタス(ウィリアムズ)、4位マックス・フェルスタッペン(レッドブル)と、上位に異なるコンストラクターが占めると云う、昨今では、希に見る結果となった。
レーススタート時のコースコンディションは、予選と同じく曇天の下、気温12度・湿度56%と若干肌寒く、路面温度24度。
グリッドは、先の通りでメルセデス陣営が先頭。2列目は、セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)と、ダニエル・リカルド(レッドブル)。
3列目は、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)と、キミ・ライコネン(フェラーリ)。トップから3番手までの予選タイムは拮抗した形での布陣となった。
一部に降格処分となったドライバーも居るが、上位陣営のグリッド位置は、ほぼ予選結果の通りとなっている。
各車の装着タイヤは、11番手セルジオ・ペレス(フォース・インディア)がソフトコンパウンド。
以下12番手のジェンソン・バトン(マクラーレン)スーパーソフト。19番手のリオ・ハリアント(マノー)スーパーソフト。22番手ケビン・マグヌッセン(ルノー)ソフト。
これ以外の車両はウルトラソフトコンパウンドのタイヤを履いてのスタートとなった。
シグナルが切り替わり、ターン1を最も速くクリアしたのは、2列目スタートのセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)。
ハミルトン(メルセデス)は2番手に下がり、予選2番手のロズベルグ(メルセデス)はトラックエリアから押し出されて後方集団に飲み込まれる。
オープニングラップを帰って来た時点での序列は、ベッテル(フェラーリ)、ハミルトン(メルセデス)、フェルスタッペン(レッドブル)、リカルド(レッドブル)、キミ・ライコネン(フェラーリ)、ボッタス(ウィリアムズ)、フェリペ・マッサ(ウィリアムズ)、フェルナンド・アロンソ(マクラーレン)、ロズベルグ(メルセデス)、ニコ・ヒュルケンベルグ(フォース・インディア)となった。
2番手に脱落したハミルトン(メルセデス)は、ベッテルを追うが、接近戦に持ち込むには時間が掛かる展開。アロンソは徐々に脱落し始める。
11周目にジェンソン・バトン(マクラーレン)が、エンジントラブルでストップ。コース全域でフルコースコーションとなる。
この機に、フェラーリ陣営は装着タイヤをスーパーソフトに変更する。その後、ジョリオン・パーマー(ルノー)がマシントラブルでリタイヤ。
25周目のハミルトン(メルセデス)を筆頭に、この間、各車タイヤ交換を実施。
この時点での序列は、ベッテル(フェラーリ)、ハミルトン(メルセデス)、フェルスタッペン(レッドブル)、ライコネン(フェラーリ)、リカルド(レッドブル)、ボッタス(ウイリアムズ)、ロズベルグ(メルセデス)、セルジオ・ペレス(フォース・インディア)、マッサ(ウイリアムズ)、ヒュルケンベルグ(フォース・インディア)となる。
フェラーリ陣営の2台は、2回目のピットストップでソフトコンパウンドを選択。
一方のハミルトンは、1回目のピットストップ以降はコース上に留まって、予選結果に並ぶ首位に返り咲く。ボッタス(ウイリアムズ)も同じ戦略を採り3番手に浮上した。後方集団のアロンソも1ストップ策を採り上位集団を追い始める。
ハミルトンに抜かれて、2位に脱落したベッテル(フェラーリ)は徐々に後退。
一時期4番手に浮上していたロズベルグ(メルセデス)は、タイヤからのエア漏れ発生で、51周目にピットインして再度後方に下がってしまう。入賞圏内に居たマッサ(ウィリアムズ)は、マシントラブルでリタイヤを喫する。
結果、トップを走るハミルトン(メルセデス)が1ストップ作戦を成功させ、首位でチェッカーフラッグを潜って前戦モナコに続いて2連勝。
2位は2ストップのベッテル(フェラーリ)、3位に1ストップ策を採ったボッタス(ウイリアムズ)が入る。
そして最後のドラマは最終周の最終シケイン。暫定5番手を走っていたロズベルグ(メルセデス)が、最終シケインでフェルスタッペン(レッドブル)をかわす。
しかしロズベルグのマシンが立ち上がりでスピンしてしまい、フェルスタッペンが先行して4位。後続が迫る前に、マシンを立て直したロズベルグは5位に終わった。
