世界最大級のソーラーカーレース「Bridgestone World Solar Challenge(BWSC/豪州)」で、2009年・2011年に覇者となった東海大学のキャンパスライフサポートセンター ソーラーカーチームは、再び栄冠を奪還するべく6月16日、東海大学湘南キャンパス(神奈川県平塚市に)に報道陣を募り「Bridgestone World Solar Challenge 2025」の参戦体制発表会を開催した。
ちなみにBWSCは、1987年の初開催からコロナ禍を除いて2年に1度開催してきた歴史を持ち、今大会で16回目を迎える誰もが認める太陽光のみを動力源に競われるソーラーカーレースの国際大会だ。
レース日程は、車検などの準備工程を含めると、ほぼ2週間近くのスケジュールが敷かれ、オーストラリア大陸の北部の都市ダーウィンから南部のアデレードまでの約3000kmを縦走する。成績は累計の走行時間を以て競われる。
例えは今年度は、オランダ・デルフト工科大学をはじめ、トゥウェンテ大学(オランダ)、ミシガン大学(アメリカ)、ルーヴェン・カトリック大学(ベルギー)など18か国から37チームが参加(メインクラスとなるチャレンジャークラスは29チーム/日本国内からは東海大学の他に、工学院大学、和歌山大学、大阪工業大学が参戦を表明している)する。
開幕は、8月18日の静的車検から開始。レースそのものは8月24日にダーウィンから開幕。アデレードでのゴールは8月28日、8月31日には表彰式が催される流れだ。
そうした国際競技に挑む同チームは、ものづくりの楽しさや素晴らしさを伝えるべく学部・学年の枠を越えた学生が集結。
ソーラーカーチームの運営・管理に始まり、レースへの挑戦に係る企画立案、車両設計・開発、製作工程からBWSCへのエントリーのみならず、レース外のイベント参加や社会奉仕活動にも積極的に取り組むなど活動の全域に亘り、学生達の自主的な活動を介してマネジメントされてきた。
その結果、先の通り直近のBWSCだけでも2009年・2011年に2連覇を達成。2013年は2位、2015年は3位、2017年は4位、2019年は2位、2023年5位という成績を残した。
今年の東海大学は、栄冠奪還に向けて製作された2025年仕様の新型ソーラーカー「Tokai Challenger」を開発・製作。
そのソーラーカーのステアリングを握るドライバー5名をはじめ、各パートのスタッフなどのメンバー31名(内訳、学生19名、教員3名、職員1名、特別アドバイザー8名)が決まるなどの参戦体制が整った。
そこで東海大学は6月16日、「Bridgestone World Solar Challenge 2025」の参戦体制発表会を実施。報道陣に向けて今年度の参戦体制を発表した他、先の新型ソーラーカー「Tokai Challenger」の試走がキャンパス内の中央通りで行われた。
なお今後の日程は国内でのテスト走行及び車両の調整を重ねた7月28日(月)に先発隊が日本を出発。現地で車両整備を行った後に今年の大会に臨む。
豪州のソーラーカーレースに参戦するメンバーは、東海大学内の参戦チームだけに留まらない。
この間、日本国内に於いても衛星画像処理チーム、情報支援チーム、広報支援チームなどの別働隊のチームの面々が複数体制を敷き、支援メンバーとしての日本国内での活動を続けていく。
当日の発表会では、冒頭に長年に亘りソーラーカーチームの監督を務めてきた東海大学 学長の木村英樹氏が登壇。
監督を務めてきた経緯から優勝する難しさは承知している。そうしたなかで東海大学の学長としては、チャレンジすることの重要さ念頭に置き学生たちを応援したい。そうした気概を持って挑戦して貰えれば嬉しいと学生達へのエールを贈った。
続いてソーラーカーチームの総監督を務める佐川耕平氏(工学部 機械システム工学科 准教授)が、開催概要を皮切りにBWSCに挑戦する趣旨を説明した。
加えて開催概要を皮切りにチーム体制の説明を行った。壇上で佐川総監督は、参戦目的について未来のカーボンニュートラル社会の実現で期待されている太陽光発電の技術革新に貢献すること。
ソーラーカーレースで培ってきた技術を社会に活かしていくこと。再生可能エネルギーと次世代モビリティの可能性を追求することで、その成果を、メインスポンサーの東レ、東レ・カーボンマジック、ブリヂストンなど多数の協賛企業を筆頭とする社会に還元することだと説明。
その副産物として協賛企業らとの産学連携体制を配して2011年以来のBWSCの覇者奪還を目指すと語った。
続いてソーラーカーチームの広報班リーダーの鬼頭優菜氏(経営学部 経営学科 3年次生)が、2025年仕様の新型Tokai Challengerの技術概要を説明した。
ちなみに2025年仕様のソーラーカーTokai Challengerの仕様は、前回大会の2023年モデルと同じく前2輪、後1輪のモノハル(単胴船)型を採用している。
競合の一部では、より安定感を求めたカタマラン(双胴船)型を採用する車両もあるのだが、東海大学では運動性を求めた結果だという。
また車両レギュレーションで車体サイズの規定が拡大されていることから(全長5000mm×全幅2200mm×全高1600mmから5800mm×2300mm×1650mmへ)、これに併せて車体を拡大しソーラーパネルの搭載面積を4平方mから6平方mに広げた。
