「技術の追求」を実証する世界的な舞台としてF1に参入
アウディは、F1初参戦の115日前にあたる11先12日(独インゴルシュタット/ミュンヘン発)、ミュンヘンのブランドエクスペリエンスセンターで、新たなF1マシン「アウディR26コンセプト」のデザインを披露しモータースポーツの頂点に挑む同社の強い意志を垣間見せた。
その壇上に立ったアウディCEOのゲルノット・デルナー氏は、「モータースポーツの頂点に参入することで、アウディは明確かつ野心的なメッセージを発信していきます。
これは、アウディの新たな章の始まりです。F1への参戦は、よりスリムで、より速く、そしてより革新的なアウディへと変革するための触媒となるでしょう。
そもそも私たちはただ単にF1に参戦する目的を果たすだけでなく、新たなステージでの勝利を目指しています。もちろん我々は一夜にしてF1のトップチームになれないことは理解しています。
ポディウムの頂点に至るまでの膨大な時間、それを乗り越えて行く粘り強さ、そして未来への飽くなき探求心が不可欠です。しかしそれでも我々は来たる2030年までに世界選手権タイトル獲得を目指して挑んでいきます」と語り掛けた。
更にアウディのチーフクリエイティブオフィサーを務めるマッシモ・フラシェラ氏は、「今回、我々が発表したアウディR26コンセプトは、今後目指していくべき明確なメッセージを示しており、1月に発表されるブランド初のF1レースカーのカラースキームとデザインの先駆けとなるものです。
このビジュアルアイデンティティは、最近導入されたデザイン哲学と、その4つのデザイン原則(クリア、テクニカル、インテリジェント、エモーショナル)に基づいています。
私たちは、組織のあらゆる側面を統合する統一的なデザイン言語を導入しています。これはF1プロジェクトに於いて、将来的にF1チームとアウディ全体に展開される新しいブランドアイデンティティの先駆けとなるものです。
つまりR26コンセプトは、アウディブランドの新たなビジュアル・アイデンティティを体現した最初のモデルのひとつなのです。
精密な幾何学的カットによって定義されたミニマルなグラフィック面は、レーシングカーのジオメトリーとシームレスに融合しています。
またカラーパレットには、チタン、カーボンブラック、そして新たに導入されたアウディレッドが採用されています。このアイデンティティの一部として、アウディはF1での存在感を強調するために、赤いリングを随所に採用しています」とそのデザイン指針を説明した。
そもそもF1プロジェクトは、アウディにとって戦略的フラッグシップと呼ぶべきもので、自社ブランドの技術的優位、文化と起業家精神の再醸成を視野に据えたもの。
幸い2026年からF1は、近年の全チームの車両開発コストが際限なく上限していったことにより、予算上限を課せられる。これを前提とすると、今後のF1の世界的な展開は、強力なブランド露出機会とスポンサーシップの機会を踏まえるとアウディにとって魅力的なものに映ったようだ。
実際、アウディでは「F1は数十年にわたり世界的に確立されたスポーツプラットフォームであり、8億2000万人以上のファンを擁する世界で最も人気のあるスポーツシリーズです。
2024年には、約16億人のテレビ視聴者がレースを視聴しました。F1チームの財務評価額は数十億ドル規模です。
将来のアウディF1チームは、既に3つのグローバル企業(アディダス、bp、そして将来のタイトルパートナーとなるRevolut)をパートナーとして迎えており、今後のアウディF1の支援に大きな関心が寄せられています。
アウディはF1参戦にあたり、今年初めにスイスのザウバーグループを完全買収し、カタールの政府系ファンドを投資家として迎え入れる条件を整えました。
アウディF1プロジェクトの指揮を執るのは、元フェラーリチーム代表のマッティア・ビノットとジョナサン・ウィートリーという経験豊富なF1マネージャー2名で、アウディCEOのゲルノット・デルナーに直属しています。
ドライバーに関しては、経験豊富なニコ・ヒュルケンベルグ(ドイツ)と若き才能ガブリエル・ボルトレート(ブラジル)という、経験と若さを兼ね備えたチームを擁しています」と自社の参戦体制について自信を見せている。
ちなみにアウディは2022年春より、ドイツ国内でF1チームが唯一活動する拠点であるノイブルク アン デア ドナウで、F1用パワーユニットの開発に取り組んできた。
このパワーユニットは、排気量1.6リッター、ターボチャージャー付きV6内燃エンジン(ICE)、エネルギー貯蔵(ES)、電動モータージェネレーターユニット(MGU-K)、電子制御ユニット(CU-K)を含むエネルギー回生システム(ERS)で構成されている。
F1パワートレインの新しい技術規則は、新しいハイブリッドコンセプトによる市販車との関連性の向上に重点を置いており、電動モーターの出力は3倍になり、将来的には内燃エンジンと同等のレベルになる予定で、2026年からは持続可能な燃料で駆動される。
こうして指針に沿ってアウディは2022年から、この開発において英国のbp社と独占的に協力してきた。
但しレギュレーションにより、新しいパワートレインをサーキットでテストできるのは2026年初頭までとされているため、現在はバーチャルシミュレーションとデジタル開発ツールを用いて開発が続けられている。
そうしたなかでもサーキットで使用される最初のパワーユニットは既に完成しており、12月からノイブルク・アン・デア・ドナウから各拠点へ出荷される予定という。後は2026年1月に開催される公式チームローンチイベントでの公式デビューを待つばかりだ。
チーム自体の今後は、ヒンヴィルのF1ファクトリーでレースカーの開発と製造を行っている。このスイスの拠点は、レース運営の計画と実行も担っており、2025年夏からは英国ビスターに技術オフィスが開設される。
「モータースポーツ・バレー」と呼ばれるこの地域に拠点を置くことで、チームはF1に関するさらなる専門知識を得ることができる。
こうした経緯に併せてAUDI AGでCFOを務めるユルゲン・リッタースベルガー氏は、「F1は単なるモータースポーツではありません。エンターテインメント、エモーション、テクノロジー、そして挑戦でもあります。
この組み合わせこそが、アウディの目指すところ、つまり新たな顧客層を開拓するための原動力となるのです。F1の圧倒的なリーチは、特に急成長を遂げている若年層を中心に、ブランドに新たな顧客を獲得する機会をもたらします。
加えてモータースポーツの頂点であるF1は、世界で最も過酷な試験場とされています。それは短い開発サイクル、最小限の指揮系統、そして迅速な意思決定は、会社全体の模範となることを目指しています。
同時に、アウディは最新の技術開発と材料に深く関わっています。オープンな競争のおかげで、F1は電気自動車と持続可能なe-fuelの双方において、技術の推進役としての役割を果たしています。どちらも量産モデルにも非常に重要なテーマです。この2つの分野では、レギュレーションによって大きな自由度とイノベーションの余地が与えられています。
また2026年からのコストキャップのおかげで、F1はこれまで以上に経済的に持続可能なものとなっています。スポンサーシップの機会、チーム評価、そしてF1における全体的な収益の可能性の発展を考えると、ひとつ明らかなことがあります。それは、この道はアウディにとって、経済的にも完全に理にかなっているということです」と語っている。
