さらにライコネン(フェラーリ)、リカルド(レッドブル)、ヒュルケンベルグ(フォース・インディア)、カルロス・サインツ(トロ・ロッソ)、セルジオ・ペレス(フォース・インディア)と続き、1ストップでレースを走り切ったアロンソが11位となっている。
1位ルイス・ハミルトン(メルセデス)
「今日のレースは最悪のスタートとなった。原因は分かっていないが、クラッチがオーバーヒートしていたのかもしれない。
当初、セバスチャンとニコ(ロズベルグ)の調子が良いようだったが、こっちはタイヤは冷えていたし、アンダーステアも酷かった。
ただスタート直後の接触で、自身とニコがマシンにダメージを負わなかったことは本当に良かったと思う。
その後はベッテルを追いかけるのに必死だった。後半に向けてマシンの感触が帰って来て、追い上げることができた。マシンのセットアップ作業に苦労したエンジニアとメカニックに感謝したい」
2位セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)
「総じて良い週末だったが、ルイスのマシンにスピードがあったので、タイヤが温まるまでルイスを抑えておくのはかなり大変な仕事だった。
しかもターン1に、2羽のカモメが居たから、思わずベストなレーシングラインを外してしまった。レースの真っ只中なのに、カモメのカップルがレーシングトラックのライン上に、まったりと佇んでいたのさ。
でもルイスのヤツは、そんな事は全く気にしないから、そこで0.5秒ぐらいタイムを縮められてしまっただろう。僕は動物のためにブレーキを踏むのに、ルイスは踏まなかった冷たいヤツさ。
一方で僕は、コース上のラインを慎重に見定めていたから驚いてしまって、図らずもマシンをロックアップさせてしまった。僕は動物にも、優しく親切な人だからね。
しかしあの2羽のカモメ達には、本当には撹乱されてしまったよ。超高速で赤いフェラーリがターン1に向けて突っ込んできているのに、のんびり構えているんだから。
ただレース自体は心から愉しめたと思う。けれどもレース終盤には膠着状態になって、スタート前に考えていた結果を得ることはできなかった。今日の用意されたタイヤの仕上がりがとても良かったので、ルイスはタイヤに助けられたのだろう。
3位バルテリ・ボッタス(ウィリアムズ)
「今日の結果には満足している。チームとして、良い戦略、良いピットストップ等の最高のフォーメーションができた。
マシンの状態も良かった。今日は自身にとってもチームにとってもベストレースのひとつになった。誰もが素晴らしい仕事をしたチームの全員に感謝したい。
それとセバスチャンが言ったように、今日はタイヤの状態は本当に良かった。結果、1ストップ戦略が成功して、チームに自信を与えることができたと思う。
今日のレースは、グランプリチームのなかで我々が強いチームのひとつであることを示している。これは本当にチームのために良いことだ。次のレースに向けて大きなモチベーションの向上につながったろう。
以下はマクラーレン・ホンダ陣営の決勝終了後のコメントとなる。
フェルナンド・アロンソ MP4-31-04
スタート 10番手
レース結果 11位
ファステストラップ 1分17.307秒 67周目(トップとの差 +1.708秒、13番手)
ピットストップ 1回: 17周目(ピットストップ時間 8.00秒)[オプション→バックアップ]
「今日は厳しいレースとなった。我々には競争力を示すここ一発の速さがなかった。
最後の数周は、新品タイヤを履いて走行できないかどうかをチームに確認したが、リスクが高すぎる選択肢だったのだろう。
その時点では11番手であり、前方でなにかアクシデントが起これば、ポイントを獲得できる位置にいたからね。
2ストップ作戦を実施した他チームのマシンは、私よりも速く走っていたが、それでも1ストップでタイヤ交換を行った後50周以上走ることができた。
今日は少し不運だった。我々がライバルチームと競い合うには、雨かセーフティーカーが必要だった。
しかし最終的に、我々の採った戦略は正しかったと思う。これが最も速く走ってチェッカーフラッグを受ける方法だった。いずれにしても、我々は、次戦でマシンの速さを改善するために、懸命に取り組んでいく」
ジェンソン・バトン MP4-31-03
スタート 12番手
レース結果 DNF ※9周目でリタイア
ファステストラップ 1分19.456秒 5周目(トップとの差 +3.857秒、21番手)
