調査テーマは、産業・技術・市場。対象国は、独・仏・伊・米・日・中・韓の7ヵ国
ローランド・ベルガー pvt. ltd(roland berger strategy consultants 、本社:独ミュンヘン、CEO:マーティン C. ヴィッティヒ)は、電気自動車*を生産する主要7カ国を対象とした調査「E-モビリティ・インデックス( “E-mobility index for Q1 2017″)」を、独・自動車研究機関のfka(Forschungsgesellschaft Kraftfahrwesen mbH Aachen/アーヘン工科大学が企業との共同研究を目的に設立した非営利企業)と共同発表した。
この調査は、「産業」、「技術」、「市場」という3つの指標を用い、各国(ドイツ、フランス、イタリア、米国、日本、中国、韓国)の競争力を比較したもの。結果、今調査で以下のことが明らかとなった。
- 「産業」では中国、「技術」ではドイツとフランスが首位。「市場」では、フランス、中国、米国、ドイツ、日本がトップに並ぶ。また総合評価では日本が首位に立っている。
- 全ての対象国が、自動車の電動化に注力していることが明らかになった。
- E-モビリティの市場を推進するのは、規制強化が進む世界の主要都市であり、車両の「シェアード」の進化の度合が鍵となる。
- 電動車のラインナップは十分充実している。今後は消費者にとっての充電のし易さと充電時間の短縮を実現することが求められる。
- 電池製造向けの原材料の確保は、政治の状況を強く受けている状況にある。
今回調査「E-mobility Index for Q1 2017」に因ると、世界の各地域に於いて、E-モビリティ市場が進化を見せる推進力は、大都市圏であることが明らかとなった。
先進各国で進む規制措置の導入。内燃エンジンの全面禁止を検討する国家も存在する
世界の大都市では、既に規制措置の導入が計画されており、ロンドンやパリ、メキシコシティはディーゼル及びガソリンエンジンの禁止を予定している。
またノルウェーでは、2025年より内燃エンジンの全面禁止を検討している。これについては調査パートナーのトーマス・シュリック氏が、「政府の投資継続は不可欠だ。また、投資は研究開発に加え、充電インフラ拡大への助成金、販売時の補助金まで拡張する必要がある」と述べている。
また、東京オフィスの貝瀬斉氏が捕捉として、「電動車両を前提としたシェアードモビリティサービスが需要密度の高い都市部で広がることも、大都市圏での電動化の推進要因となる」と説明している。
ちなみに気になる電気自動車のシェアだが、各国市場で継続的に拡大しているものの、数値的には2%以下と低い。
なかでも技術要件の決定に重要な役割を果たしているのは欧州であり、特にフランスとドイツは、技術指標の数値で日本や韓国を上回り首位を占めている。
「技術」に於いて欧州が優位である点について、調査パートナーのウォルフガング・ベルンハルト氏は、「技術指標におけるドイツの優位性は、販売台数の増加、および自動車メーカーによる車種の拡大に起因する。
ドイツの自動車メーカーは比較的安定した価格を維持しつつ、電動車種を大幅に増やしている。
これに対しフランスのメーカーは、車種を限定する代わりに、コンパクトカーの分野で手頃な価格の電気自動車を提供することに注力しており、コストパフォーマンスの面ではフランスがフロントランナーである」と話している。
大都市における規制措置の導入と併せ、交換用の電池の価格がE-モビリティの浸透を大きく左右する
fkaのコンサルタントであるアレクサンダー・ブッセ氏は、「大都市における規制措置の導入と併せ、交換用の電池の価格がE-モビリティの浸透を大きく左右するとしている。
市場分析の結果、全ての国が方向性の違いこそあれ、自動車の電動化に注力していることが明白となった。
次世代電池の導入に伴うリチウムイオン電池の価格下落により、自動車メーカーは電動車種を増やし、中期的にはこれに合わせた車種のモデルミックスが進行する」と予測する。
ただそうしたなかで、自動車メーカーが直面する問題の一つが、製造に不可欠な原材料であるリチウム、ニッケル、マンガン、コバルト、グラファイトとその供給国との関係である。
全世界で使用するグラファイトの95%は、中国で発掘されており、世界のコバルト需要量の半分はコンゴが供給している。
スチール精製に必要なマンガンは、世界の供給量の4分の1が南アフリカから、リチウムはチリとオーストラリアが3分の1ずつを供給する。また精製グラファイトは韓国と日本が大部分を供給している。
こうした原材料の調達と電池生産は、政治の影響を強く受ける状況下にある。
中国が、電池生産でアメリカや日本を抑え、業界首位に君臨する理由は資源の国内優遇にある
先のベルンハルト氏は、中国の状況について「中国のE-モビリティ市場向けリチウムイオン電池の90%以上は同国内で生産されている。
海外の電池メーカーが中国国内で生産認可を受けることすら不可能であるのに対し、国内メーカーが国から補助金を受給している現状が大きく影響した結果、市場では中国の電池メーカーが首位を占め、世界の電池生産でも首位を独占している。
また、こうした事実は中国がアメリカや日本を抑え、業界指標の首位に位置する理由ともなっている」と語った。
実際、データに因ると、中国では電気自動車の売上が前年比2倍以上に拡大したが、これは中国を2位に押し上げる一因となった。
また、フランスとドイツでも電気自動車の売上は前年比で約50%拡大している。しかしながら全体では、2016年の市場シェアにおける電気自動車が1%を超えたのは中国とフランスの2か国に限られる。
同調査では、これでは不十分であると意味づけており、2021年に予定されているCO2削減目標を満たすには、全体での市場シェアを大幅に拡大する必要があるとする。
その実現に向け、自動車メーカーは購買者に向けて電気自動車の魅力を強く訴えていくことが重要になると云う。
車種のラインナップは既に十分充実している。今後、消費者にとっての充電のし易さと充電時間の短縮を実現していくことが求められる。
そのためにも包括的かつ迅速な充電ネットワークを構築することが必要だ」と結論づけている。
ローランド・ベルガーについて
ローランド・ベルガーは、1967年にドイツ・ミュンヘンで創設、現在世界で36カ国50オフィスに約 2,400名のプロフェッショナルスタッフを擁する欧州系最大の経営コンサルティング会社。
日本では1991年の設立以来、実効性を備えた戦略策定により目に見える結果を出すコンサルティングサービスを提供している。