サービスコストと不確実性がOEMとサプライヤーの関係を定義
米国最大規模の監査・資産管理企業のひとつプランテ・モラン(Plante Moran/米ミシガン州サウスフィールド)は5月19日、米国内の自動車メーカーとサプライヤーの関係を評価する「第25回北米自動車OEMサプライヤー協働関係指数( WRI ®)調査」の結果を明らかにした。
今年で25年目を迎えた「北米自動車OEMサプライヤー協働関係指数調査」は、本年2月中旬から4月中旬に掛けて実施された。
同・年次調査では、サプライヤーが自動車メーカーとの協業関係についてどのように認識しているかを追跡し、20の商品分野に分類された8つの主要購買分野を包括評価している。
調査回答者は、フォード、ゼネラルモーターズ、ホンダ、日産、ステランティス、トヨタにサービスを提供するティア1サプライヤーの経営幹部達となる。より具体的には、398社のTier-1サプライヤーから665名のサプライヤー幹部。この回答数は、6社のOEMの北米に於ける年間購買額の約45%に相当する。
営業担当者は、2,014件の購買状況に関するデータを提供した(例えば、回答したサプライヤー1社が、シャーシ部品とパワートレイン部品など、1社のOEMの複数の部品グループに販売しているケースが2件あった)。回答者の人口統計学的には、回答したサプライヤーは、北米の上位50社のうち36社、上位100社のうち68社に相当する。
そうした同調査によると、OEM6社のうちの3社は、政府の政策変更、EVプログラムの中止、中国の低コスト新規参入の脅威、不確実な販売量、材料やツールに関連するコスト回収問題に関する継続的な緊張などの前例のない市場変動に向き合いつつも、全体的な関係を改善している。
今年のWRI®スコアでは、トヨタ、ホンダ、ゼネラルモーターズが、市場に於ける強みを活かし、サプライヤーに係るコスト、リスク、不確実性に対して浮上手く対処しているとした。その3社は1位から3位までの上位を独占。日産、フォード、ステランティスに大きく差をつけた。
具体的にトヨタは18ポイント上昇し386となり、単独で「良い~非常に良い」の上位カテゴリーにランクインした。これは、トヨタがWRIで最高スコア415を記録した2007年以来の最高スコアとなる。
ホンダは3ポイント上昇し、347ポイントを獲得した。GMは11ポイント上昇し、310ポイントとなり、初めて300ポイントを超えた。
20年前、GMはWRIスコア114で最下位に沈み、この調査史上最低スコアを記録していたことを考えると、ホンダとトヨタに次ぐ3位にランクインしていること自体が注目に値する。
対して日産は6ポイント下落して249ポイントとなった。フォードも前年比6ポイント下落したが5位を維持した。ステランティスは11ポイント下落した141ポイントで最下位に留まった。結果、トヨタとステランティスの差は245ポイントとなり、これは2008年以来最大の差となっている。
この結果についてPプランテ・モランの経営コンサルティング部門でサプライヤー・リレーションズ・アナリティクス・プリンシパルを努めるアンジェラ・ジョンソン博士は、「サプライヤー側はバランスが取れた財務リスクを求めており、OEMの将来の市場戦略に於いて、自社がどのような位置を占めるかを正しく把握することで、要求に応じた対応をしたいと考えています。
サプライヤーは、OEMの意思決定が収益に与える影響を通してOEMの行動。つまり公平性、公正性、説明責任、信頼性を推し量っています。
そうしたなかでトップ3のOEMと、ボトム3のOEMを分けるのは、サプライヤーがOEMへのサービス提供コストを削減し、不確実性に対応できるよう支援するためのコミュニケーション能力にあるのです。
上位3社のOEMは、コミュニケーション、対応力、アクセス性、エンゲージメント、そしてバイヤーに関する知識といった基本事項に於いて高い評価を得ています。
これらのスキルはサプライヤーの業務効率を高め、ひいては強固な関係構築に役立ちます。
上位3社のOEMは、確立された関係性を活かしてサプライヤーと共同で経済および業界の混乱に対処し、より多くのWin-Winの結果を生み出すことができました。
強固な関係を築くことで、OEMとサプライヤーは協力し合い、より公平なリスクとコストの分担を通じて、業界の不確実性をより適切に乗り越えることができるようになります」と説明した。
加えてプラント・モランで戦略・自動車・モビリティコンサルティング部門のプリンシパルを努めるデイブ・アンドレア氏は、「改めてこの1年間を振り返り自動車メーカーとサプライヤーが直面した数々の課題や摩擦を考えると、一部の自動車メーカーのWRIスコアが更に低下したことは驚くべきことではありません。
WRIは、個々の顧客へのサービス提供に係る有形・無形のコストを反映しているからです。
重要なのは、OEMの様々な機能的要求(購買、製造、エンジニアリング、設計、財務)のバランスを取り上手く調整することにあります。そうすることで、サプライヤーとOEMは互いの矛盾を軽減できるのです」と話している。
WRI調査の主なポイントは以下通り
プランテ・モランチームは、調査結果からいくつかの重要なテーマを特定した。その中には次のようなものがある。
確立された関係が上位3社のOEMの業績向上を牽引した。サプライヤーは上位3社のOEMに対して、下位3社のOEMと比較して12倍も真のパートナーであると感じていると回答した。
基礎が最優先で信頼は結果だ。協力し易くなることで人間関係は改善される。優秀な組織は、以下の点を改善することで基本的な行動とプロセスを改善した。
▷購買担当 VP が出席し、関与している。
▷アクセスしやすく、知識が豊富で、対応力のあるバイヤー。
▷支払いは適時に行う。
▷サプライヤーの戦略計画に関する定期的かつオープンなディスカッショをゑ欠かせないこと。
先のデイブ・アンドレア氏は、「一貫性、予測可能性、そして戦略目標の整合性は、サービス提供に伴うリスクとコストを低減し、顧客から選ばれる企業へと導きます。
トヨタ、ホンダ、ゼネラルモーターズは、WRIスコアに基づく顧客から選ばれる企業ランキングで、それぞれ1位、2位、3位を維持しています。
トヨタとホンダはこれらを自らの企業文化に深く根付かせており、ゼネラルモーターズは、依然として残る「旧態依然とした」行動様式を排除し続けることで、企業文化の向上に努めています。
しかしそれでもトヨタとホンダは、企業として持つ価値観を維持していくことで課題に直面しています。トヨタは今年、北米に於ける購買部門のリーダー交代を14年ぶりに実施しましたが、今後も試練に直面することになるでしょう。
全体として、一貫性、予測可能性、そして戦略目標の整合性に効果的に取り組んでいるOEMは、一般的に強力で収益性が高く、サプライヤーにとって最適な顧客となります。
またそれは相互依存関係に繫がるため、サプライヤーにとっても有益です」と結んでいる。