ロッテラー2位、石浦3位で続き、トヨタエンジンはトップ5を独占
栃木県茂木町の「ツインリンクもてぎ」で8月20日(土)、21日(日)の両日にかけてスーパーフォーミュラ第4戦が行われ、関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)がデビュー4戦目にしてポール・トゥ・ウィンで初優勝。
アンドレ・ロッテラー(VANTELIN TEAM TOM’S)、石浦宏明(P.MU/CERUMO・INGING)が2、3位表彰台を獲得。トヨタエンジンはトップ5を占める速さを見せた。
全7戦で戦われる2016年シーズンのスーパーフォーミュラも、折り返しの4戦目を迎えた。
この第4戦では、後半戦へ向けた新スペックエンジンを投入。加えて、今大会は新たな試みとして通常1スペックのタイヤで争われてきたスーパーフォーミュラで、1段階柔らかいソフトタイヤが追加導入された。
決勝レースではこの新しいソフトタイヤと、従来のミディアムタイヤの両方の使用が義務づけられ、戦略的にも興味深いレースとなった。
8月後半ということで、シリーズで最も暑いコンディションとなり、タイヤやエンジン、ブレーキ、そしてドライバー自身にも大きな負担を強いる酷暑のレースで、後半戦へ向けて誰が抜け出すか、注目の戦いが展開された。
予選
20日(土)、前夜からの断続的な雨により、朝のフリー走行はウェットコンディションで行われたが、その後雨は止み、天候も回復。スーパーフォーミュラの予選が行われる午後2時には、路面は完全に乾き、ドライコンディションで熱いアタック合戦が繰り広げられた。
午後2時10分、20分間のQ1が開始。セッションスタート前から多くの車両がピットロードに並んで待機し、全車ミディアムタイヤでコースイン。気温33度、路面温度38度、日差しの下でまずは関口がトップタイムをマークした。
セッション前半のアタックを終えると、ピットへ戻ってタイヤを交換。ほとんどの車両が今大会新たに採用されたソフトタイヤを装着し、残り7分を切ったあたりからコースイン。
しかし、ここで関口とジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)の2台のみが新品のミディアムタイヤで後半アタックに入った。
アタックのタイミングを計るために、非常に混み合うこととなったコース上で、ロッテラーが最終コーナーで他車と接触。フロントウィングを破損し、後半のアタックを諦めることとなってしまった。
各車タイムを更新していくも、ソフトタイヤ勢のタイムが思ったよりも伸びず、ミディアムタイヤでアタックした関口とオリベイラが1-2という予想外の展開に。
後半アタック出来なかったロッテラーも、セッション前半にマークしたタイムが11番手となり、Q2進出。
このセッションではナレイン・カーティケヤン(SUNOCO TEAM LEMANS)が16番手、中山雄一(KCMG)が17番手でQ1敗退となった。
午後2時40分からのQ2(7分間)は、全車が新品のソフトタイヤを装着し、石浦、国本雄資(P.MU/CERUMO・INGING)、中嶋一貴(VANTELIN TEAM TOM’S)らがスタート前からピットロードに並んで待機、セッション序盤から積極的にアタックしていった。
Q1で接触を喫したロッテラーの車両は、サスペンションにまでダメージが及んでおり、メカニックが懸命の作業を続けた結果、セッション残り半分となる、3分半を切ったところでコースへ復帰。一発アタックに賭けることに。
このセッションでも関口が速さを見せトップタイム。国本が2番手に。アウトラップの翌周のみのアタックとなったロッテラーが5番手に滑りこんだ一方で、トップ11台がコンマ5秒内に入るという相変わらずの僅差の予選となった。
予選のアタック中にミスを喫したオリベイラと、コース上の混雑に阻まれた中嶋一貴が、8番手からコンマ1秒以下の差ながらまさかの10、11番手タイム。優勝候補の一角であったオリベイラと中嶋一貴がQ3進出を逃すこととなってしまった。
また、ウィリアム・ブラー(KONDO RACING)と小林可夢偉(SUNOCO TEAM LEMANS)も13、14番手でQ2敗退となった。
午後2時57分からのQ3(7分間)はタイヤ選択が分かれた。ソフトタイヤは2セットしか使えないため、Q1で使用しなかった関口以外は新品が無く、国本とジェームス・ロシター(KONDO RACING)はミディアムの新品を選択。関口のみが新品ソフト、石浦とロッテラーが中古ソフトを選択するという、注目のセッションとなった。
唯一新品ソフトを履く関口は3周目、全セクターでトップタイムを塗り替え、ライバルを大きく引き離すトップタイムをマーク。
中古ソフトの石浦が2番手タイムをマークしたが、関口には届かず。今季よりスーパーフォーミュラに参戦した関口が、0.4秒もの大差でデビュー4戦目にして初のポールポジションを獲得した。
トヨタエンジンは最前列グリッドを独占。ロッテラーは4番手、国本が5番手、ジェームス・ロシター(KONDO RACING)が7番手から決勝に臨むこととなった。
決勝
8月21日(日)は、不安定な天候だった前日とは打って変わって朝から好天に恵まれ、真夏らしい日差しと暑さの下、午後3時に52周で争われる決勝レースのフォーメーションラップが開始され、スタートが切られた。