ピットストップ – [プライムタイヤでスタート]
「『端末に不具合がある』とチームに無線で伝えた後にリアビューミラーを見たところ、かなりの量の煙と火花が映っていた。
事前の警告はなにもなく、ヘアピンから立ち上がったところで、突然マシンにトラブルが発生した。エンジンはまだ動いていたが、マシンを停止させた。
リタイアする結果になったのは、本当に残念だ。この時点で私のマシンは燃料を大量にセーブしており、毎周DRSも作動させていたこともあって、燃料を効率的に使うことができていた。それによって、レース終盤には大きな違いが生まれていたはずだった。
レース終盤に向けて、燃料を大量にセーブしたにもかかわらず、リタイアしてしまった。ただ、こういうことは本当によくあることだ」
エリック・ブーリエ|McLaren-Honda Racing Director
「率直に言って、今日という一日は忘れなければなりません。昨日の予選ではまずまずの位置につけ、午後のレースでは両ドライバーともそこそこいいスタートを切り、序盤は2人とも堅実な走りをみせてくれていました。
しかしながら、ジェンソンはわずか9周でリタイアを余儀なくさせられました。不具合の原因については、今も調査中です。
その後、フェルナンドはできる限りの走りをしたものの、我々が半分期待していた雨が結局は降らなかったため、11位で完走するのが精一杯でした。
当然のことながら、今回のカナダGPでさらなるワールドチャンピオンシップポイントを獲得できなかったことは残念です。
ただ、そんな残念な結果であったとしても、F1では常に次のレースがすぐに待ち構えているのです。実際、今回は次戦がわずか数日後に開催されます。
ですから、我々は(次戦が開催される)バクーの新しいサーキットでの挑戦に、既に目を向けています。次戦では、今日のここモントリオールでの走りよりも、いいレースができるよう願っています。
最後になりましたが、今日未明にフロリダ州オーランドで発生した恐ろしい残虐行為の被害者の方々およびそのご家族に対して、McLaren-Hondaを代表して心からお悔やみ申し上げます」
長谷川 祐介|(株)本田技術研究所 主席研究員 F1プロジェクト総責任者
「このパワーサーキットでは、波乱なしではポイント圏内でフィニッシュできないというのが現実的な結果であり、フェルナンドは、バックアップタイヤで非常に長いスティントを走りチャンスを生み出そうとしましたが、ポイント獲得には一歩届かず、残念な結果となりました。
レースペースを上げるためにさらなるパフォーマンスの改善が必要と思われます。
現状ではICEのデータには異常は確認できていませんが、ジェンソンは、レース初期において駆動系と思われるトラブルでマシンがストップしてしまいました。ガレージにマシンが戻り次第、原因解析を行う予定です」
F1第7戦カナダGPリザルト
順位_ポイント/ドライバー/チーム/レースタイム/差
1_ルイス・ハミルトン/メルセデス/1:31’05.296
2_セバスチャン・ベッテル/フェラーリ/1:31’10.307/+5.011
3_バルテリ・ボッタス/ウィリアムズ/1:31’51.718/+46.422
4_マックス・フェルスタッペン/レッドブル/1:31’58.316/+53.020
5_ニコ・ロズベルグ/メルセデス/1:32’07.389/+1’02.093
6_キミ・ライコネン/フェラーリ/1:32’08.313/+1’03.017
7_ダニエル・リカルド/レッドブル/1:32’08.930/+1’03.634
8_ニコ・ヒュルケンベルグ/フォース・インディア/+1周
9_カルロス・サインツ/トロ・ロッソ/+1周
10_セルジオ・ペレス/フォース・インディア/+1周
11_フェルナンド・アロンソ/マクラーレン/+1周
12_ダニール・クビアト/トロ・ロッソ/+1周
13_エステバン・グティエレス/ハース/+2周
14_ロマン・グロージャン/ハース/+2周
15_マーカス・エリクソン/ザウバー/+2周
16_ケビン・マグヌッセン/ルノー/+2周
17_パスカル・ウェーレイン/マノー/+2周
18_フェリペ・ナッサー/ザウバー/+2周
19_リオ・ハリアント/マノー/+2周
—_19/フェリペ・マッサ/ウィリアムズ/リタイア
—_30/ジョリオン・パーマー/ルノー/リタイア
—_22/ジェンソン・バトン/マクラーレン/リタイア