他にも車体前後のオーバーハングをホイールベースの60%以内に収める規定が追加されたことを踏まえてロングホイールベース化、フロントオーバーハング1200mm、ホイールベース2900mm、リアオーバーハング1680mmとした。
但し搭載バッテリーは、ソーラーパネルの面積に合わせて拡大されている訳ではなく最大容量が11MJ(約3kWh)に統一されている。
従って天候の変化などによりエネルギーマネジメントでは厳しい管理体制が求められる。そうした意味では、学内の「情報技術センター」から得られる気象衛星「ひまわり」からの気象データが、より一層重要になるという。
この他、今大会もBWSCのタイトルスポンサーはブリヂストンが務めるが、使用タイヤはブリヂストンタイヤのワンメイク体制ではなくなり、参戦チームがタイヤメーカーを選択装着することが可能となっている。
今大会でブリヂストンは、33チームに競技用タイヤ「ENLITEN」を供給する。なお2015年からタイヤ供給を受けている東海大学チームは2019年からは開発パートナーとなっている。
最後に今季のレースは、開催時期が南半球では冬期にあたる8月にスケジュール変更された。この結果、例年は初夏の10月に開催されてきた同大会は日射量が減少、平均気温も低いことから過酷なコンディション下のレースになると結んでいた。
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遠征メンバー(敬称略)
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監 督:
佐川 耕平(本学工学部機械システム工学科 准教授)
木村 英樹(本学工学部機械システム工学科 教授)
福田 紘大(本学工学部航空宇宙学科航空宇宙学専攻 教授)
チームリーダー:熊林 楽 (本学工学部機械工学科4年)
特別アドバイザー:池上 敦哉(ヤマハ発動機)など8 名
ドライバー:( 予 定 )
小平 苑子(本学大学院工学研究科機械工学専攻修士 1 年)
二ノ宮 孝仁(本学情報理工学部情報科学科4 年)
佐川 耕平(本学工学部機械システム工学科 准教授)
Sidd Bikkannavar(NASA Jet Propulsion Laboratory)
伊坪 岳陽(株式会社 SUBARU)
コーディネーター:原口 直也(本学学長室国際担当)
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今後のスケジュール(予定)
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7月28日(月): 先発隊/日本・羽田 出発
7月29日(火):先発隊/オーストラリア・メルボルン 到着
8月3日(日) :ソーラーカー搬送(メルボルン出発)
8月7日(木):本隊/日本・羽田 出発
8月8日(金) :
本隊/オーストラリア・ダーウィン到着
先発隊と後発隊/合流(ダーウィン)
8月9日(土)~22 日(金):
ソーラーカー整備・サポートカー装備装着
※車検:8 月 18 日(月)~23 日(土)
8月23日(土): レース予選(スタート順位確定)
8月24日(日) :レース開始(スタート地点ダーウィン)
8月25日(月) :レース2 日目
8月26日(火) :レース3 日目
8月27日(水) :レース4 日目
8月28日(木) :レース5 日目(⇒ゴール予定:アデレード)
8月29日(金)~30 日(土):
ソーラーカー展示対応・サポートカー清掃、荷物整理作業
8月31日(日) :表彰式
9月1日(月):本隊/オーストラリア・シドニー 出発
9月1日(火):本隊/日本・羽田 到着
9月4日(木):先発隊/オーストラリア・シドニー 出発、日本・羽田 到着
9月4日(金) :先発隊/日本・羽田 到着
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「Tokai Challenger」の諸元
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全長 :5,780mm
全幅 :1,540mm
全高 :1,010mm
車両重量 :150kg(推定)
トレッド :850mm
ホイールベース :2,900mm
太陽光のみの巡航速度 :90km/h
最高速度 :120km/h(レース設定) 、150km/h(理論値)
太陽電池 :
SunPower MAXEON™ GEN Ⅶ SOLAR CELLS
セル変換効率25.4% 出力 1523W 太陽電池面積 5.996 ㎡
MPPT (※)およびPVバランサー:
産業技術総合研究所+小山工業高等専門学校+マルヒラ+東海大学
昇降圧型MPPT(*)変換効率 98.5% 系統数 20
PV バランサー 系統数 8
モーター :
ミツバ ブラシレスDC ダイレクトドライブモーター総合変換効率98%
ジェイテクト セラミックボールベアリング
ボディ材質 :
東レ 炭素繊維トレカ®
東レ・カーボンマジック 炭素繊維強化プラスチック(CFRP)ボディ
タイヤ :ブリヂストン ENLITEN 95/80 R16 3 本
サスペンション :
フロント/ダブルウィッシュボーン
リア/ダブルトレーリングアーム
カヤバモーターサイクルサスペンション スプリング&ショックアブソーバー
ブレーキ :油圧ディスク& 回生ブレーキ
(*)MPPT:Maximum Power Point Tracker(最大電力点追従回路)の略