スタートではポールポジションの関口が絶好のダッシュを見せ首位をキープ。最前列2番手の石浦は出遅れ、4位へ後退。4番手グリッドのロッテラーも好スタートで、石浦をかわすと、1周目に更に前車をかわし、2位へと浮上した。
トップを走る関口は、1周目からハイペースで後続を引き離していき、3周目にはその差は約4秒に。3位を走行していた車両がトラブルでリタイアとなったため、石浦が3位へ浮上。国本、ロシターと続き、トップ5をトヨタ勢が占めての序盤戦となった。
後方では、スタートの混乱で13位へとポジションを落とし、追い上げていたオリベイラが8周目にトラブルに見舞われスローダウン。痛恨のリタイアとなってしまった。
上位勢の車両がソフトタイヤでのスタートを選択したのに対し、ミディアムタイヤを選択した中嶋一貴は、得意のスタートで11番手から8位へとジャンプアップ。13周終了時点で早めのピットへ向かい、ソフトタイヤへと交換、ペースアップを図る作戦を採った。
ファステストに肉薄するタイムで追い上げを開始した中嶋一貴だったが、途中で後方集団に追いついてしまい、それ以上のペースアップはならず。
中盤に入ると、後続グループから次々にピットイン。38周終了時に、最後の国本がピットを終えた時点で、関口が2位のロッテラーに約8秒の大差をつけてトップに復帰した。
3位の石浦は、ピット終了時には4秒近くあったロッテラーとの差をじりじりと詰めていき、激しい2位争いを展開。
その後方では、ピットで先行を許したロシターもストフェル・バンドーン(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)をかわし、5位のポジションを奪還。その後は中嶋一貴がバンドーンを攻めての6位争い、その後ろで小林が山本尚貴(TEAM 無限)とのテール・トゥ・ノーズでの入賞をかけてのバトルを繰り広げた。
首位を行く関口は、2位ロッテラーとの差を8秒ほどでキープ。終盤にはややマージンを取ったペースでその差が詰まったものの、それでも6秒の大差をつけ、独走でのポール・トゥ・ウィン。
今季から参戦したスーパーフォーミュラのデビュー4戦目にして嬉しい初優勝を飾った。前戦3位表彰台を獲得している関口は、この勝利でドライバーズランキングでも首位に浮上した。
2位は終盤タイヤが厳しくなり、石浦の猛攻を受けるも凌ぎきったロッテラーが入り、今季初表彰台。3位は0.6秒届かず石浦となった。4位には国本が入り、この4台はランキングでも3点以内という僅差でのトップ4を占めることとなった。
5位には今大会練習走行から好調だったロシターが続き、トヨタエンジンは真夏の熱戦で、トップ5独占という速さを見せた。
後半僅差のバトルを続けた中嶋一貴と小林は共に1秒以内の差ながら逆転ならず、7位、9位に終わった。
ITOCHU ENEX TEAM IMPUL 20号車 ドライバー 関口雄飛
昨日の予選からチームに本当に助けられた。昨日は戦略、クルマ共に最高で、ポールを取ることが出来た。
今日のレースもスタートさえ決めて、1コーナーで前に出られればと思っていた。スタートは苦手なので、今大会はずっと練習をしてきた。今回は自分のレース人生を変えられる一戦になると思っていたので、不安もあったが、良いスタートが切れて良かった。
スタートのあともとても良いペースで後続を引き離すことが出来、その後は心配なく戦えた。本当にチームに感謝している。レース前から、今年は混戦でみんなポイント差が無いので、ここで勝てばランキング上位に浮上できることが分かっていた。
シリーズとしてはルーキーだが、気持ちは周りのベテランと変わらず、チャンピオンを狙うつもりで、次戦以降も勝つことだけを考えて全力で戦う。
VANTELIN TEAM TOM’S 36号車 ドライバー アンドレ・ロッテラー
まず関口選手の初優勝を祝福したい。彼は本当に素晴らしいレーサーだ。私自身は良いスタートが切れてポジションを上げ、その後野尻選手もかわして2位に上がれたが、関口選手は我々よりも速く、その後は2位を走り続けることになった。
前半スティントの終盤はペースが良かったが、周回遅れなどもあり、追い上げには到らなかった。予定よりも早めのピットで、ミディアムタイヤに履き替えてからは良いペースだったが、前を追うためにややプッシュしすぎて、終盤はタイヤが終わってしまった。
それでも、2位表彰台に戻れたことは嬉しい。次戦の代替戦となった岡山は、我々にとってはあまり相性の良いコースではないが、調子は上向いているし、開幕戦よりは高い気温で良いレースが出来るのではないかと思う。
P.MU/CERUMO・INGING 1号車 ドライバー 石浦宏明
スタートを決めてトップに立ちたかった。練習では上手く行っていたのに、本番では動き出しが悪く、イン側というポジションでややグリップが低いという影響もあって、スタートでライバルに前に出られてしまったのは失敗だった。
クルマはとても速く、前車に阻まれなければもっとハイペースで走れただろう。ポテンシャル自体は高かったと思う。金曜日の時点ではライバルに対し大きな差を感じていたが、チームと共に努力を続け、着実に差を詰めることが出来、決勝前には戦える自信があった。
実際に決勝を戦ってみて、タイヤの使い方などかなり進歩し、手応えも感じられたので、シーズンを考えるとかなり前向きな結果に終わって良かった。次戦は代替戦の岡山ということで、オートポリスも得意だが、2年連続で勝っている岡山は、流れを引き寄せるという意味でチャンスだと思っている。